偽作 不思議の国のアリス 4 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



その扉で待っていても

埒が明かないし 鍵も開かないので、

アリスは テーブルに戻りました。

別の鍵が 乗ってたりしないかな、と

都合の良い期待していたのです。  

あるいは、望遠鏡みたいに縮まるための 

ハウツー本がないかな、と思いました。


「 落ちてくる途中の本棚には

  もしかしたら あったかもね 」


気づくと今度は、小さな瓶が乗っていていました。


「 これって さっきは無かったわよねえ 

  変ねぇ ? 」

と アリス。

そして瓶の首には 紙の札がついていて、

そこに 『 飲んで 』 という言葉が

大きな字で 印刷されていました。

 
『 飲んで 』 しかし 疑い深いアリスは、

♪ 飲めと言われて素直に飲んだぁぁあ ~♪

と 言うような素直な子ではありません。

「 いいえ、まずちゃんと見てみようっと。

『 毒 』 と書いてないか確認するんだ ! 」

と アリス。

と言うのも、簡単な忠告を無視したばっかりに、

熱傷になったり、野獣の餌食にされた

哀れな末路の おバカな子供たちについての、

ほのぼのした うきうきするお話を

いくつも読んだことがあったからです。

他人が どんなヒドイ目にあっても 

「 人の不幸は 蜜の味 」 と

アリスは腹を抱えて大笑いできるので

ぜんぜん構いませんが、

自分が そんな目に合うのは さすがに勘弁です。

忠告というのは 例えば まっ赤に焼けた火かき棒を

長く握っていると熱いし重度の火傷をするよ、とか、

指をナイフで 深く切っちゃったら、

たぶん痛いし、血が出てくるよ、

もしかすると骨も観察できるかもね、とか

空腹の 肉食大型動物の前に 

間抜け面で のこのこと出て行ってしまうとかです、

当然 生きたまま 捕食されてしまいます、

巨大な顎と鋭い牙で引きちぎられたり、

噛み砕かれてしまいます、

とっても 痛そうですね。

そして 『 毒 』 と書いてある

瓶の中身をたくさん飲んだら、

お腹が痛くなり ビリリリと下痢したりとか 

ふぁがふぁがと息苦しくなる 呼吸器不全とか 
 
やばいことになる心不全とか

あちこちの内蔵がだめになる 多臓器不全とかになり

いずれ困ったことになるよ、

という事も記憶していたのでした。

でも、瓶には 『 毒 』 とは書いてありませんでした。


「 まぁ いっか 」


熟考せずアリスは 試しに味見をしました。

そして それがとっても美味しかったのです。

( 例えると、チェリータルトと、

カスタードと、パイナップルと、

クリスマの七面鳥ローストと、トフィーと、

熱いバターつきトーストのような味です )

過去に食べた美味しいものを全て混ぜたような味でした、

本当に 混ぜると美味しいのかどうかは さておき、

すぐに それを飲みほしてしまいました。


<< し ゅ る る る ~ >>


「 うぉおお ! なんじゃこりゃぁ ~ !

