歩けメロス4 メロス故郷に帰る | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい





              By かっちゃん




  メロスが村に着くと 陽は既に高く昇って

  村人たちは野や畑に出て仕事を始めていました。

  メロスの妹も、帰ってこない兄の代りに

  羊の群の番をしていました。

  荷物を背負って よろめいて歩いて来る兄の 

  疲労した ヘロヘロな姿を見つけて驚き、
 
  うるさくメロスに質問を浴びせました。


「 お兄ちゃん どういうつもり !

  さっさと用事を済ませば いくら短い足でも 

  夜には帰ってこられたでしょうに !

  無断で朝帰りすんじゃないわよぉお ~ ! 」


「 ぎゃぁぎゃぁ 騒ぐなよぉ 」


「 なによ ~ その言い草 !  

  頼んだ物を ちゃんとお買い物したんでしょうね !?

  それに、よれよれのボロボロで

  元々汚いけど、異常に汚いわ ! 」
  

「 いろいろと 大人の事情があってだなぁ ~

  とりあえず 買い物はしてきたよぅ 」


「 お兄ちゃん シラクス市で 

  歌の下手な ユニゾンでしか歌えない 

  ぼったくり少女歌劇団劇場に行ったり

  エッチな お店で悪い遊びや、

  非合法の薬物摂取とか ヤバい事

  してきたんじゃぁないでしょうね ? 」


「 いや そんなことしないよ、

  だいたい そんな余計なお金持って行ってないし、

  オイラは 大丈夫だから かまわないんだ。 

  後は誰がどうなろうと 知らないよ~だ 」


「 意味が わからないわ ? 

  元々 変だけど 頭、大丈夫 ? 」


「 何が正しいんだか、ちっともわからない 

  いいや オイラの決断は 正しい ~~! 」


  メロスは無理に 笑おうと努めました、

  いかに、臆病者で 卑怯者、

  ろくでなし、ひとでなしとはいえ、

  少しだけ 良心の呵責がありました。


「 酒をくれ 酔っ払いたい気分だ 」


「 いい気なものね 朝帰りして朝酒とは、

  いつから そんなに 

  ご立派になったのかしらぁぁああ ~? 」


「 このとおり 頼むから、飲ませておくれ 」
 
  軽い頭をぺこぺこ下げて 妹に許しをもらい、

  メロスは 酒を しこたま飲みました。


「 ごきゅごきゅごきゅ !

  ぶっふぁぁぁあああ ~! 」


  気の弱いメロスでしたが 

  酒が入ると人格が変わりました

  酒癖が悪く 酒乱の気がありました。


「 くそぉぉおお ~! 

  あの腐れ外道の ディオニス王め ~!

  オイラを小馬鹿にしゃがって ~!

  ブサイクとか、知性の欠片もないとか、

  ルッキズムはダメなんだぞ、

  マトン臭い トンマとか、

  職業差別だ 許せねぇぇええ ~ !

  眼にもの見せてやる ~!

