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By かっちゃん
メロスが村に着くと 陽は既に高く昇って
村人たちは 野や畑に出て仕事を始めていました。
メロスの妹も、帰ってこない兄の代りに
羊の群の番をしていました。
荷物を背負って よろめいて歩いて来る兄の
疲労した ヘロヘロな姿を見つけて驚き、
うるさくメロスに質問を浴びせました。
「 お兄ちゃん どういうつもり !
さっさと用事を済ませば いくら短い足でも
夜には帰ってこられたでしょうに !
かってに 朝帰りすんじゃないわよお ~ ! 」
「 ぎゃぁぎゃぁ 騒ぐなよぉ 」
「 なによ ~ その言い草 !
頼んだ物を ちゃんと
お買い物したんでしょうね !?
それに、よれよれのボロボロで
元々汚いけど、異常に汚いわ ! 」
「 いろいろと 大人の事情があってだなぁ ~
とりあえず 買い物はしてきたよぅ 」
「 お兄ちゃん シラクス市で
歌の下手な ユニゾンでしか歌えない
ぼったくり少女歌劇団に行ったり
極東の島国の変な議員みたいに
浴びるほど お酒を飲んだり
エッチな お店で悪い遊びや、
非合法の薬物摂取とか ヤバい事
してきたんじゃぁないでしょうね ? 」
「 いや そんなことしないよ、
だいたい そんな余計な金持って行ってないし、
オイラは 大丈夫だから かまわないんだ。
後は 誰が どうなろうと 知らないよ~だ 」
「 意味が わからないわ ?
元々 変だけど 頭、大丈夫 ? 」
「 何が正しいんだか、ちっともわからない
いいや オイラの決断は 正しい ~~~! 」
メロスは無理に 笑おうと努めました、
いかに、臆病者で 卑怯者、
ろくでなし、ひとでなしとはいえ、
少しだけ 良心の呵責がありました。
「 酒をくれ 酔っ払いたい気分だ 」
「 いい気なものね 朝帰りして朝酒とは、
いつから そんなに
ご立派になったのかしらぁぁああ ~? 」
「 このとおり 頼むから、飲ませておくれ 」
軽い頭を ぺこぺこ下げて 妹に許しをもらい、
メロスは 酒を しこたま飲みました。
「 ごきゅごきゅごきゅ !
ぶっふぁぁぁあああ ~! 」
気の弱いメロスでしたが
酒が入ると人格が変わりました
どこかの島国の議員のように
酒癖が悪く 酒乱の気がありました。
「 くそぉぉおお ~!
あの腐れ外道の ディオニス王め ~!
オイラを小馬鹿にしゃがって ~!
ブサイクとか、知性の欠片もないとか、
マトン臭い トンマとか、
許せねぇぇええ ~ 眼にもの見せてやる ~!
一発 ぶん殴ってやる がるるぅぅうう ~! 」
酒の勢いで 王様に愚弄されたままではすまさないと
今頃になって 怒りがこみ上げてきました。
「 オイラは シラクス市に用事を残して来た、
また すぐ市に行かなきゃならないんだ、
だから、明日、おまえの結婚式を挙げるぞ、
早くしろ ~! 」
「 えぇ ~? 」
妹は困惑しました メロスは いつも変ですが
どうも 今日は特に様子が変です。
「 うれしいだろう、綺麗な衣裳も買って来たんだし、
さあ、これから村の人たちに知らせて来い、
結婚式は 明日だと ! 」
「 そんな急に 何を言っているの ? 」
「 善は急げだ 時間がないんだ ! 」
メロスは、よろよろと神々の祭壇を飾り、
祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、
<< が~ が~ が ~ ! >>
と 大イビキをかき、
深い眠りに落ちてしまいました。
「 まぁ 実の兄ながら 呆れたわ 」
妹は 更にメロスを軽蔑しました。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
メロスの眼が覚めたのは 夕方でした。
二日酔い状態で頭が痛く 罪悪感を感じながらも、
王様の所に戻るのが、とても怖くなりました。
「 しかたない 悪いけど
やっぱり セリヌンティウスには
オイラの身代わりになってもらおう、
オイラ もともと 冤罪なんだし
結局 王様は処刑できれば
誰でも いいんじゃないのぉ ? 」
ズキズキと 頭が痛みました。
「 二日酔いだぁ ~
やっぱ こんな時は やっぱ 迎え酒だなぁ
ゴキュゴキュ ゴキュゴキュ プッハ ~ ♪ 」
酔いがまわり また 酒の力で気が大きくなり
ディオニオス王への怒りが燃え上がりました
メロスは千鳥足で、花婿の家を訪れました。
「 悪いけどさぁあ 少し事情があるからぁあ、
結婚式を明日にしてくんないぃぃい ~ ? 」
「 それはダメですよ、こっちは
まだ仕度も出来ていないし 待ってください 」
婿は驚き 答えました。
「 待ってられないの 頼むよ
どうか明日にしてくれよ ~! 」
メロスは、更に押して頼みました。
しかし婿も頑強でした、
なかなか承諾してくれません。
「 明日は 仲間内の集会があるのですよ
出席しないといけない 」
「 仲間より結婚式だ ~!
