ダーク・ピーターパン 5 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

「 ♪ チクタク ♪  ♪ チクタク ♪ 」

「 ひぃぃぃいいいい ~~! 」

  フック船長は 頭を抱えて 震えました。

「 あぁぁぁあああ ~! 」

  海を覗き込んだ手下たちが叫びました。








「 あ~っははははっはっはは ♪ 」

  人を小馬鹿にしたような甲高い笑い声が響きました。

  ぷぷぷっ ワニかと思ったかぁ~い ♪ 」

  船に上ってきたのは ワニではなくて

  ティンカー・ベルを伴った ピーターパンでした。


「 あぁ ピーターパンだ ! 助けて ~ ! 」

「 ぼくたち ネバーランドから連れ去られちゃうよ ~ 」

「 おまたせ 今 助けてあげるよ ふふふ ♪ 」


「 ピーター・パンめ ! 」

「 このガキ ! 」

「 俺達を なめんなよ ! 」

  手下の海賊たちが 襲いかかりました。

  しかしピーターパンは 薄笑いを浮かべ、

  蝶が舞うようなステップで手下たちの攻撃をかわし、

  蜂が射すようにフック船長の手下たちを殴りました、

  子どもならではの えぐい急所攻撃でした。

「 ぎゃぁ ! 」「 ぐわぁ ! 」「 ひぃぃ ! 」

  大人といえど 鍛えることのできない場所を殴打され、

  みんな 悶絶してしまいました。


「 子供たち 大丈夫だったかぁ~い ? 」

  ピーターパンは 縄に繋がれた子供たちを見ました、

  ウェンディーも弟のジョンとマイケルも一緒です。

「 みんな無事よ 手荒な真似はされていないわ 」

「 それは良かった もし子供たちがいなくなったら

  僕と ティンカーベルは 、、、 」

「 シ~! ピーター 余計なことは言わないで 」

  チンカーベルがピーターに目配せしながら言いました。


「 お ゃ あ ? 

  フック船長は どうしたのかなぁ ~?

  なぁ~んだ ワニが怖くて隠れて震えていたのかい、 

  大人なのに だらしないの ~ あはははっ ♪ 」

「 うぬぬ、ワニかと思えば、お前だったのか ~!

  ワシを 騙しおったなあぁぁあ ~! 」

「 ワニに腕を食われた事を 思い出したかい ? 

  さぞや 恐ろしい体験だったろうな、

  でもワニは 食中毒起こさなかったかなぁ ?

  あはははっ ♪ 」

「 うぬぬ ! 貴様のせいで

  親からもらった大切な腕を食いちぎられたのだぞ ! 」

「 うふふ お気の毒様 ♪ 」

「 ワシは ワニが怖い、トラウマになってしまった 」

「 いい気味だ あはははっ ♪ 」

「 だが、大人には避けられない困難や、

  辛い試練が 待ち構えているものなのだ。 

  そして、それにも耐えて、

  いつか 乗り越えなければならないのだ 」

「 まぁ それは それは、大変な事で、

  今 ビビリまくっていたくせに カッコ悪ぅ ~。

  僕は そんな大人になんかなりたかぁないね、

  ふふふふふっ ♪ 」

「 ピーター よ ! 

  もう いい加減に 子供たちを 
 
  子供のまま留めおくのを やめたらどうだ !

  子供は いつか大人にならなくてはいけない、

  お前の エゴのため 子供たちの将来を 

  閉ざす事が あってはいけない ! 」


「 うっせぇ うっせぇ うっせぇわ !

  将来なんて知るもんか ~ !、 

  けがれ無き子供たちを、

  薄汚れた大人などにさせるものか。

  子供は子供のままでいるのが しあわせなのさ 」

「 ピーターパンよ、

  本当に それで良いと思っているのか ? 」 

「 フック船長 よ~く自分の姿を見るがいいさ、

  顔には シミ、シワが出来て、

  髪には白いものが混じり、

  身体も ずいぶんたるんでいるようだぞ。

  そんな姿、僕にはとても幸せだとは思えないよ 」

  フック船長は 失った自分の手の代わりに付けた 

  鈍く光る金属製の鉤爪の手に映る

  自分の顔を見つめました。





「 シワ、シミ、白髪も ワシにとって 
 
  一つ、一つが 歴史なのだ、

   けして 誰に恥じる事はない ! 」


「 僕は お肌 つるつる ぷるぷる だよ~ ♪ 」


「 ワシも お前も 昔は子供だった、

  二人で仲良く遊んだものだったな。

  しかし、お前は 大人になる事を拒んだ。

  ティンカー・ベルに そそのかされて家族を棄てた 」

「 自分で決めたことさ、

  ティンカー・ベルの 悪口を言うな ! 」

「 妖精は、しょせん妖精だ、

  人間の世界の者ではない。

  いつまでも 関わっていてはいけない 」 

「 黙れ ! 黙れ ! 黙れ !

  ティンカー・ベルは悪くない ! 」


「 いいや ! ティンカー・ベルは人を惑わす !

  人生を 踏み誤らせる !

  人に 関わらせてはいけないのだ ! 」

「 ふ ん !

  失礼ね 酷い物言いだわ 」

  ティンカー・ベルは 顔を歪めました。

「 ティンカー・ベルよ、

  お前が 子供たちを妖かし 連れ去るのは

  子供たちの 成長エネルギーを吸い取って 

  生きているからなのではないのか ! 」

「 ふふっ それは どうかしらねぇ 」

「 いや そうに違いない ! 」

「 邪推も いいところよ オバカさん 」

「 ならば なぜ お前といる子供たちは

  成長しないのだ ! 」

「 そっ そんなこと ! 

  あっ あんたに 関係無いでしょう ~!

  これだから 大人って やぁねぇ、 

  また ひどい目に遭わせるわよ ! 」

  ティンカー・ベルは 血相を変えて言いました。

「 ワシは、自ら望んで大人になった、

  ワシ自身のためにも、

  ワシまでも いなくなってしまっては 

  両親の悲しみは計り知れなく、 

  嘆きは いつまでも続いただろうからな 」


「 ば~か !

  人の悲しみなんかに かまっているから

  余計 老けこむんだぜ はっははは ♪ 」


「 確かに、大人になることは、

  子供時代ほど 気ままで

  楽しくいられるわけではない、

  それは 幸せな事ばかりではないかも知れない 」


「 ふふ~ん つまんな~い ! 

  年寄りの泣き言や、お説教ならゴメンだね ! 」


「 ワシの言葉を 泣き言と思えばいい、

  お前は まだ人生を知らない お子様だからな 」


「 チッ ! チョ~ ウゼェ~! 大人め ~ ! 」

「 今日こそ 人生の厳しさを教えてやる、

  ピーターよ、さぁ 来い ! 」

「 ふふ~ん、今日こそは決着をつけてやるさ !

  ひゃ~っははははっははっはは ~♪ 」

  二人の 睨み合いが続きました。

  ジリジリと間合いが 詰まります。

  やがて ピーターが フック船長に飛びかかり、

  船の上で 凄まじい戦いが始まりました。
                                          

         続 く