少し長いですが痙性麻痺に対する理学療法での改善・予防法です。①⑥は専門家向けですね。
①運動療法(神経筋再教育)
一般に上肢では伸筋群に麻痺が強く、屈筋群に痙縮が強く出ます。下肢ではその逆です。ということは当然、筋肉を刺激して筋力を強めるべきなのは、上肢では伸筋群(上腕三頭筋など)で、下肢では屈筋群(腸腰筋、背屈筋など)ということになります。ただし、目的動作によって治療対象は変わります。このように、痙縮と麻痺は別々に考えます。
②身体のやわらかさ
全身の姿勢反射が手足の痙縮に影響するのですから、身体全体がやわらかくて動きが軽いほど、その影響は少なくなります。これは私が全身の硬さ(関節機能障害と筋スパズム)を治療できるので気づけたことです。患者さんとしても、全身の硬さやこわばりをストレッチで改善したり、2次的な緊張の治療を専門家から受けて頂きたいと思います。手足だけじゃなく、首・背・腰など全身の筋肉・関節をほぐしてください。
③オーバーワーク・痛み
筋肉が硬直するほどの過度な運動(Overuse)は控えましょう。健側のペースで運動してしまい麻痺側が疲れきっていることがあります。また長引く痛みは筋肉の緊張を高め、硬くします(スパズム)。痛みは視床痛やCRPSといった神経由来のものもありますが(→薬物療法)理学療法で軽減・消失する筋肉・関節性の2次疼痛が混在してます。
④温熱療法
全身温浴は神経・筋肉を一時的にリラックスさせるのに効果的です。ちょうど良い季節ですので、可能であれば平日の客のいない温泉で、ゆっくり体を伸ばしたり丸めたりひねったり、力を入れたり抜いたりと、リラクセーションストレッチを行うとよいでしょう。継続が大切です。
⑤動作のレベル、環境、装具
難しい動作はそれだけで全身の緊張を高めます。動作レベルを落とす(簡単なものにする)か、環境を調節する、補助具を使用する等です。これは個人の体格や障害に合うオーダーメイドとなります。また体重はできれば軽いほうが動きやすくて緊張・反射も減るでしょう。
⑥高次脳機能障害
これは脳卒中の方だけの話ですが、特に左脳障害(右片麻痺)では失行症といって、動作がすくむ、ガチガチに緊張する、といった症状が時々出ます。考えれば考えるほど緊張します(観念運動失行)ので、できるだけ介助誘導して、無意識レベルで運動を遂行させます。運動がある程度自動化すれば、考えなくてもできるようになります。
以上です。お気軽にコメントください!
↓来年もよろしくお願いしますm(_ _)m![]()
にほんブログ村
私たちの筋肉は、神経の命令を受けて一定の緊張を保っており、これを筋緊張と言います。筋緊張は神経の障害などによって、以下のように緊張が極端に高い、もしくは低い といった異常が生じます。
①弛緩:筋緊張の低い状態。脳卒中急性期や末梢神経損傷などでみられる。
②痙縮:瞬間的に筋緊張が高くなる。脳卒中や脊髄損傷などでみられる。
③固縮:持続的に筋緊張が高くなる。パーキンソン病などでみられる。
④拘縮:筋肉の結合組織が短く硬く、伸びなくなった状態。2次障害で生じる。
⑤攣縮:痛みや疲労、関節障害でみられる(spasm)。肩こりや筋肉痛もこれ。
このうち、②~⑤が筋緊張の高すぎる(亢進)状態となります。
では、これらの筋緊張障害は療法士に治せるのでしょうか?
実は治せるのは④と⑤だけです。①~③は神経自体の問題ですから、物理医学(PT、OT)では治せません(一時的に抑えることはできます)。ところが、この④と⑤の治療をできていないことが、非常に多いんです。
例えば片麻痺患者さんで、麻痺側の筋肉が硬直してきて、腕は曲がり、脚は伸びきって、姿勢が固まる(ウェルニッケマン肢位)...という方は今まで私が(初めから)担当した患者さんには、お一人もいません。本来の痙縮って、実はやわらかいものなんです。なぜ「硬直」するのか?それは痙縮に④と⑤が混じっていることで、硬くなってしまうからです。
④と⑤が生じる原因は主に、痛み、過度な運動負荷(筋疲労)、過度なストレッチ、関節機能障害などです。これらは治療や予防ができます。
“痙性麻痺のみかた”については、また後日、記事を書こうと思います!
