「 ひぃぃぃいいいい ~~! 」
フック船長は 頭を抱えて 震えました。
「 あぁぁぁあああ ~! 」
海を覗き込んだ手下たちが叫びました。
「 あ~っははははっはっはは ♪ 」
人を小馬鹿にしたような甲高い笑い声が響きました。
ぷぷぷっ ワニかと思ったかぁ~い ♪ 」
船に上ってきたのは ワニではなくて
ティンカー・ベルを伴った ピーターパンでした。
「 あぁ ピーターパンだ ! 助けて ~ ! 」
「 ぼくたち ネバーランドから連れ去られちゃうよ ~ 」
「 おまたせ 今 助けてあげるよ ふふふ ♪ 」
「 ピーター・パンめ ! 」
「 このガキ ! 」
「 俺達を なめんなよ ! 」
手下の海賊たちが 襲いかかりました。
しかしピーターパンは 薄笑いを浮かべ、
蝶が舞うようなステップで手下たちの攻撃をかわし、
蜂が射すようにフック船長の手下たちを殴りました、
子どもならではの えぐい急所攻撃でした。
「 ぎゃぁ ! 」「 ぐわぁ ! 」「 ひぃぃ ! 」
大人といえど 鍛えることのできない場所を殴打され、
みんな 悶絶してしまいました。
「 子供たち 大丈夫だったかぁ~い ? 」
ピーターパンは 縄に繋がれた子供たちを見ました、
ウェンディーも弟のジョンとマイケルも一緒です。
「 みんな無事よ 手荒な真似はされていないわ 」
「 それは良かった もし子供たちがいなくなったら
僕と ティンカーベルは 、、、 」
「 シ~! ピーター 余計なことは言わないで 」
チンカーベルがピーターに目配せしながら言いました。
「 お ゃ あ ?
フック船長は どうしたのかなぁ ~?
なぁ~んだ ワニが怖くて隠れて震えていたのかい、
大人なのに だらしないの ~ あはははっ ♪ 」
「 うぬぬ、ワニかと思えば、お前だったのか ~!
ワシを 騙しおったなあぁぁあ ~! 」
「 ワニに腕を食われた事を 思い出したかい ?
さぞや 恐ろしい体験だったろうな、
でもワニは 食中毒起こさなかったかなぁ ?
あはははっ ♪ 」
「 うぬぬ ! 貴様のせいで
親からもらった大切な腕を食いちぎられたのだぞ ! 」
「 うふふ お気の毒様 ♪ 」
「 ワシは ワニが怖い、トラウマになってしまった 」
「 いい気味だ あはははっ ♪ 」
「 だが、大人には避けられない困難や、
辛い試練が 待ち構えているものなのだ。
そして、それにも耐えて、
いつか 乗り越えなければならないのだ 」
「 まぁ それは それは、大変な事で、
今 ビビリまくっていたくせに カッコ悪ぅ ~。
僕は そんな大人になんかなりたかぁないね、
ふふふふふっ ♪ 」
「 ピーター よ !
もう いい加減に 子供たちを
子供のまま留めおくのを やめたらどうだ !
子供は いつか大人にならなくてはいけない、
お前の エゴのため 子供たちの将来を
閉ざす事が あってはいけない ! 」
「 うっせぇ うっせぇ うっせぇわ !
将来なんて知るもんか ~ !、
けがれ無き子供たちを、
薄汚れた大人などにさせるものか。
子供は子供のままでいるのが しあわせなのさ 」
「 ピーターパンよ、
本当に それで良いと思っているのか ? 」
「 フック船長 よ~く自分の姿を見るがいいさ、
顔には シミ、シワが出来て、
髪には白いものが混じり、
身体も ずいぶんたるんでいるようだぞ。
そんな姿、僕にはとても幸せだとは思えないよ 」
フック船長は 失った自分の手の代わりに付けた
鈍く光る金属製の鉤爪の手に映る
自分の顔を見つめました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210419/09/ff22302370/91/f9/j/o0340034014928681123.jpg?caw=800)
「 シワ、シミ、白髪も ワシにとって
一つ、一つが 歴史なのだ、
けして 誰に恥じる事はない ! 」
「 僕は お肌 つるつる ぷるぷる だよ~ ♪ 」
「 ワシも お前も 昔は子供だった、
二人で仲良く遊んだものだったな。
しかし、お前は 大人になる事を拒んだ。
ティンカー・ベルに そそのかされて家族を棄てた 」
「 自分で決めたことさ、
ティンカー・ベルの 悪口を言うな ! 」
「 妖精は、しょせん妖精だ、
人間の世界の者ではない。
いつまでも 関わっていてはいけない 」
「 黙れ ! 黙れ ! 黙れ !
ティンカー・ベルは悪くない ! 」
「 いいや ! ティンカー・ベルは人を惑わす !
人生を 踏み誤らせる !
人に 関わらせてはいけないのだ ! 」
「 ふ ん !
失礼ね 酷い物言いだわ 」
ティンカー・ベルは 顔を歪めました。
「 ティンカー・ベルよ、
お前が 子供たちを妖かし 連れ去るのは
子供たちの 成長エネルギーを吸い取って
生きているからなのではないのか ! 」
「 ふふっ それは どうかしらねぇ 」
「 いや そうに違いない ! 」
「 邪推も いいところよ オバカさん 」
「 ならば なぜ お前といる子供たちは
成長しないのだ ! 」
「 そっ そんなこと !
あっ あんたに 関係無いでしょう ~!
これだから 大人って やぁねぇ、
また ひどい目に遭わせるわよ ! 」
ティンカー・ベルは 血相を変えて言いました。
「 ワシは、自ら望んで大人になった、
ワシ自身のためにも、
ワシまでも いなくなってしまっては
両親の悲しみは計り知れなく、
嘆きは いつまでも続いただろうからな 」
「 ば~か !
人の悲しみなんかに かまっているから
余計 老けこむんだぜ はっははは ♪ 」
「 確かに、大人になることは、
子供時代ほど 気ままで
楽しくいられるわけではない、
それは 幸せな事ばかりではないかも知れない 」
「 ふふ~ん つまんな~い !
年寄りの泣き言や、お説教ならゴメンだね ! 」
「 ワシの言葉を 泣き言と思えばいい、
お前は まだ人生を知らない お子様だからな 」
「 チッ ! チョ~ ウゼェ~! 大人め ~ ! 」
「 今日こそ 人生の厳しさを教えてやる、
ピーターよ、さぁ 来い ! 」
「 ふふ~ん、今日こそは決着をつけてやるさ !
ひゃ~っははははっははっはは ~♪ 」
二人の 睨み合いが続きました。
ジリジリと間合いが 詰まります。
やがて ピーターが フック船長に飛びかかり、
船の上で 凄まじい戦いが始まりました。
続 く