ベニスの商人の弁明 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




はい、賢明なる裁判長様、

私は 胸の肉 1ポンド以外は、

一切 いただくつもりはありません。


え え ぇ、  な ん で す と ? 

血の一滴も 流してはならぬと申されますか ?

証文には どこにも血を流してはならぬという

禁止条項は ありませんがねぇ。 

そうだ 流れ出た血は一滴残らず お返しいたします、

それならば 証文どうりでございましょう。


えぇぇえ !、 

公 序 良 俗 に 反する ? 

ふ あ ぁ、そう言われては困りましたなぁ。



そもそも、無担保で 

若者に大金を融資する者が 私以外に 

この街のどこに おりましょうや ?

金策に走り回り 困り果てていた彼に

唯一 貸したのが私でございます、

彼にとっても 一航海の時化で

全財産を 失ってしまう、

そんな 無謀とも言える危険な商いでございますよ。


私は 彼の願いをかなえただけです、

命 そのものをよこせ !

と言っている訳ではないのですよ、 

そのくらいの覚悟は 必要という事でございます。 


それでもならぬ と申されますかぁ、

そうですか、  

はい はい、 わかりました、 

胸の肉 1ポンドは けっこうです、

どうせ 釣り餌にしかなりませぬ、

まぁ 軽い 嫌がらせですから。 


お聞きくだされ 

小柄な ちょび髭の裁判長様、
                                      
思えば 我々 ユダヤの民は 

モーゼが エジプトを出て以来、

いや それ以前から苦難の連続でございました。

どの土地においても、

疎まれ、蔑まれ、耐えて、

生き抜いて来たのでございます、

今の時代、この国でも。


いや 何十年、何百年後の 時代でも 

ユダヤの民 という事だけで、

そんな 気がいたします、 

は い。

そして、それは けっして、 

この地だけ とは限りますまい。

どこか 他の地に おいても、

ちょび髭を生やした 小男が

ユダヤの民に 恐ろしい

責め苦を負わす、やも知れませぬ、

それは単なる 老人の妄想でありましょうか ?

いいえ、いつか、きっと 必ず 、、、。


えっ 本件と 関係ない ?

余計なことを べらべらと喋るな ?


え ぇええぇ ~ ? 

法 廷 侮 辱 罪 で す と ?



うぬぬ、さても口惜しや、

この恨み いつか晴らしてやろうぞ、

ワシの涙で この街を 

水浸しにしてやろうぞ 、、、。




  ベネチア(ベニス)の洪水 
               ウィキペディアより