より詳しい記事はこちら →筋緊張障害について
↓興味ある方はポチくださいm(_ _)m
![]()
にほんブログ村
呼吸器系の医療に携わってない方は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、無気肺(むきはい)という危ない肺の病状があります。
もともと肺の細胞(肺胞)や気管支からは、細菌などの異物を体の外へ追い出すために分泌物が常に流れ出ており、これが最後は痰となってノド元へと上がってくるわけです。
ところが手術後などの安静臥床中、特に人工呼吸器を利用されている患者さんは、呼吸(肺の換気)が弱く、分泌物が肺の奥(特に背中側)に溜まったり、気管支を塞いだりして、肺の中で空気の入らない部分ができてしまいます。つまり空気の無い肺=無気肺なわけです。こわい...
この無気肺は、体位変換や早期離床などによる『予防』が第一ですが、患者さんの状態(手術や年齢、感染、水分、全身状態など)によっては、どうしても発生することがあります。この時に出番なのがPTなわけです。
呼吸理学療法で無気肺が改善してゆくと、レントゲンで真っ白だった肺に少しずつ空気(黒)が入ってゆくのが分かります(写真は左肺の変化)。
気管支を塞いでいるモノが、硬い痰だったり、手術の時に出た血液のカタマリだったりすれば、このように治すことは可能ですが、腫瘍による閉塞の場合はPTは適応外となり、他の治療法が選択されます。
患者さんの呼吸を救うって、とってもとっても大事なことですよね。
↓私も救ってくださいm(_ _)m
![]()
にほんブログ村
この世界にも色々なご職業の方が、患者としていらっしゃいます。
ある日、外来で膝関節炎の患者Yさんが見えました。もう一目見て、『あ、あちらの筋(すじ)の方だ』と分かる目力...毎回、お付きの方が1~2人ついて来られ、治療中いつも周りをウロウロされてます
初回、膝の評価をするためにズボンをそっとまくり上げると、太ももには虎さんと龍さんのモンモンが...
私、何も見なかったことにして、そっとズボンを戻す。
問題の膝は腫脹しており、90度くらいしか曲がらない。そしてYさん、困ったことに、屈強な体のわりには、結構な痛がりさん
Yさん「ぐ、ぐぁ~痛つつっ...あ~いいよ、いいよ、ま、曲げ、曲げて~」
私 「だ、だ、大丈夫ですか?これくらいにしときましょうか
」
Yさん「だ、大丈夫だよ、ぐ あ゛ぎ~痛て、痛てぇー!...大丈夫だから」
私 「も、もちょっと氷で冷やしてから曲げましょうかね~
」
この間も、お付きの方、人工衛星のように私の周りをウロウロされる。
結局、半年ほど通われたでしょうか。残念ながら、あまり良い治療結果は出ませんでした。要因の一つはやはり炎症性疾患だったことと、Yさんが進行性の肝障害だったこと。
肝・腎・膵不全の進行した(いわゆる内分泌疾患の)患者さんの場合、時折、理学療法による治療の反応が悪いことがあります。痛みの増悪や治癒には血液成分もやはり関係していると個人的には考えています。
当のYさんは大変紳士的で、お話も面白く、お互いに御飯の美味しい居酒屋なんかを紹介し合ったり、大変話しやすい方でした。それだけに、あの膝を治療できなかったことが、いまだに申し訳なく思います。
お元気にされてるかな?
↓祝・ブログ1ヵ月記念ポチッ\(^o^)
![]()
にほんブログ村
私が担当していた患者さんの旦那さんのお話です。
その方は脳梗塞になられた奥さんのため毎日病院に来られ、朝から夕方まで、ずっと身の回りのお世話をされていました。奥さんからは「父さん、父さん」と呼ばれていて、とても仲の良いご夫婦。
しかしある時から父さんは腰を痛め、徐々に足にシビレを感じ出し、さらに左足に力が入らなくなってきたため、同病院の整形外科を受診。第2/3間の腰椎椎間板ヘルニアの診断で、外来理学療法の処方が出され、ご夫婦ともに私が担当することになりました。
父さんの症状は、おおよそL2神経根症状に近いもので、①膝に力が入らず、しゃがんだら立ち上がれない、②太ももの前あたりがしびれる、③四頭筋反射やや減弱で、④前屈みになると腰が痛い、などでした。
それから週に2回の理学療法を行いました。神経根圧迫の可能性もあるので、慎重に治療を進めます。まずは前屈方向の可動性を出すために、腰椎の椎間関節の動きを徒手的に拡げてゆきます。神経症状が出ないか確認しながらの治療です。
