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メロスは 歩きました。
メロスの頭は からっぽでした。
何一つ 考えられませんでした。
ただ、訳の解らぬ 大きな力に
引きずられて 歩きました。
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歓喜の声をあげる街道の人達が指差す方向に
巨大なコロシアムが見えてきました。
そこでセリヌンティウスは磔にされているのです、
メロス一行はコロシアム内に招き入れられました。
「 あぁ ~! もうぉぉ ~!
刑場に 着いちゃったよぉ ~! 」
メロスは ブツブツと文句を言い、不貞腐れ
テレテレとした足取りで 刑場に入りました。
来たくはなかったのに 完全に余裕で
約束の期限に 間に合ってしまいました。
遅れてくれば 少なくとも命は助かるはずでした。
「 うっひゃ~ぁぁぁあ あれは ~! 」
メロスの目は 釘付けになりました。
広い刑場には、高く作られた台座に
磔用の柱が そびえ立っています。
すでにセリヌンティウスが縛り付けられてたのです。
メロスは怯え 身体は強張り 足はすくみました。
「 おぉぉ メロス様は
御友人を お見捨てにはならなかった 」
「 なんと 立派な お方なのだ 」
他の者達が見ると メロスは 威風堂々と
自らの運命の行先を
見据えているかのように見えました。
「 警吏よ セリヌンティウス様を解き放て ! 」
フィロストラトスが叫びました。
「 まさか メロスが帰ってきたというのか ? 」
と 警吏。
「 そ う だ !
たった今、メロス様が 帰って来られたのだ !
ディオニス王との契約を
、 成就されるために戻られたのだ。
セリヌンティウス様を殺してはならぬ ~ !
友情のため 人としての
正しい有り様を お示しになるために
メロス様は 御友人セリヌンティウス様の
御命を 救いたもうのだ。
有り難くも 我々の原罪を背負われて、
自ら尊い御身を投げ打ち、神の御意志に沿い、
人類救済のため 天に召されるため、
メロス様は ここに 在られる ~! 」
と 大声で元兵士の山賊の親分が
やたらめったら興奮し 広大な刑場の大群衆に
雷のような大声で 叫びました。
「 ちょっと ちょっと ちょっと、
天に召されるって どうゆ~うこと ?
何だか 穏やかじゃないんですけどぉ ~ 」
と メロス。
山賊の親分に 呼応して
怒号のような歓声を上げる
狂気に取り憑かれた大群衆に取り巻かれ
ものすご~く メロスは不安です。
メロスの噂は駆け巡り 大群衆は 一人として
彼の到着に気がつかない者はいませんでした。
「 メロス ~! メロス ~! メロス ~! 」
「 メロス ~! メロス ~! メロス ~! 」
「 メロン ~! デメロン ~! 」
「 デメロン ♪ メロンメロンメロン ♪
デメロン ~♪ 」
大群集は熱狂して
メロスを知らない者も 叫び声を上げます、
こぶしを空に向け 突き上げます、
首を激しく振り 地面を踏み鳴らし
地響きがします。
すでに 磔の柱に高々と縛りつけられていた
セリヌンティウスはというと、
「 どうせ あいつ 来るわけがねぇじゃん ~!、
昔から 大嘘つきで、
『 オオカミが 来たぞ ~! 』 と 大人を騙して、
オオカミ少年と言われ、
フルボッコにされたこともあるんだ。
卑怯者で、裏切り者で、
まるで ブサイクな悪魔のような奴だ ~!、
メロス ~ てめえは 天国になど行けないぞ、
地獄だ、地獄に堕ちろ ~~~!!
人間 しっかぁぁあああ~く ! 」
絶望して 散々 大声で わめき続けていたので、
体力を使い果たし、もはや グッタリしていました。
続 く