偽作 ナイチンゲールと赤いバラ 6 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




「 あぁぁあぁ なんて馬鹿げているんだ ! 」

  学生は屈辱感にまみれ 駆け出しました。


「 あんな無礼な女に恋をして のぼせ上がっていたなんて !

  僕は馬鹿だった、世間知らずだった ! 」

 
  学生は頭の毛を かきむしりました。


「 人の気持ちなど 女の気持ちなど わからない ! 

  学んだ論理学は役に立たない、何も証明しない。

  真実であること、無いこと関係なく

  仮定の事を議論してるだけだ、机上の理論だ、

  だから実際、現実の恋の役にも立たない。」

   
  学生は 流れる涙も拭いませんでした。


「 あの娘は 鳥のナイチンゲールに似ている、

  あの娘は 美しい声でさえずる、

  人の心を 籠絡するように 」 

  学生は ぶつぶつと呪詛のように 呟きました。

「 あの容姿の美しさ 綺麗な声の魅力は

  誰にも否定できないだろう。

  だが、しかし あの娘は 

  人間らしい感情を持っているだろうか ? 

  いいや、恐らく持たないのだろう。

  そうでなければ この僕を 

  こんなにも傷つける事はできないだろう。

  あの娘は エゴイストな芸術家に似ているのさ、

  格好つけてばかりで、誠実さの欠片もない。

  他人のために 自分を犠牲にはしないだろう、
 
  あの娘の頭にあるのは ただ高価で美しい物を

  自分勝手に 愛でることばかりだ。

  気どった芸術家のように利己的だ !

  あの娘の容姿は天使のようだ、

  その声は 歌うように、さえずるように、

  優雅で美しい、僕を夢中にさせた。

  でも、もう僕にとって 何の意味も持たない、

  僕の尊い血で贖った懸命な努力は

  感謝どころか、理解すらされなかった。

  あの娘によって 地に打ち捨てられたのだ。

  まるで、僕を 地に這いつくばらせるように ! 」


  学生は部屋に飛び込むように入りました、

  今は、外の空気さえ身を切り裂かれるように感じられ、

  とても耐えられないのです。


「 もう無駄な恋など、しない !

  これからは 実際に役立つこと必要だ、

  僕は もっと実学を勉強するべきなんだ ! 」


  学生は、藁布団の粗末なベッドに突っ伏して

  叫び 泣きわめき 疲れ果て、

  失意のまま 気絶するように眠り込んでしまいました。


         続 く