  一発 ぶん殴ってやる がるぅうう ~! 」


  酒の勢いで王様に愚弄されたままではすまさないと

  今頃になって 怒りがこみ上げてきました。


「 オイラは シラクス市に用事を残して来た、

  また すぐ市に行かなきゃならないんだ、

  だから、明日、おまえの結婚式を挙げるぞ、

  早くしろ~! 」


「 えぇ ~? 」

  妹は困惑しました メロスは いつも変ですが 

  どうも 今日は特に様子が変です。


「 うれしいだろう

  綺麗な衣裳も買って来たんだし、

  さあ、これから村の人たちに知らせて来い、

  結婚式は 明日だと ! 」


「 そんな急に 何を言っているの ? 」


「 善は急げだ 時間がないんだ ! 」

  メロスは、よろよろと神々の祭壇を飾り、

  祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、


<< が ~ が ~ が ~ ! >>


  と 大イビキをかき、

  深い眠りに落ちてしまいました。


「 まぁ 実の兄ながら 呆れたわ 」

  妹は 更にメロスを軽蔑しました。



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  メロスの眼が覚めたのは 夕方でした。

  二日酔い状態で頭が痛く、罪悪感を感じながらも、

  王様の所に戻るのがとても怖くなりました。


「 しかたない 悪いけど 

  やっぱり セリヌンティウスには

  身代わりになってもらおう、

  オイラ もともと冤罪なんだし  

  結局 王様は処刑出来れば

  誰でもいいんじゃないの~ぉ ? 」


  ズキズキと 頭が痛みました。


「 二日酔いだぁ ~

  やっぱ こんな時は やっぱ 迎え酒だなぁ

  ゴキュゴキュ ゴキュゴキュ プッハ ~ ♪ 」


  酔いがまわり また 酒の力で気が大きくなり

  ディオニオス王への怒りが燃え上がりました

  メロスは千鳥足で、花婿の家を訪れました。


「 悪いけどさぁあ 少し事情があるからぁあ、

  結婚式を明日にしてくんないぃぃい ~ ? 」


「 それはダメですよ、こっちは 

  まだ仕度も出来ていないし 

  待ってください 」

  婿は驚き 答えました。


「 待ってられないの

  頼むよ どうか明日にしてくれよ ~! 」

  メロスは、更に押して頼みました。

  しかし 婿も頑強でした、

  なかなか承諾してくれません。


「 明日は 仲間内の集会があるのですよ

  出席しないといけない 」


「 仲間より結婚式だ ~! 

  そうだ そいつらも呼べばいいじゃん !

  オイラって なんて賢いんだろぉぉお ~

  うひゃひゃひゃ ♪ 」


  夜明けまで、ちびちびと酒を飲みながら

  議論を続けて、

  どうにか婿をなだめ、すかして、

  説き伏せました。


  結婚式は、婿の仲間たちも 急遽、

  大勢 列席して真昼に行われました、

  新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、

  メロスは、ぐびぐびと酒を飲み酔いが回りました、

  また酒の勢いで つい気が大きくなり

  ディオニス王の 残虐な行いについて

  一席ぶちました。


「 オイラは ひっく! 

  無実の罪で 捉えられ ~!

  王様に はり付けに されそうになりました ~! 

  王様は 無実の者を 処刑するのが好きなのです ~!

  妹の 結婚式を口実に逃げ帰ってきました ~!

  でも オイラが 三日以内に戻らなければ ~ 

  ヒック!

  身代わりの友人は 処刑されてしまいます ~!

  こんな非人道的行為が 許されるのでしょうか ~? 」


  しかし少しずつ酔いが冷めてきて、 

  メロスは また弱気になりました。


「 でも帰ると オイラが処刑されちゃうのよ。

  だから 帰りたくないし オイラは 

  どうしたら 、、、

  いいのでしょうかぁぁぁ ~? 」

  結婚式会場は どよめきました。


「 お義兄さん それは戻らなくてはいけません 」

  新郎が 言いました。


「 そうよ ! お兄ちゃん 

  お友だちを見殺しにする気 ? 」
   
  
「 お義兄さん 私の仲間というのは 

  王様に無慈悲にも 投獄されたり

  処刑された 被害者の会なのです、

  あちこちに 支部があり

  反王制の 地下活動をしているのです 」


「 え~えぇ ? それは知らなかった、

  それって共謀罪で 反体制行為で 反逆罪で 

  ヤバいんじゃないの ~? 」


「 王様の残虐行為を続けさせることはできません、 

  仲間に頼んで あちこちの支部の人間を集めましょう、 

  お義兄さん あなたが代表として 

  抗議行動に出るのです ! 」


「 ちょっと待って 

  それ こわいなぁ 危なそうだしぃぃぃ 」


「 何を言っているのですか ?

  親友が殺されてもいいのですか !?

  人間として恥ずかしいでしょう ? 

  私も そんな義兄が身内では恥ずかしい ! 」


  話は 大事になってしまいました。


「 みなさぁぁあ~ん ! お聴きの通り 

  私の義兄にも類が及び、

  親友が今、義兄の代わりに、

  ディオニス王によって人質になっています ~! 」


「 がやがやがや がやがやがや がやがやがや 」

  会場は異常な熱気に沸き立ちました。


「 さあ 今こそ 立ち上がりましょう ~! 

  我々は 義兄メロスの下に集い 

  義兄の友人を この手で奪還しましょう ! 」


「 う お ~~~! 

  メロス ! メロス ! メロス ~! 」


  皆が 拳を 天に突き上げます。

  幼なじみを 一人、身代わりにして 

  うやむやにしてしまおうとも思っていたのですが、

  いつしか、結婚式は 反体制集会と変わり、

  メロスは活動の お神輿にされてしまったのです。


「 正義を成す時は 来たれり ~!

  時代を変革するために、

 さぁ シラクス市に向けて

  出発しましょう 義兄様 ~ ! 」


「 お兄ちゃん 行くわよ

  ほんとに グズグズしてちゃダメでしょう ! 

  もう 一日半しかないんじゃないの ? 」


「 でも、セリヌンティウスを助けても 

  オイラが死んだら 意味無いじゃ~ん

  とほほ 、、、 」


  メロスは 妹たちに 背中を押されて 

  しかたなく 逃げ帰ってきた道を 

  とぼとぼと 歩きはじめました。




  嗚呼 再びシラクス市に向かう羽目になった

  卑怯者のメロスの運命はいかに ?


       続 く