あたし、望遠鏡みたいに縮まっちゃってるぅぅう ~! 」


アリスは 身長25センチに 縮まりました。

これで あの小さな扉を通って綺麗な庭に行くのに
 
ジャストサイズの大きさになったと思い

アリスは ニタニタ笑いました。

でも、もう少し様子を見て 

もっと縮むかどうか確認しました。

これは ちょっと杞憂したところでした。


「 だって あたしがロウソクみたいに、

ぜんぶ消えちゃって

消滅するかもしれないでしょう、
 
そうなったら あたし、どうなっちゃうんだろ ? 」


アリスは、ロウソクを吹き消したあと、

ロウソクの炎が どんな様子かを想像してみようとしました。

というのも、消えた炎の行方を

今まで見た覚えがなかったからです。


「 消えろ、消えろ、つかのまの燭火、

人生は 歩いている影にすぎぬ。 『 マクベス 』

( by シェークスピア ) なんちゃって 」


それは 人が死んだ後の魂が 

どこへ行ってしまったのか、どこに消えたのか、

誰にも見えないのと同じ事のような気が

アリスには するのです。

しばらくして、それ以上 何も起きないのがわかり、

アリスは お庭に行こうとしました。

しかし 扉のところに来ると、

あの金色の鍵を持ってきていないのに気がついたのです。


「 あたし ダメじゃん 

鍵 持ってきてないじゃん ! 」


そして あわててテーブルに戻ってみると、

体長25センチに縮んでいるので 手が届きません。

ガラス越しに、下から見えています。

アリスはテーブルの脚を 何度も よじ登ろうとしましたが 、

つるつるとして登れません。


「 やっと 扉を通れる小さなサイズになったのに

 小さいサイズのために 肝心の鍵に手が届かないなんて 
   
あぁ 何たる不条理なのよぉぉお ~ ! 』


アリスは泣き出してしまいました。

しかし、


「 こら、アリス いつまでも泣いてちゃだめだぞ ! 」


アリスの自意識は、きびしく自分を叱責した。


「 いいわね、いますぐ泣きやみなさい ! 」

   
アリスが自分にする忠告は、概ね適切なのです

そして ときどき 厳しく叱責しすぎ、

自分の言葉が辛くて 涙が出てくるほどでした。

一度、自分相手にやっていた クロケー

( クロケー とは、芝生のコートで行われる

イギリス発祥の球技で

日本におけるゲートボールの原型である。

マレット( 木槌 )により木製、

またはプラスチック製の球を打ち、

6個のフープ( 門 )を通して、

最後に中央に立っているペグ( 杭 )

に当てる早さを競う )の試合で 

自分で自分に勝とうと インチキをしたので 

インチキをした自分を 自分の自意識が反省し 

自分自身を鉄拳制裁するため

殴りかかったくらいなのです。

右手で殴り掛かると 左手で防御するので

膠着状態が続いて めんどくさくなってやめたのでした。

なぜそんなことをするかと言うと

アリスは一人で二役をやるのが 好きだったからです。

と言うか それは 二重人格、 

解離性人格障害の兆候があったのかもしれません。


「 でも今、二役をやってみてもしょうがないわよね。

だって あたしは縮んでしまって

もうほとんど残ってなくて、

人間一人には 寸足らずなんだもの ~! 」

と アリスは考えました。


「 おゃぁ ~ ? 」


テーブルの下の小さなガラスの箱が

アリスの目にとまりました。

開けてみると、中には小さなケーキが入っていて、

干しぶどうで 『 食べて 』 と文字が書いてあります。


「 これは きっと 重要なアイテムなのよ、

こんなところに 必然性が無く 

余計な物が 偶然 置かれているはずがないもの、

合理的に考えれば きっとそうよ、

ふふっ 初歩的な推理だよ アリス君 !

これを食べて 大きくなれたら、鍵に手が届くでしょ、

小さくなるようなら、扉の下から もぐれるわ。

物事の展開と言うのは そういうものなのよ。

だから どっちにしても お庭には行けるはずよね。

あたしは どっちだっていいわ 食べちゃおうっと 」


 <  ぱ く り ! >


「 大きくなるの ? 小さくなるの ?

どっちかな ? どっちだと思う ? 」


そして頭の上に手をかざして、

自分が伸びているかを確かめようとしました。

しかし 変わらず同じ大きさのままだったので、

アリスは予想がはずれ がっくりしました。


「 あぁぁ ~ 失望 落胆 がっくし 、、、 」

  
アリスは 次の驚くべき展開を期待していたので、

あい変わらず 人生が平穏に

当たり前に続いて行くという事が、

なんだか バカバカしく思えたのです。


「 何だよ 期待はずれじゃん ! 

ここで 一波乱なくちゃ

全然 盛り上がらいだろうがぁぁ ~ !

半端な展開で続きで 誰が喜ぶんだよ ~! 」


アリスは 腹を立て 怒鳴りましたが、

「 まぁ いいや ケーキに罪はないしぃ 」 と

残りのペロリとケーキを たいらげてしまいました。

「 おっ ! それなりに おいちい ~♪ 」


        続 く