歩けメロス 25 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




   集団ヒステリーのような 興奮状態の大群集には 

   メロスの声は 聞こえません。

   歌や、笛、太鼓、鳴り物、弦楽器、

   刑場は お祭り騒ぎです。


 「 お兄ちゃん 立派よ カッコいい ~♪

   普段とは 別人みたい ~♪ 」


   メロスの姿は 傾き始めた太陽に  

   背中を照らされ 逆光のシルエットとなり 

   後光が射しているかのように神々しく見えました。

   妹が うっとりと見上げています。


 「 やれやれ この騒ぎでは 

   もう群衆を 止めることができませんなぁ ~

   いたしかたありません 天命です !

   ここは一つ 民衆の望むままに

   おとなしく じたばたせず 天に召されてください。

   それが一番 おさまりがいいですよ、

   そうしましょう そうしましょう 」

   義弟が 言いました。


 「 救世主の悲運、御立派な 最後の御姿は、 

   必ずや 長く後世に語り継がれることでしょう 」

   近衛隊長との決戦を制した元百人隊長の 

   山賊の親分ケントリュウスが 

   他人事のように 無責任に言いました。


   その言葉に 納得したように 

   元兵士と寝返った刑吏、近衛兵たちも、

   磔台の上の二人を見つめ うなずいています。
   

 「 まぁ もともと お前が

   はりつけられる はずだったんだから

   これも運命だ、しかたないよね ~ 

   お前のことは 忘れないよ ~ ぷぷぷ ♪ 」

   セリヌンティウスも言いました。


 「 お祭りのフィナーレは やはり

   ど派手じゃないといけませんよね。

   スペシャルな出し物 王様とメロス様の 血祭り

   これは見ものですねぇ ~ うきうき ♪ 」

   弟子の フィロストラトスも メロスを指さして 

   いかにも嬉しそうに 満足そうに笑っています。


 「 ねぇねぇ 確かに 一義的には

   オイラ 磔刑になるため 

   シラクス市に帰って来たことになるけどさぁ、

   みんなは 王様に抗議するために

   オイラと一緒に来たんじゃないの ~! 

   もともとの主旨と ちがうんじゃないの ~! 」


 「 今更 何を言ってる ! 往生際が悪いぞ ! 」

   セリヌンティウスが 怒鳴りました。


「  そ ん な ~~~! 」


   そんなメロスに お構いなく

   何処からか薪が運ばれてきました。





 「 じぇじぇじぇ ? 

 『 ま き 』 って どういうこと ~?

   まだ 焚き火のシーズンじやぁないしぃ 

   キャンプファイヤーでもするのぉ ~? 」


   王様と メロスの 十字架の下に 

   薪が 高く積まれました。


 「 もはや 群衆の怒りは

   激しく燃え盛り 収まらぬ、 

   わしらは 火あぶりにされるのだ、 

   これも また 運命なのだ 」


 「 なんだってぇぇえ ~! 」


 「 これほどまでに 熱狂的な騒乱になっておる。

   その締めくくりの 劇的なフィナーレのために、

   民衆に選ばれた 神への生贄が必要なのだ !

   それが ワシと お前なのだ

   わかったか ~! 」


 「 ひゃぁぁあああ ~! 

   ちっとも わかんないよぉぉおおお ~!

   た す け て ぇ ぇ え え ~ ! 」


         続 く



       【 運 命 】

        
   暴君が悪いことをする際によりどころとするもの、

   間抜けが,ヘマをやらかした時の口実にするもの。


         A,ピアス