クリスマス・プレゼント | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

        angelocesare



  クリスマスも近い ある夜のこと、

  男は メモを書き終えると、

  薬瓶の液体を 飲もうとしました。


「 ツゥルルルル~  ツゥルルルル~ 、、、 」


「 今頃 誰だろう ? こんな時に、、、 」


「 ツゥルルルル~  ツゥルルルル~ 、、、 」

 
  電話は 鳴り止みませんでした、

  男は訝しげに 電話に出ました。


「 もし もし ? 」


「 ハ~イ パパ あたしよ 」


「 え っ ? 」


「 あっ 電話が遠いわね 

  なんだか 電波状態が悪いみたい 、、、 」


「 あぁ 、、  」


「 今年は 飛行機をやめて 自家用車で

  クリスマスに 間に合うように家に帰るわ

  サンクスギビングには 帰れなかったしね 」


「 あっ あ の 、、、 」


「 ねえ 大丈夫 ?

  なんだか 元気が無いみたい ?

  病気に かかってない ? 」


「 あ ぁ っ 、、 」


「 まだまだ 老けこむ歳じゃぁないでしょう ? 」


  男は 自分の年を考えました。

  しかし もう、若くもない 。


「 ちゃんと食べてるの ?

  しっかり食べなきゃダメよ 

  ママが亡くなってから

  デリバリーばかりじゃないの ? 」


「 ぁ 、、 あぁ 、、、 」
 

「 帰ったら あたしが クリスマスの料理を作るわ

  ママ直伝の味よ 楽しみでしょう ? 」


「 う 、、 う ん 、、、 」


「 元気を出してね 

  ママの分まで

  長生きしてもらわなくちゃぁ困るわ 

  あたし、自由にさせてもらっているし、

  パパには 感謝しているのよ 」


「 あぁ、、、、 」


「 まだ先の話だけど いつか結婚したら 

  一緒に バージンロードを歩いてもらうんだからね、

  孫の顔も 見てもらわなくちゃね 

  それまでは、なんとしても  

  生きていてもらわないとね うふふ ♪ 」


「 あ あぁ 、、 」


「 そうそう プレゼントも用意したわ

  楽しみにしていてね 」


「 いや この電話が 

  なによりの プレゼントだ 、、、 」


「 じゃぁ またね お休みなさい

  パパ 愛してるわ 」


「 ありがとう 運転気をつけて帰るんだよ

  おやすみ 、、、 」


  電話は 切れました 


  それは 









  間違い電話でした。


  男は 最愛の妻と娘を

  悲しい出来事で失ったのでした、

  仕事も無くして 生きる希望を失った男は 

  絶望しました。

  もう この世には 何の未練もない、と

  毒性の強い薬液を飲み、

  妻と娘のもとに いこうとしていたのです。


「 クリスマス プレゼント か 、、、、 」


  どこの 誰なのか、わからないけれど、

  星々の煌く 冬の夜空の下、どこかからの

  温かく 優しい 

 
『 励ましの 言葉 』


  男は、プレゼントとして 受け取ったのです。


  男は 遺書がわりのメモを 破り捨てました。


「 もう 少し 、、、 

  こちらに いる事にするよ 、、、 」



  男は 窓辺に立ち、

  カーテンを開き 夜景を見ました。



  今まで まるで 

  色を 失くしたようにしか見えなかった

  クリスマスの イルミネーションが、

  遠くに 美しく 輝いて 見えました。


          終



                            無料写真素材