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次の朝 小麦を刈入れに来た農夫が、
倒れていた奥方を 見つけました。
「 あぁ ! どうしたことだ !
人が 倒れているではないですかぁぁああ ~ 」
農夫は その顔を見て驚きました。
「 なんという事でしょう !!
髪はボサボサ、化粧気もなく
薄ら汚れて やつれているが、
この人は 見間違うはずも無い
あの 奥方様ではないか ! 」
農夫は かって世界一美しいものを探し
小麦を持ち帰ったため 奥方の逆鱗に触れ、
あっさりと首にされた 元船長だったのです。
「 貿易船団が 嵐に沈んだという話を聞いていたが
まさか こんな姿で こんな再会になるとは、
おいたわしや ぐす ぐす ぐすん 」
元船長は 首にされたにも関わらず
奥方に 深く同情しました。
彼は、小麦畑の美しさに魅せられ、
この地に畑を手に入れ、持ち帰った小麦を植えて
今は小麦畑を 経営しているのでした。
「 ここで会ったのも 偶然では無いのだろう
奥方様も 何か感じる入るものがあったに違いない
だから この麦畑まで辿り着き 倒れたのだろう。
きっと 神様の お導きがあったに違いない
わたくしめの手で 手厚く葬ってあげよう 」
元船長によって 奥方の葬儀が行われました。
「 灰は灰に 塵は塵に 、、、、 」
金融業者たちが 奥方の足取りを辿り
昔雇用関係のあった 元船長の所に押しかけました。
「 なんだ ! 奴は 留守じゃぁないか 」
「 隣の家で どこに行ったか聞いてこい ! 」
もと船長が 今 教会で葬儀をしていると聞きつけ、
金融業者たちは 教会に向かいました。
彼らが 教会の墓地に駆けつけた時、
すでに 小高い丘の教会での葬儀が執り行われ
棺が 墓地に埋められた後でした。
元船長は 墓の前に佇んでいました。
「 おい ! あの おデブの奥方はどうした ~! 」
「 行き倒れになって
もう 亡くなられましたよぉ ~ 」
元船長が 言いました。
「 なんだと ~! 」
「 たった今 埋葬がすんだところですよぉ~ 」
「 お前は 誰だ ? 」
「 私の 小麦畑に倒れていたので
そのまま置くわけにも行かず、仕方なく
墓地に埋葬することにしたんですょぅ ~
地縛霊にでもなって 化けてでられたら
怖いですからねぇ ~ 」
「 くっそ ~!
借金残したまま あの世に
遁走( とん そう )したか ~! 」
「 豚みたいに おでぶのくせに 」
「 逃げ足だけは 早かったからな 」
「 究極の とん ずら だな 」
「 迷惑かけたままで とん でもねぇ女だ 」
「 ちきしょうめ ! とん だ 無駄足だったぜ 」
元船長に寄り添う 喪服姿のほっそりした女性が
彼らに声をかけました。
「 どうぞ 彼女を哀れみ お祈りを捧げて下さい 」
「 ふざけんな ! 」
「 そんな義理は ない ! 」
「 俺達は 上の命令で動いてるだけだ 」
「 取りそこねたら オイラ どれだけ どやされることか 」
「 債権回収できなきゃ 給料も出ないのにぃ 」
「 あぁもう 死んだものはしょうがない
引き上げるぞ ! 」
「 地獄までは 追いかけられない てか 」
「 ぶ ~! ぶ ~! 」
金融業者は ぶうぶうと
ぶぅたれて帰って行きました。
棺には 夕日に照らされて 黄金色に輝いていた、
世界一美しい 小麦の穂が入れられました。
小麦の穂は 墓前にも供えられました。
小高い教会の墓からは
美しく輝く小麦畑が 一望のもと見渡せました、
広い畑に美しい小麦が 静かに揺れていました。
続 く