そうだ そいつらも呼べばいいじゃん !
オイラって なんて賢いんだろぉぉお ~
うひゃひゃひゃ ♪ 」
夜明けまで、ちびちびと酒を飲みがら議論を続けて、
どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せました。
結婚式は、婿の仲間たちも 急遽、
大勢 列席して真昼に行われました、
新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、
メロスは、ぐびぐびと酒を飲み 酔いが回りました、
また酒の勢いで つい気が大きくなり
ディオニス王の 残虐な行いについて
一席ぶちました。
「 オイラは ひっく! 無実の罪で 捉えられ ~!
王様に はり付けに されそうになりました ~!
王様は無実の者を 処刑するのが好きなのです ~!
妹の 結婚式を口実に 逃げ帰ってきました ~!
でもオイラが 三日以内に戻らなければ ~ おぇっ!
身代わりの 友人は 処刑されてしまいます ~!
こんな 非人道的行為が
許されるのでしょうか ~? 」
しかし少しずつ酔いが冷めてきて、
メロスは また弱気になりました。
「 でも帰ると オイラが処刑されちゃうのよ。
だから 帰りたくないし オイラは
どうしたら 、いいのでしょうかぁぁ ~? 」
結婚式会場は どよめきました。
「 お義兄さん それは 戻らなくてはいけません 」
新郎が 言いました。
「 そうよ ! お兄ちゃん
お友だちを見殺しにする気 ? 」
「 お義兄さん 私の仲間というのは
王様に無慈悲にも 投獄されたり
処刑された 被害者の会なのです、
あちこちに 支部があり
反王制の 地下活動をしているのです 」
「 え~えぇ ? それは知らなかった、
それって共謀罪で 反体制行為で 反逆罪で
ヤバいんじゃないの ~? 」
「 王様の 残虐行為をこのまま
続けさせることはできません、
仲間に頼んで あちこちの支部の人間を集めましょう、
お義兄さん あなたが代表として
抗議行動に出るのです ! 」
「 ちょっと待って
それ こわいなぁ 危なそうだしぃぃぃ 」
「 何を言っているのですか ?
親友が殺されてもいいのですか !?
人間として恥ずかしいでしょう ?
私も そんな義兄が身内では恥ずかしい ! 」
話は 大事になってしまいました。
「 みなさぁぁあ~ん ! お聴きの通り
私の義兄にも類が及び、親友が今、義兄の代わりに、
ディオニス王によって人質になっています ~! 」
「 がやがやがや がやがやがや がやがやがや 」
会場は異常な熱気に沸き立ちました。
「 さあ 今こそ 立ち上がりましょう ~!
我々は 義兄メロスの下に集い
義兄の友人を この手で 奪還しましょう ~! 」
「 うお ~~~! メロス ! メロス ! メロス ~! 」
皆が 拳を 天に突き上げます。
幼なじみを 一人、身代わりにして
うやむやにしてしまおうとも思っていたのですが、
いつしか、結婚式は 反体制集会と変わり、
メロスは 活動の お神輿にされてしまったのです。
「 正義を成す時は 来たれり ~!
時代を変革するために、
さぁ シラクス市に向けて
出発しましょう 義兄様 ~ ! 」
「 お兄ちゃん 行くわよ
ほんとに グズグズしてちゃ ダメでしょう !
もう 一日半しかないんじゃないの ? 」
「 でも、セリヌンティウスを助けても
オイラが死んだら 意味無いじゃ~ん
とほほ 、、、 」
メロスは 妹たちに 背中を押されて
しかたなく 逃げ帰ってきた道を
とぼとぼと 歩きはじめました。
嗚呼 再びシラクス市に向かう羽目になった
卑怯者のメロスの運命はいかに ?
続 く