世界一美しいもの 4 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



  ある朝、大変な知らせが届きました。

  奥方の貿易船団が嵐に遭遇して、

  海に沈んでしまったというのです、

  莫大な物資、高価格の商品が

  海の藻屑と 消えました。


「 何ですって ~!

  かってない 大きな取引だったのにぃ ~!

  どうしましょう ~!

  きぃぃぃいいいいい ~!  」


  本来は安全策を講じる必要があったのですが

  より贅沢をしたいがために

  一攫千金 ボロ儲けを狙った

  ギャンブル的な貿易だったのです。


  これを始めに、不幸な事が次々と続きました。

  銀行の融資が打ち切られ 事業が傾き、

  不審火で 家が火事になったり、

  亭主が 事業と奥方に見切りをつけて 

  秘密に囲っていた 若い愛人と駆け落ちしたり、

  信用していた会計係に 有り金を全て持ち逃げされたり、

  使用人に 宝飾品 金銀の食器を持ち逃げされたり、

  いつの間にか 絵画 彫刻が

  偽物とすり替えられていたり、

  踏んだり蹴ったり 泣きっ面に蜂です。


  おまけに 約束手形が乱発されおり、 

  身に覚えのない借金の証文も大量に見つかりました。

  会計係が ギャンブルにのめり込み

  ヤバイ筋の者にイカサマを仕掛けられていたのです。 

  ただの使用人である会計係が 

  払えるはずのない莫大な金額を請求をされました。

  断れば 命の保証はしないと脅され、

  仕方なく その穴埋めのため無断で約束手形を切り、 

  山のように 借金を重ねていたのです。


  貿易船団が無事であるならば 

  奥方にも 返せないはずのない金額でしたが、
  
  今となっては 一生かけても返せない大金なのです。


「 何て いうこと ! 

  この家は 品性下劣で ろくでなし、

  泥棒たちの 巣窟だったのねぇぇええ ~ !

  ちっくしょぉぉぉぉおおおおおお ~ ! 」


  筋の悪いヤバ~イ債権者が 大挙して押し寄せました。

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「 こらぁ ~! でてこ~い !」

「 われぇえ ! ドア 開けんかい ! 」

「 いるのは わかっているんだぞ ~! 」

「 おんどりぃゃぁあああ ! 」

「 金返さんかい ! 」

「 いてもうたるど ~! 」

「 ご近所の 皆さ~ん この家の人は

  お金を借りて 返してくれないんですよ ~! 」

「 善良な債権者を 裏切っていま~す~! 」

「 お金を借りるだけ借りて返さない

  極 悪 人 で ~ す ! 」

「 金融業者も 生活があるんですよ ~! 」

「 借金を帰してもらえないと

  明日のパンも 買えませ~ん ! 」

「 ご近所のみなさ~ん

  これで 良いのでしょうか ~! 」 

「 皆さんも一言 言ってくださぁあ~ぃぃいい ! 」


  朝から夜まで 近所迷惑な大声を上げます。

  ご近所の上流階級の人達は眉をひそめ、

  家の前に来て 嫌味を言います。


「 全く 近所迷惑だわぁ ~! 」

「 借りた お金も返せないなんて 」

「 恥ずかしいことよねぇ ~ 」

「 太りすぎて 首が回らなくなったのねぇ 」

「 身の程をわきえない贅沢三昧が

  いけなかったんじゃないのぉ ? 」

「 こ~んな屈辱 私なら

  恥ずかしくて生きていられないわぁ ~ 」

  そんな事を言われるのは 見栄張りの奥方には 

  とても耐えられないことでした。


「 ひゃぁぁぁあああ ~ ! 

  もう ここには いられないぃぃいいいい ~! 」

  奥方は 居た堪れない思いで 着の身着のまま 、

  夜中、火事で廃墟同然になった屋敷の裏口から

  こっそりと 逃げ出しました。


「 何の因果で 私が 

  こんな目に 遭わなきゃいけないのよ ~!

  まったく 神も仏も あるもんか ~!

  ざけんなよ ~! 

  呪ってやるぅぅぅううう ~! 」



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