偽作シンデレラ 5 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



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  カボチャの形をした馬車は お城に着きました
 
  太っちょの御者が 優しく エスコートします

  娘は 夢うつつで お城の階段を登りました



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  お城の大広間の 仮面舞踏会に 娘が現れると

  仮面を付けていても そのあまりの清楚さと美しさに

  皆が息を飲み あたりはシーンと静まりました

  彼女が会場内を進むと 人の波が左右に割れ 
  
  どよめきが 起こりました
 


  その 優美な姿は  

  ケバケバしいドレスに 身を包んだ女たちの 

  打算と欲望が 渦巻き ひしめく

  毒気と 殺気混じりの

  おどろおどろした会場に 舞い降りた

  さながら 一羽の 優美な白鳥のようでした

  それに気づいた王子様が、娘の前に進み出ました。


「 僕と 踊っていただけませんか ? 」


「 はい よろこんで 」

  彼女は 愛らしい笑顔で 会釈しました

  踊りの苦手な王子様を 彼女がリードして 


  二人は 滑るように踊ります

  娘は ダンスがとても上手でした

  今は亡き父母が ダンス好きで 

  幼い頃から 教えていたのでした


  母も娘時代に 舞踏会に出たいと 

  夢見ていたのかも知れません
 
  今は亡き 父と母も こんなふうに幸せそうに

  ダンスをしていたことを思い出していました

  娘は 目頭が熱くなるのを 感じました


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  シェイプアップされ しなやかな身体で 

  軽やかな シンデレラのステップに 

  クリスタルカットのヒールは 

  まばゆく 四方に光を放ちます

  出席者達は 幻惑されたように魅せられてしまいました


” なんと 清楚な娘さんなのだろう

  他の出席者とは 大違いだ 

  憂いを含むような潤んだ瞳の なんて深い色

  もう お后候補は この人以外は考えられない ”


  王子は ひとときも娘の手を離しません

  舞踏会に出席した娘たちは みな綺麗に着飾り 

  それなりに容姿に 自信がある娘たちです

  しかし 彼女たちはあまりにも気迫がみなぎりすぎて 

  他人を 蹴落とそうとした気持ちが

  トゲトゲしい雰囲気を 醸し出していました



「 あたいの目の前 チョロチョロするなよ

  邪魔だよ このアマ ! 」

「 あ~ら ごめんあそばせ うふふ 

  1000年に一人の美少女みたいに可愛くて 」
 
「 何 冗談ぬかしやがるんだ ! そんないいものかよ

  パンケーキ踏みつけたような顔のくせに ! 」

「 なんだと ~! ちよっと 顔貸せ ! 」

「 それは こっちのセリフだ ! 」

「  キイキイ ! 」

「  ぎゃぁぎゃあ ! 」



「 あんたぁ ちょっと邪魔よ どきなさいよ ~! 」

「 あんたこそ 空間占有率が

  高すぎるんじゃぁないの~ ♪ 

  壁が歩いてるかと思ったわ うけけけ ! 」

「 やかましいわ ! あんたこそ 

  カバが二足歩行してるかと思ったわ

  ぶわっははは ! 」

「 何だと ~! やんのかい ! 」

「 このブサイクが ~! 表に出やがれ ~! 」

<  ボコン ! > <  バチコ~ン !   >



「 なに 人のドレスの 裾 踏んづけてんのよ ~! 」

「 あらまぁ 安物のカーテンを引きずってるのかと思ったわ

  うほほほ ♪ 」

「 やんのか ! 」

「 さぁ来い やってやらぁ ! 」

<  ドスッ ! > <  ズコン ! >



「 なんて下品な香水の臭い うっけけけ 」

「 あんたこそ 腐敗臭がするし~ おぇ~え 」

「 なんですって ~ 」

「 なんだよ ~! 」

「 キキイイ ~~! 」 

「 ウキキィィイイ ~! 」


  あちこちで 小競り合い どつき合い

  ひっかき合いも 起こりました

  それは舞踏会ではなく まるで武道会か 

  デスマッチのリングの空気でした


  それに比べると 邪心のない彼女は

  気負いが無く 自然体で穏やかで

  そこが 王子の心を捉えて離さないのでした


「 ねぇ なんか あの娘 

  うちの雑用係に似てな~い ? 」

「 どれどれ いやぁ まさかぁ 

  他人の空似でしょう お姉さま 」

「 あいつは 今頃家で どうせ

  不貞腐れているわさ ケケケケ 」

  と 継母

「 そりゃぁそうね 

  あんな綺麗なドレスなんか持ってるはずもないし 」

「 あいつの招待状取り上げて 

  お母様が いい年して厚かましくも来たしねぇ 」

「 うるさい! 

  そんな事より まだチャンスが有るかも知れないから

  精一杯 頑張るのよ! 

  他の男どもは お城の侍従連中のサクラばっかだし 」

「 えぇ ? どう頑張ればいいのかしら ? 」

「 ほれ 王子と あの女のダンスの邪魔をするのさ 」

「 どうやって ? 」

「 あの女の足でも引っ掛けて

  無様にひっくり返しておやり 

  人が見てなきゃ ボコボコにするところなんだけどね

  げひひひ 」

「 なるほど セコイいじめの王道ね ありがちだけど 」

「 王子の前で恥をかかせるのさ わかったかい ? 」

「 派手に ひっくり返して 辱めてやるわ

  うひひひひひいっ ♪ 」

「 あの女が 泣きながら逃げ出したら

  その後は お前たちの毒々しい色気振りまいて

  王子を篭絡しておしまい

  うまくいけば 国を乗っ取れるかもよ

  げっひひひひ~ん~ 」


  王子と娘は そんな悪だくみにも 気付くこと無く

  楽しげに 踊り続けるのでした





     続 く