/
peasap
「 刑吏よ ~ ! メロス様が 来られた ~!
センヌティウス様は人質だ ~!
開放しろ ~! 」
弟子のフィロストラトスは
これ以上ない満面の笑みで
磔台の周りを 飛び跳ねながら言いました。
「 ここにいるメロス様が 磔の刑にされるのだ ~!
殺されるのは メロス様だ ~~!
早く縄を打って磔にして処刑するのだ ~! 」
フィロストラトスは 声高々に勝ち誇るように
メロスを指さしながら 絶叫しました。
「 えぇぇ まってくれよぅ、もっと穏便にぃ 、、 」
メロスは言いました。
「 おぉぉ ! メロス様 メロス様 ~! 」
「 ありがたや ありがたや 救世主さま ~! 」
「 救世主さまを 高く天に 掲げるのだ ~! 」
メロスは 群衆に モミクチャにされて、
高い磔台に 無理やり押上げられました。
メロスは 不安のあまり
すでに 柱に はりつけられていた
セリヌンティウスの両足に すがりつきました。
その姿を見て群衆は感激し どよめきました。
「 うぉぉぉおお ~!
今 メロス様が 磔台に登られた ~! 」
涙を流している者も たくさんいます。
「 ご友人の 生命を救うために
自らが 処刑の場に 来られたのだ 」
「 なんと 崇高な 魂なのだ ! 」
「 神々しい お姿だ ~! 」
「 でも、ボロボロの服を 着ているぞ 」
「 いいや あのボロ雑巾のような お衣装は
自ら世俗の汚れを拭かれてきたからに違いない ~! 」
「 そう言われると そんなような気もするなぁ 」
「 あっぱれ ! 見事だ ! 」
「 男の中の 男だ ~! 」
「 それはジェンダーフリーの精神に反するから
『 人間の中の人間 』 と言わなくっちゃ 」
「 この世の全ての汚れを 浄化するために
神が 我々に 遣わされた御方だ ~~! 」
「 あぁあ ! 尊い御方 救世主さまが
我々の罪を 贖罪するために
今 ここで 昇天なさるのだ ~! 」
拍手が打ち鳴らされ 地面が踏み鳴らされます。
皆が 口々に狂気に取り憑かれたように叫びます、
笛、太鼓、鳴り物が 響き渡ります、
あちこちで狂喜乱舞の踊りが繰り広げられます、
ダンスをしたり、熱い抱擁をするカップルもいます。。
「 セリヌンティウス ~ おしえて、
昇天て 何 ~? 」
メロスは眼に 涙を浮べて言いました。
「 メロス 戻ってきたのか ~?
幼い頃から嘘つきで オオカミ少年と言われ
村人に ボコられて 頭のネジが飛んで、
デッサンが狂った メチャクチャな顔になり、
約束を守れず 裏切りばかりの
お前が よく来たなぁ。
とても信じられないぞ
夢じゃぁないよな ? 」
メロスはセリヌンティウスの頬を強くつねりました。
「 いてぇじゃねぇか !
誰が俺を つねろと言った !
自分をつねってろよ このボケが !
さあ ぼやぼやしないで さっさと代われよ !
この ダメロス うすのろメロス ! 」
メロスは 口汚く罵られて 激昂し
腕に、うなりをつけて
セリヌンティウスの 頬を殴りました。
<< バチコ~ン ! >>
「 痛ってぇな ~! もうぉぉおお !
いったい俺が 何をしたんだよ !
もともと お前のせいだろ、ふざけんなぁぁああ !
この 貧乏神の 疫病神め !
とっとと俺と変わって処刑されろよな ! 」
刑吏に縛られていた縄を解かれたセリヌンティウスは
メロスのボディにキツ~いパンチを叩き込みました。
<< ズドン ! >>
「 ぐっ えぇぇぇ ~ ! 」
メロスは思わず身体を折り曲げ
セリヌンティウスに倒れかかります、
傍目には 二人が かたく
抱擁しているかのように見えました。
「 おぉぉ なんと 麗しい友情なのだろう ! 」
「 さすがメロス様と そのご友人だ 」
「 後世に 語り継がれることだろう 」
暴君ディオニス王は、群衆の背後から二人を、
まじまじと 見つめていましたが、
やがて静かに 二人に近づき
顔を赤らめて、こう言いました。
「 お前らの望みは 叶ったぞ !
お前らは、わしの心に勝ったのだ。
誠意とは 友情とは 信実とは、
決して空虚な 妄想ではなかったのだ。
わしも もう一度 人を信用したくなったのだ、
人として 何が正しい道なのか考えなおす
良い機会になったのだ。
どうか、わしも仲間に入れてほしいのだ、
どうか、わしの願いを聞き入れて、
お前らの 仲間の一人にしてほしいのだ ~! 」
何という事でしょう、
『 人を信じることが出来ぬ 』
そう言っていた王が、
帰るはずがないと思っていたメロスが
友人の元に戻ってきたことに
頑なだった心を 動かされたのです。
大群衆が その言葉を聞きました。
「 バンザ~イ ! 王様 バンザ~イ ! 」
と 歓声が上がりました 、、、、、。
続 く