世界で一番美しいもの 7 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

  食事もままならない辛い生活が 

  いつしか 奥方の身体を蝕みました。

  体調が思わしくなく、咳き込むことも多くなり、

  体力も衰え、もしかしたら このまま 

  どこかで、行き倒れてしまうのではと思い

  奥方は 不安になりました。


  疲れ果てた奥方は、

  風に吹かれ 導かれるように、

  ある日、ある村に辿り着きました。

  奥方は その地の一面の風景に

  眼が 釘付けになりました。


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  そこには刈入れ時期の 小麦畑が広がっていました、

「 あぁ 夕日に照らされて 黄金色に輝く小麦畑、

  風に吹かれ なびき 光り輝いている。

  成長した小麦は 自らの命で人の命を支えてくれる。

  私の命も支え続けてくれた、

  何という美しさ 神々しさ、

  今まで 私は気付かなかった、

  人生の どん底の中、 

  やっと あの時の船長の気持ちが理解できた。

  なんと 私は愚かであったのだろうか 、、、 」


  奥方は こうべを垂れ 神に祈りました。





「 やっと 気付いたようじゃのう 」

  奥方は その声に 顔を上げました、

  そこには 見覚えのある老人が立っていました、

  小麦を海に投げ棄てさせた時に 咎めた老人でした。
 

「 はい あの時の 船長の気持ちが 分かりました 」

「 そうかい そうかい 」

「 私は愚かでした。

  虚飾に塗れ 今まで物事の真価を

  見極めることが出来なかったのです 」

「 人生は シンプルで良いのだ 」

「 この世は 美しいものに みちています 」

「 ふむ ふむ 」

「 人が作り出すものも 自然の あるがままのものも

  けっして それらには

  順列を つけられるものではありません 」

「 う む 」

「 そして、心に染み入る とても美しく、

  尊いものを 知ることができました 」

「 ほう それは何じゃな ? 」

「 貧しき境遇にあっても 他者を思いやり

  情けをかけてくれる人たちが

  たくさんいるのです 」

「 うむ 貧しき者は幸いである、

  神の国は その人達のものだ 」

「 優しい慈悲の心は とても とても

  美しく 尊いものだと知ることができました

  今は心穏やかで 魂が浄化された気持ちです 」


  老人は 満足そうに頷きました。

「 必ずや汝のために神の国の扉は開かれるであろう 」

  そう言うと 老人の姿は 小麦畑に消えました。

  奥方の心は 清々しい気持ちに溢れました。

  大地にひざまずき 夕日に照らされ 祈る奥方の姿は 

  神々しいほどの 黄金色の光に包まれました、
 
  そして 静かに崩れ落ちました。


         続 く