偽作 不思議の国のアリス 19 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




   アリスは、森の中で 激しく動きまわりました。

   長くなった首が あちこちで

   樹の枝にからまってしまうので、

   その都度 止まって

  こんがらがった首を ほどくからです。


「 あぁぁ めんどくさい ~!

   キリンが 密林じゃなくて

   草原にいるのがよく分かるわ 」


   ふと、自分がキノコの欠片を

   持っていたのを思いだしました、


「 慎重に、まずは片方をかじって、

  それから反対側をかじって、

   少しずつ調整しながら 

   大きさを変えればいいのよ、

  あたしってば かしこい ~♪ 」


   アリスは手の届くところまで頭を下げ

  キノコをかじり、

  大きくなったり、小さくなったりしながら

  元々の大きさに戻りつつあったのでした。


「 このくらいのサイズは

   お久しぶりぶりざえもんだわ、

   何だか変な気分、人は意外と

   変化に順応してしまうものなのね 」


  アリスは やっと元々の大きさに戻りました。

    
「 よっしゃぁぁあ ~! これで 0K! 

  でも どんな原理でサイズの変化が起きるのかしら ?

   もしかすると 人間体から変身すると、

   でっかくなる巨大ヒーロと同じ理屈なのかしら ?

   体を構成する分子密度が 希薄になるのかしら ?

  アントマンという映画もあったけど

   極小サイズになっても質量は保全されるのかしら ?

  それだと 土の上だと沈んでしまうかも 」


   しばらくアリスは その原理を

   乏しい知識で考えましたが、

   当然 合理的な結論はでません。

    
「 まぁいいや、元の大きさには戻ったぞっと。

  次は あの綺麗な花壇や噴水のある

  お庭に行くことよ。

  いったい どうやったら 行けるんだろう ? 」

 
   森を歩きながら呟いていると、

  開けた場所にでました。

 そこには 高さ120センチくらいの家がありました。


「 わぁ 大きめのドールハウスみたい、

  誰が住んでるのかしら ?

