もうずいぶん昔になりますが、この毛ガニなるものを知ったのは宮城県の塩釜港です。現代お3大漁港は静岡の焼津港、千葉の銚子港、そして北海道の釧路港ですが、当時は北海道の魚介類を本州に運んで加工や配送する港としても機能しており、日本三大漁港とも言われていた時代です。ここでプラント建設の現場に新入社員として配属されたのが縁です。

当時は残業規制などなく、残業代と給料、そして毎日の出張旅費を合わせると、新入社員ですらそこらの大手企業の重役並みの手取りとなっていました。もちろん休みなどなく、毎日朝の8時から夜の11時まで昼食と夜の食事時間を除いて働いていました。しかし、まだ若くかつお金が十分あったので、ほぼ毎日塩釜の夜の世界へと足が向いていました。

この塩釜は先ほど述べた様に漁港ですので海の幸にあふれ、しかも近海や遠洋漁場のみならず、北海道の魚介類は実に豊富な場所です。

しかもコメは宮城米のコシヒカリとの取り合わせで、夜食替わりに江戸前寿司が定番となります。私は日本酒と食べ物には目がなく、すし屋の常連とすぐになっていきました。

そこで知ったのが毛ガニと甘海老、そして筋子です。毛ガニはもっぱら一杯を酢醤油で頂き、筋子は酒のさかなに、そして締めの握りに甘海老や近海クジラの尾のみと言った具合の毎日でした。もっともこれがなければ冬の工事現場、しかも海のそばの吹きさらしでは精神が持たないのが現実だったかもしれません。

毛ガニの評価ですが、一般的には他の蟹の下に置かれています。しかし、学生時代に蟹を食べたのはほかの生徒の親が送ってくれた松葉ガニだけだったので実においしかったのを覚えています。

そのうえ、関西で食べる筋子は劣化防止のためにやたらに塩分が多く入っていますが、塩釜で食べる筋子は塩分添加無しの生筋子ですのでこれを病みつきになります。

甘海老は当時では三陸近海のみでしたが、今では富山県あたりで放流された甘海老が育って実に当たり前に食べられる時代となっています。

クジラの尾の身ですが、私の好物です。理由は実家が広島のTV局に務めていたため、当時遠洋漁港の尾道港にクジラ船団が帰ってくるたびに尾の身の塊をもらってきていました。もらえる理由はTV関係のネットワークを使って遠洋漁業船団に家族との連絡を定期的に中継しているためとのことでした。このシロナガスクジラの尾の身と近海クジラの尾の身の違いはもちろん味もありますが、南氷洋の尾の身は冷凍を溶かしながらシャキシャキとして触感を楽しむ食べ方です。それに対して近海物の尾の身は、冷凍していません。血は少しでますが臭みもなく、江戸前のすしネタとして実にあっさりと食べられます。もちろん刺身もいけますね。