すると、治療3週目くらいで腰痛としびれは軽快し始め、6週目くらいで膝に力が入るようになり、しゃがんで立ち上がれるようになりました。どうしても毎日奥さんを抱えたりされるので、腰痛はちょいちょい再発されましたが、膝の伸展筋力はほぼ完全に回復しました。
これは大げさに言えば、『偽ヘルニアによる偽麻痺』だったわけです。
外側ヘルニアの患者さんのMRIを見ていると、確かにヘルニアが横にとび出ているのですが、さらによ~く椎間孔を観察すると、神経根って結構うまく上の隙間に逃げ込んで、圧迫を避けていたりします。
おそらく、父さんには元々L2/3付近に関節機能障害があり、急性期にはヘルニアによる神経障害が実際にあったのかもしれませんが、その後は関節機能障害がオーバーラップして、実際よりも麻痺症状が強く出ていただけ、というのは治療をしてみて初めて分かることです。
その後はご夫婦で仲良くご自宅に復帰されましたとさ
↓ランキング1位頂きました\(^o^)/
![]()
にほんブログ村
以前、後輩PTから代わりに見てほしいと頼まれ、私が担当することになった外来患者さんの話です。
その方、数年前に転落事故で大腿骨頸部を骨折され、その時は手術をせずに、保存療法を選ばれました。しかし骨が歪んでくっ付いたためか、徐々に変形性股関節症の状態になってしまい、今では足の長さも左右でまるで違うのです(脚長差)。
その方がまたドえらいスケベおじさんで、毎回私も引くような、かなりのお下品トーク(ブログには書けないレベル)。まさに変(股)なおじさん...なのですが、性格はとても気さくで明るく、私もおじさんも大の酒好きで、すっかり意気投合しました。
その方の症状は、歩行時の股関節痛、患側の足先のしびれと冷え、そして一番困っているのは、胡坐(あぐら)をかいて座れないということでした。股関節は拘縮して可動域に乏しく、下肢の筋肉は萎縮気味、足先は血色が悪く、ややCRPS(typeⅠ)に近い状態になっていました。
治療を始めて4か月くらいかかったでしょうか、脚長差があるので相変わらず(補高をしても)ピョコピョコ歩きですが、痛みはほぼなくなり、念願の胡坐もついにかけるようになりました。おじさん大変喜ばれ、私にどうしても礼がしたいとのこと。
季節は春
。じゃあ、お言葉に甘えて ...ということで、おじさんと私と後輩PTの3人は、休日、近所の公園まで歩いてゆき、おじさんのオゴリでうまい焼酎を、満開の桜の下で飲み交わしました。もちろんその時のおじさんは、普通に胡坐をかいてて、エロトークも全開だったとさw
↓ランキング1位頂きました\(^o^)/
![]()
にほんブログ村
理学療法(運動療法)の効果が、驚くほどみられる症状として、パーキンソン病やその関連疾患の患者さんがいらっしゃいます。
あまりこのようなことを言うと、誇大表現や虚言と思われるかもしれませんが、事実なので申し上げますと、本当に昨日まで全くの寝たきりだった方が、治療した翌日、お一人で“勝手に”歩かれていることがあります。病棟の看護師さんはもう大慌てです (〇〇さんが一人で歩いてるー!!!!)。
パーキンソン関連疾患の症状のうち、振戦以外の固縮、動作緩慢(無動)、すくみ・すり足、嚥下障害、発声障害、呼吸(拘束性換気)障害は、病気が進行するほどに、また高齢になるほどに、2次障害の影響を強く受けてゆきます。もちろん、療法士はパーキンソン病そのものを治せるわけでは決してありません。理学療法は対症療法だからです。
しかし、例えば脊椎-骨盤の分節的な関節運動と、下肢後面の筋肉(ハムストリングス)の硬直(スパズム)を治療すると、患者さんの歩幅は広がり、歩く速さ・距離・安定性が著しく改善します。別人のように歩かれます。これが2次障害に対する理学療法の効果です!
寝たきりで入院された方の多くが、自分から声を出し、自分でご飯を食べ、そしてご家族さんと一緒に歩き出す姿は、少し感傷的かもしれませんが、まるであの名作『レナードの朝(AWAKENINGS)』の1シーンを想い起され、私がPTになってよかったなと思える瞬間の1つです。
↓共感して頂けたらポチっと(^ ^)
![]()
にほんブログ村
猫背は英語でCat Back
...ではないんですね(^_^;) 恥かくとこでした。医学では円背(えんぱい)、亀背(きはい)、脊椎後弯(こうわん)変形、などと言います。猫背のほうが可愛いですよね。
世間でも「猫背の治し方」や「猫背矯正整体」など、本や専門の治療院が多数ありますが、果たして猫背は治せるのでしょうか?