 理科ちゃんとか 馬~尾~ちゃんとか ? 」

  とアリスは興味を持ちました、

  ぜひ 中を見たいものと思いました。


「 多分、20~30センチくらいの住人だわ、

  このままでは 怖がらせちゃうかもね、

  めんどくさいけど、また サイズを変えなくちゃ 」


  右手のキノコの欠片を かじり、

  身長を 25センチくらいにしました。


  アリスが その家を眺めていると、

  いきなりメイド服を着たメイドらしき者が、

  森から来ました、

  その者は魚を思わせる顔でした。




「 魚顔かぁ ~ いるわねぇ そんな人。

  あんこうとか ハゼとかね、

  あたし そんな顔でなくてよかったわ うふふ 」

  自分をさておき つい 他人の容貌を

  批評をしてしまうアリスでした。

   
  メイドは ドアをノックしました。

  ドアが 開きました。


  ドアを開けたのは、その家のメイドでした、

  丸顔で大きな目をした 

  まるでカエルの顔のようです。




「 いるわよねぇ、カエル顔の人、

  目と目の間隔が あいているのよね、

  お間抜け顔よねぇ、うふふ 」

  アリスは自分を棚に上げ 美醜にキビシイのでした。


  メイドは二人とも、

  髪の毛を もじゃもじゃにカールしています。


「 カーリーヘアは 古臭いわねぇ、

  あたしは ゆるふわヘアがお気にいりぃ ~ ♪ 」


   アリスは きき耳をたてました。

  魚顔メイドは、手紙を取り出し

   カエル顔メイドに渡しながら言いました。


「 公爵夫人殿へ~ 女王様より~

  クロケーの ご招待で~す 」

   カエル顔メイドは言葉の順番を変え繰り返しました。


「 女王様より~、クロケーのご招待~、

  公爵夫人殿へ~で~す 」


  両者は うやうやしくお辞儀をしました、

   頭が接近しました、すると

  カールした互いの髪の毛が

   からまってしまいました、

  慌てて離そうとすると

   余計こんがらがって大騒ぎです。


「 わかりやすいボケね げらげら ♪ 」

   古典的なコントのようでしたが

   お笑いのレベルが低いアリスにはウケました。

  
   ようやく髪の毛が解け 魚顔のメイドは

   丁寧に お辞儀をして帰って行きました。

「 なるほど ここには公爵夫人が住んでいるのね、

  どんな顔だか 見てみたいわ 」

   カエル顔のメイドが、ドア近くの地面に座り、

   ぽっか~んと 呆けたように空を見あげています。

   アリスはドアにまで行って、ノックしました。


<< トントントン >>


「 ノックなんかしてもムダだよ~ん ケ~ロヨ~ン 」

   と メイドが言いました。

「 ケロヨンとは また古いことを、

  エゲレス・スコットランドの

  小説家ケネス・グレアムの

  児童文学 『 たのしい川べ 』 の翻訳の、

  カエルの着ぐるみの 元祖ゆるキャラ風 

  キャラクターじゃないの アナクロだわ、

  YouTubeに 少しあるわね 」


「 話の途中だけど いい ? 

  その理由は 二つだよ~ん。

  あたしが あんたと同じドアの

  こっち側にいるんだよ~ん、

  あんたの姿は見えてるよ~ん。

  家の中は 騒々しいんだよ~ん、

  誰も あんたのノック音なんか 

  聞こえやしないんだよ~ん 」


  家の中では 騒動になってるようです

  誰かが 泣きわめいてクシャミをして、

  食器が 割れたような音がするのです。


「 あたしは どうやって家の中に入ればいいの ? 」

  と アリス。


「 もし あんたが中にいて、ノックすれば、

  あたしが 外に出したげられるんだよ~ん 」

  と カエル顔のメイドは空を見あげたままです。


「 だから どうやって入ればいいの ~ ? 」

  と アリスは繰り返し聞きました。

  カエル顔メイドは言います。


「 あたしゃ ここにいるんだよ~ん、

  明日になっても たぶんそうだよ~ん

  中には戻りたくないんだよ~ん 」

  皿がドアにあたって

  派手に割れる音が聞こえてきました。
  

「 明後日になっても

  ここにいるかもだよ~ん ケロヨ~ン 」

  メイドは 気にせず言いました。


「 どうやって 家に入ればいいのよ ! 」

  とアリスは、もっと大きな声で言いました。


「 そもそも あんたが、家に入っていいのかどうか、

  まず それが問題だよ~ん ケロケロ 」


「 じゃぁ あなた公爵夫人に聞いてきたらどう ? 」

「 やなこっただよ~ん ケロケロ 」


  でもアリスは、家に入りたいという

  好奇心に囚われ 我慢できずにいます。


「 まったく ど頭に きちゃうわよね ~! 

  このメイド風情が 偉そうに

  あたしに口答えするのって 精神状態が 

  グッチャグチャの異常になりそうよ ~! 」

 
「 あたしゃ ここに座ってるんだよ~ん、

  ず~っと ず~っと、何日も何日もだよ~ん 」


「 じゃぁ あたしは どうすればいいの ? 」

  と アリス。

 
「 お好きなようにすればいいんだよ~ん

  ケロロ軍曹 」 

  と メイド。


「 あたしは そんな異形の

  カエル・エイリアンじゃないわよ ! 」


「 じゃぁ ギロロ伍長 ? 」


「 あぁ もう、こんなのと話をしてても埒が明かないわ

  鍵が かかってるわけじゃないでしょうに ! 」


「 もう お家にカエルのがいいだよ~ん バハハ~イ 」


「 あなた この家のメイドでしょう

  仕事をサボってていいの ?

  結果 ボーナスが減らされたりして、

  勤務評価の悪さが やがて我が身に

  カエルのよ ! 」 と

  アリスは言いドアを開け家の中に入っていきました。


「 うわっ ! ゲゲ ゲロゲ~ロ ! 」


      続 く