・
数日後、奥方はパーティーを開きました。
むしゃくしゃした気分を 晴らそうと思ったのです。
街の上流階級の人達が 集まってきました。
「 今日は無礼講よ
皆さん じゃんじゃん飲んで
じゃんじゃん食べてって
お~ほっほほほ ♪ 」
「 何だか やけになってるみたい 怖いわ 」
「 怒り狂って おかしくなっているんじゃないの ? 」
「 そうよねぇ 大金をドブに棄てたも同じだわねぇ 」
「 愚かよねぇ ていよく 船長の物見遊山に
お金を 使われただけなんですもの 」
「 お土産に 小麦だなんて お笑いぐさだわ
あははっははあはぁは ♪ 」
「 はじめから この街で買えば いいじゃないねぇ 」
「 シ~ッ ! 聞こえるわよ 」
招待客たちは 腫れ物をさわるように奥方に接しました。
一年をかけた 世界一美しく尊い物を見つける航海は
失望に終わり、さぞや後悔していると思われたからです。
「 今夜は オールナイトで 徹底的に楽しむわよ ~
ありったけの酒 料理持ってこい ~!
お~ほっほほほほ ♪ 」
高価なシャンペン、ワインや
豪華な料理がテーブルに並べられていました。
「 さぁ 目一杯 食うわ 飲むわ ~!
バクバクバクバク ! キュゴキュゴキュ ! 」
奥方は飲んだり食べたり
はねたり踊ったりと、大騒ぎをはじめました。
「 やけ食いしてるわぁ 」
「 いやぁねぇ 下品な踊りだこと 」
「 豚が 暴れてるみたい 」
「 これだから 成り上がりは 、、、 」
食事係が メインティシュの
大きな料理を乗せた皿を 運んできました。
皿には、大きな魚の姿揚が乗せてあります。
「 まぁ 立派なお魚だこと 見事だわ ~♪
ゴ~ジャスで 私に ぴったり ♪ 」
魚が大好きな奥方が、さっそく魚の腹を切りました。
「 私に食べられる栄誉を 感謝しなさい えい ! 」
<< ザ ク ッ ! >>
<< カ チ ン ! >> 、
ナイフに 何か硬い物が 当たりました。
「 なんざんしょう ? 」
奥方は、魚の腹に入っていた物を取り出して
驚きました。
「 あぁぁあ ~! 」
その声に皆が魚を乗せた皿の周りに集まりました、
切り裂かれた魚の腹から出てきた物を見て驚きました。
なんと 魚の腹から出てきたのは、
奥方が海の中に投げ込んだ、あの指輪だったのです。
騒ぎに気づき 慌てて駆けつけた料理長が
驚いて言いました。
「 これは 神様が海に命じて、指輪を奥方様に
お返したのではないでしょうか ? 」
「 ふん、バカバカしい !
そんなの ただの偶然よ 」
「 そうでしょうか ?
船着場では 大勢が海に飛び込んで
指輪を探したけれど見つからなかったそうですよ 」
「 港の周りで釣り上げた魚でしょう、
海に落ちた指輪を 餌と間違えて食べたのよ、
最初に魚が飲み込んだから
いくら 探しても見つからなかったのよ。 」
「 ふ ~ む 」
料理長は 頭をかしげました。
「 大きな魚だからこそ
大きな宝石のついた指輪を 飲み込めるのよ。
不思議でも な~んでもないわ、
物事は こうやって合理的に考えるものなのよ。
ビジネスの基本よ、お~ほっほほほほ ♪ 」
「 でも何か 神様の ご意思があるのでは ? 」
「 あんたは 信心深いのねぇ、
いちいち そんな事 考えてたら
行き馬の目を抜くような世の中を
渡っちゃぁいけないわよ !
『 祈るより 稼げ 』 !
スペインのことわざよ。
お~ほっほほほほほ ♪ 」
奥方は その指輪を ゴミ箱に投げ棄てました。
「 こんな指輪 験が悪いから いらな~いっと 」
眼を光らせた使用人が すかさずゴミ箱を交換しました、
しかし指輪は 悪徳宝石業者に騙されて売りつけられた
安物のイミテーションなのでした、
奥方は 本物と偽物の違いが分からなかったのです。
それを後で知って 腹を立てていたので
海に投げ捨てても 平気だったのです。
馬鹿騒ぎの パーティーは 朝まで続きました。
「 お~ほっほほほほぃ ♪、
もっと酒もってこ~い、ウィ~! ゲェップ ! 」
続 く