ベッドでゴロゴロ -10ページ目
開高健氏は私が尊敬する偉大な文豪だが、『私の読書法』(岩波新書)の「心はさびしき狩人」の中で、本を読むのは明窓浄机、端座するより寝ころんで読むのがいちばん楽だし自由である。

だから新しい本を手にするとそれをもって寝ころびに行く。

部屋の隅、壁ぎわ、万年床 といったところで、毛布か布団をかぶり、低めの枕に頭をのせ、顔と手だけ出して穴のタヌキのような恰好をするのが大好きとのたまう。

枕元には酒瓶とコップ、チビリチビリやりつつ読書していつの間にか眠りこむのが最高という。

そしてそのことを編集者に話し、万巻の書棚を背にしておちょぼ口をする写真よりも、枕をしている写真をとってといいますと、カメラマンは「いけません」という。

「何故?」と聞くと、「日本の部屋で写真に布団を入れると、きまってエロかグロになるんです。そうでなきゃ病人です」。

布団や枕は日本では寝るとき以外はかくしてあるのが普通、西洋のベッドのように家具になりきっていない。

「日本映画で布団のあるシーンがでてくるとなんだかドキッとくるでしょう、ね、くるでしょう?」とカメラマンにいわれて「そうだなあ、そういわれると……」。

枕の研究をしているというと、エロっぽいものをという軽蔑のまなざしを受けることがしばしば。

そこへいくと西洋では、生活必需品だとわりきられている。

だから枕を描いた絵まであるのだ。

日本では日本画でも油絵でも、まだ枕だけを描いた作品はないだろう。