不定期百物語 『 白い木箱 』 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

 夫の 戦死の報が 届いた

 遠い国に 赴いていた

 この国は長く 

 泥沼のような戦に 

 のめり込んでいた





 白い木箱が 届けられた

 ひどく 軽い

 何も入ってはいない

 いや 一枚の紙が入っていた
 
 名前 階級 所属部隊 死亡推定日時 地区

 夫の霊は 帝都の大きな神社に

 祀られたそうだ

 しかし それは 嘘だ









 なぜなら

 夫は それより前 戦場から戻り

 透き通った姿で 

 仏間に 立ち尽くしているからだ

 物言わぬ その顔は

 深い悲しみで 

 凍りついている