「鹿殺し裁判」 ~ 京都奉行所・所司代 板倉内膳正重矩、御成りぃ! | 奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ

「鹿殺し裁判」 ~ 京都奉行所・所司代 板倉内膳正重矩、御成りぃ!

今から300年前のことのおはなしです。

・・・


一頭の鹿が、お腹をすかせ奈良町へおりてきました。


朝、お店をひらいたばかりの豆腐屋の前を通りかかりました。


おもむろに、店先の桶に顔をつっこみ、豆腐をムシャムシャと食べ始めたのでした。


おどろいたのは店の主人。


「こ、こら、なにすんねん!」


包丁を振り回し、鹿を追い払おうとします。


すると手からすっぽりと、包丁が飛んで、なんと鹿の急所にあたってしまいました。


鹿は、ばったりと倒れてしまいました。


「ああ、しまった、かわいそうなことをした。」


主人は悔やんでなりません。


そこへ居合わせた一人の男が、


あんた、鹿殺したな。

鹿をころしたモンは、死罪やで




男がいったとおり、その後、主人は春日大社の社人に告訴されます。


神鹿殺しは重大事件です。


京都奉行所で裁判がとりおこなわれました。


当時、奈良奉行は京都所司の管轄にあり、このような重大事件は京都で裁くことになっていました。


所司代は
板倉内膳正重矩(いたくらないぜんのしょうしげのり)。


板倉は、つくづくと鹿の死体を見て、しきりと首をかしげます。


訴えの内容では神鹿殺しとあるが・・・これは犬ではないか


被告、原告、そしてその場に居合わせたものはええっと驚きます。


「奉行様、おたわむれを。犬に角や蹄がありますか?」


うむと板倉は、目を閉じ天をあおぎました。


確かに、これが神鹿であるならば殺した重罪である。

だが、これは犬ではないか。

この犬は春日明神様の御神徳によって角がはえ、蹄ができたのだろう。


社人は怒りをあらわに抗議しようとします。


板倉はクワッと目をひらき、鬼のような形相で原告を睨みつけました。


これが鹿であるならば殺した重罪は神社側にあろう。

社人が私腹を肥やし、鹿に十分の餌を与えないから、神鹿が町中へ出て餌をあさるのであろう。

そうでなければ垣を飛び越えて出ないと思われる。

この責任は神社側にある。

それでも、なお強く神鹿であると申されるか。


立板に水を流すがごとく朗々と申されました。


社人は、ぐっと言葉をのみ、うなだれてしまいました。


板倉は豆腐屋の主人に、
犬とはいえ、無益な殺生をしてしまったのだ。

御主人、存分に供養してやり、以後は気をつけられよ。


そう戒められただけで、御咎めなしとなりました。


・・・


板倉内膳正重矩

1668から1670年京都所司代を務める。



早起きは、三文の得(徳)
鹿と少年。
鹿島神宮から春日大社へ長いながい旅
おやおや奈良の鹿がおじぎをするのは鹿せんべいが理由ではないのです。千年前からのようなのです。




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