、
Angel T.
クリスマスも間近な 19世紀のロンドンのお話です。
街の人が時折り とある建物の一角に出入りしています、
そこでスクルージは 金融などの商売をしています、
共同経営者の マーレィに死なれて7年になりました、
マーレイ亡き後も 商売は順調でした。
「 今年も 順調に儲けたわい
来年は もっと儲けたいものじゃ うひひひ ♪ 」
ありとあらゆる無駄を削り、冷酷と言われようと、
守銭奴と言われても、ひたすら金儲けに励んでいました。
「 おい見てみろよ あいつが金の亡者のスクルージだ
あいつが通った後はぺんぺん草も生えないって言うぜ 」
「 金の亡者は早く地獄に行ってもらいたいものだ 」
「 でも あんな奴に限って 長く世にはばかるのさ 」
「 ちげぇねぇや 人の生き血を啜る
吸血鬼 みたいなもんだからなぁ
政治家と組んで税金かっぱぐ政商といい勝負だ 」
街に出ると スクルージを知る者は
まるで 蛇蝎を見るが如く、
忌み嫌う視線を 投げかけるのでした、
しかしスクルージは 意に介しません。
「 ふん ! 貧乏人めが ほざくがいいさ
しょせん この世は 金がものを言うんじゃ
金さえあれば 怖いものなどあるものか
ぐわっははは ♪ 」
金こそが 彼に心の平安をもたらし、
未来を保証してくれると信じて疑わないからでした。
「 わっ! でた ケチケチじじい 」
「 にげろ ! 身ぐるみ剥がされるぞ 」
「 きゃぁ ~! 」
子どもたちにも 嫌われています。
スクルージは この頃、
歳のせいか、働きすぎのせいなのか、
胃が痛み 体調がすぐれないことがありました。
「 マーレイの死後 今まで一人で切り盛りしてきたが
老眼にもなったし 細かい数字が見えにくい
そろそろ 簿記係でも雇うとするか 」
スクルージは 失業中だったボブ・クラチットの
弱みにつけ込み 思いっきり 薄給で雇いました。
クリスマスも近いある日、スクルージは
身体の違和感と、体調の悪さから
近所のロンドン市内の
とある診療所に出かけました。
「 J・ワトソン・クリニック かぁ、
まぁ 一番近いし ここでいいかな ?
間抜けな やぶ医者じゃなければいいんじゃがな 」
痩身で長身の男が 診療所の入り口の側で、
虚ろな眼をして パイプをくゆらせていました。
「 あのぅ ちょいと お尋ねしますが
ここの先生は 腕がいいんじゃろうか ? 」
スクルージは 男に尋ねました
「 あぁ 彼は 私の友人です、
アフガニスタン帰りの
軍医だった勇猛果敢な男ですよ、
怪我して帰ってきましたが。
腕が良いとか 有能かどうかは、
また別の話ですがね、
でも医者には違いないですよ。
私の推理だと あなたは
何らかの病気の不安を 抱えていますね ?
ふふふっ ♪ 」
慇懃無礼な 変な男の 変な言い方に
スクルージは イラッとしました。
「 わざわざ診療所に来るのだから
不安があるのは 当たり前じゃ !
推理以前の問題じゃ !
余計なお世話じゃ !
問題があるのは お前の方だろ あほか ! 」
スクルージは 男を怒鳴りましたが、
他の病院を探すのも 面倒なので、
とりあえず ここで診察を受けることにしました。
「 お待ちのスクルージさん どうぞ 」
「 先生 外に変な男がいましたが
ここのクリニックの関係者ですかな ? 」
「 あぁ 彼は流行らない 暇な探偵です
どうか お気になさらずに 」
「 オーストリアの ジークムント・フロイト
( 精神分析学者、精神科医 )にでも
診てもらったほうがいいんじゃないですかな ? 」
「 いや 彼は単なる ジャンキーです、
仕事さえあれば クスリはやらないんですがねぇ。
さて 診察しましょう 」
「 この頃 体調が すぐれないのじゃが
どんなもんじゃろう ? 」
「 産業革命の現在
石炭などの燃焼に伴う煙や微粒子によって
恒常的にスモッグが発生して、
ロンドンは 『 霧の都 』 と言われます
PM10や PM2・5が 人の呼吸器系を蝕み
そのため病気になる人が多いのですよ 」
「 人の命より 産業革命か やれやれ、
とは言え 金儲けも大事じゃからのぅ 」
「 やがては イギリス以外の国でも産業が隆興すると
深刻な問題が起きるに違いないですよ、
アジアあたりも 酷いスモッグが発生して
ヒドイことになる予感がします 」
「 行ったこともない 他の国のことなど知らん。
今は ワシの健康が問題じゃ 」
「 では診察しましょう どれどれ う~む ? 」
「 先生 どうなんですかのう ? 」
「 スクルージさん ご家族は いますか ? 」
「 いいや ワシは 独り者じゃ 」
「 では 貴方に 告知しますが 、、 」
「 なんじゃろ ? 」
続 く