歩けメロス 10・5 メロス刑場に到着 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




   メロスは 歩きました。

   メロスの頭は からっぽでした。

   何一つ 考えられませんでした。

   ただ、訳の解らぬ 大きな力に

   引きずられて 歩きました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






   歓喜の声をあげる街道の人達が指差す方向に

   巨大なコロシアムが見えてきました。

   そこでセリヌンティウスは磔にされているのです、

   メロス一行はコロシアム内に招き入れられました。


 「 あぁ ~! もうぉぉ ~!

   刑場に 着いちゃったよぉ ~! 」


   メロスは ブツブツと文句を言い、不貞腐れ 

   テレテレとした足取りで 刑場に入りました。

   来たくはなかったのに 完全に余裕で 

   約束の期限に 間に合ってしまいました。

   遅れてくれば 少なくとも命は助かるはずでした。


 「 うっひゃ~ぁぁぁあ あれは ~! 」


   メロスの目は 釘付けになりました。

   広い刑場には、高く作られた台座に 

   磔用の柱が そびえ立っています。

   すでにセリヌンティウスが縛り付けられてたのです。

   メロスは怯え 身体は強張り 足はすくみました。


 「 おぉぉ メロス様は

   御友人を お見捨てにはならなかった 」


 「 なんと 立派な お方なのだ 」


   他の者達が見ると メロスは 威風堂々と

   自らの運命の行先を

   見据えているかのように見えました。


 「 警吏よ セリヌンティウス様を解き放て ! 」

   フィロストラトスが叫びました。


 「 まさか メロスが帰ってきたというのか ? 」

   と 警吏。
   

 「 そ う だ !

   たった今、メロス様が 帰って来られたのだ !

   ディオニス王との契約を

、  成就されるために戻られたのだ。 

   セリヌンティウス様を殺してはならぬ ~ ! 

   友情のため 人としての

   正しい有り様を お示しになるために

   メロス様は 御友人セリヌンティウス様の

   御命を 救いたもうのだ。 

   有り難くも 我々の原罪を背負われて、

   自ら尊い御身を投げ打ち、神の御意志に沿い、 

   人類救済のため 天に召されるため、

   メロス様は ここに 在られる ~! 」

   と 大声で元兵士の山賊の親分が 

   やたらめったら興奮し 広大な刑場の大群衆に 

   雷のような大声で 叫びました。


 「 ちょっと ちょっと ちょっと、

   天に召されるって どうゆ~うこと ?

   何だか 穏やかじゃないんですけどぉ ~ 」

   と メロス。


   山賊の親分に 呼応して

   怒号のような歓声を上げる 

   狂気に取り憑かれた大群衆に取り巻かれ

   ものすご~く メロスは不安です。


   メロスの噂は駆け巡り 大群衆は 一人として

   彼の到着に気がつかない者はいませんでした。


 「 メロス ~! メロス ~! メロス ~! 」


 「 メロス ~! メロス ~! メロス ~! 」


 「 メロン ~! デメロン ~! 」


 「 デメロン ♪ メロンメロンメロン ♪

   デメロン ~♪ 」


   大群集は熱狂して 

   メロスを知らない者も 叫び声を上げます、

   こぶしを空に向け 突き上げます、

   首を激しく振り 地面を踏み鳴らし

   地響きがします。


   すでに 磔の柱に高々と縛りつけられていた 

   セリヌンティウスはというと、


 「 どうせ あいつ 来るわけがねぇじゃん ~!、

   昔から 大嘘つきで、

 『 オオカミが 来たぞ ~! 』 と 大人を騙して、

   オオカミ少年と言われ、

   フルボッコにされたこともあるんだ。

   卑怯者で、裏切り者で、

   まるで ブサイクな悪魔のような奴だ ~!、  

   メロス ~ てめえは 天国になど行けないぞ、

   地獄だ、地獄に堕ちろ ~~~!! 

   人間 しっかぁぁあああ~く ! 」


   絶望して 散々 大声で わめき続けていたので、

   体力を使い果たし、もはや グッタリしていました。


 
          続 く