外来で腰痛や背部痛の患者さんの理学療法を行っていると、痛みの軽減に伴い、確かに姿勢が良くなってゆく方がいます。またご高齢の方では、円背が強すぎて天井向き(仰向け)に寝れないという方が、治療の経過とともに楽に寝れるようになります。つまり治せるのでしょう。
円背の原因を、背中やお腹の筋肉の弱りや縮みと考えたり、脊椎の関節の歪みや詰まりと考えたり、あるいはそれらを結果であると考えたり、理論も治し方も治療者によって様々です。
私は主に関節の動きの悪さ(関節機能障害)と、それに付随する筋肉の硬さ(スパズム)を治療することで、結果的に円背を改善させますが、脊椎の関節を治療していると、よく関節がコキッ、クツッと鳴って引っ掛かりが取れるのが音でも分かります。自分にもセルフ治療します。
しかし、治せる円背はあくまでそういった筋骨格系の機能的な障害の段階であって、(背)骨に変形が生じるほどの進行例は理学療法による改善は難しくなります(圧迫骨折などによる変形も)。
しかしのしかし、実は私はひそかに思うのですが、猫背の起こり初めの早い(若い)うちから、ちゃんと治療をしていけば、将来的な背曲がりや腰曲がりといった変形は予防できるのではないかと感じています。
みなさんはどう思われますか?
↓ついでにポチッとお願いしますm(_ _)m
![]()
にほんブログ村
脳卒中、脊髄損傷、末梢神経障害などでみられる運動麻痺。その運動麻痺を理学療法士は治せるか?という難しい問題ですが、その前に...
ある日、後輩PTが担当していた発症3か月目の左片麻痺患者さんを私がみる機会がありました。いつもの通り、私は麻痺側上肢を含めた全身の筋肉や関節の治療を行います。この患者さん、これまで両手で「バンザイ」動作をしても、左手は肩の高さまで上がりませんでした。しかしこの治療直後に、左手も頭上までバンザイができたんです!
...なんてことは、片麻痺患者さんを専門に見てきたわけではない私でも、チョイチョイ経験しています。
では、この時私は麻痺を治したのか?と聞かれたら、「いえ、(おそらく) 麻痺は治してません」と答えるでしょう。それは何故か。
麻痺とは、簡単に言うと“神経の障害による筋力の低下”です。完全に筋力0(ゼロ)のものを完全麻痺と言い、それ以外は不全麻痺と言います。
ですから、直後に筋力が戻ったということは、直後に神経が繋がった、という理屈になります(筋力とは、筋肉の収縮による張力のことです)。
しかし、どうも医学的にはそういう現象は起きそうにありません。
外国の文献では、麻痺の回復は発症してからおよそ12週(3か月)の間に起こる、とされています。これはいったい何が治るのでしょうか。
脳に出血や梗塞を起こすと、その部分の神経組織は失われ、元には戻りませんが、その周りにできる浮腫によってダメージを受けた部分は浮腫が引けばおのずと神経機能が戻ります。これが運動麻痺の回復となるわけです(それが全てではないでしょうが)。これは自然回復ですので「治す」というよりも、「(程度によって)治る」ということです。(もちろん脳自体の治療は、超急性期に医師によって行われます)
では、療法士は麻痺を治せずして、どうして運動自体を治せるのか?
→ポチっとしてから麻痺②へ(^^)/
![]()
にほんブログ村
麻痺に伴う運動障害の回復は、大まかに言って4つの要因があります。
1つ目はもちろん、麻痺(神経)自体の治癒です。一度、脳から筋肉までの連絡を絶たれた神経が、浮腫や炎症がひくことで、再開通して使える状態に戻るわけです。初めは力が入りにくいですが、何度か筋肉を収縮させているうちに、徐々に筋力が戻る(=麻痺が治る)のです。発症からおよそ3か月間が、麻痺の治る期間と言われています。
2つ目は、麻痺に伴う2次的な筋肉や関節の障害が改善すること。これこそが療法士が「治せる」ものです。簡単に言うと、麻痺を起こすと筋肉の緊張や関節の正常な動きが崩れて、2次的に硬くなったり、痛くなったり、力が発揮できなくなります。これを治すのが療法士です。先ほどの患者さんは、これを治すことができたので、バンザイができたんですね!
この2次障害は、一般に考えられている以上に運動麻痺に影響があり、私の先輩治療家の患者さんは、何年も動かなかった麻痺手が治療直後に動き出し、それを見た付添いのご家族さんと泣いて喜ばれたとのこと。治してみて初めて、もっと軽い麻痺だったということが分かるわけです。
3つ目は、これは患者さんによりますが、高次脳機能障害の改善によるもの。身体失認に、わずかな意識障害や認知機能の低下が混ざったような患者さんは発症後半年~1年経っていても、今まであまり動かなかった(厳密には動かしていなかった)手足が動いてくるということがあります。一見すると、麻痺が回復したようにも見えるかもしれません。
4つ目は、成人ではまだ理論上のことかもしれませんが、いわゆる神経の代償や再生のメカニズムです。対側の神経や隣りの神経が失った機能を補ったり、今まで機能していなかった神経が代償したりというものです。
ご意見のある方は ぜひm(_ _)m
↓合点していただけたら
にほんブログ村