王妃は 王室御用達の細工職人に
ガリバ~の 寝室になるような箱を作らせました。
それには 窓とドアと二つの小部屋の
木造のドールハウスのようなものでした。
「 あぁ エゲレスの オイラの部屋を思い出すなぁ 」
この寝室の天井の板は 開けることができます。
おもちゃ業者が作ったベッドと椅子とテーブル
ポータブルトイレを 天井から入れました。
部屋は壁も床も天井もキルトが張りつめてありました。
「 わぁぁ~い ふっかふかの部屋だよ ~ ♪
うほほ~い ぼよよ~ん ♪ 」
このガリバ~の住まいを移動のため持ち歩くとき
中にいるガリバ~が 壁に激突して
< ぷちっ!> と 潰れてしまわないように
配慮してあるのでした。
しかし どこか拘束室のようでもありました。
「 王妃様 お願いがあるんだけど 」
「 なんざんしょ ? 」
「 ドアに鍵を つけてほしいんだけど 」
「 なぜ ? 」
「 万が一 ネズミが入って来ないようにさ 」
「 あら ネズミは
ガリバ~の お仲間じゃないのかしらぁ ?
お~っほほほほほ ♪ 」
「 あいつらは なんでもかじるから
オイラ 気づいたら 骨だけになってるかも 」
「 あら それは ガリバ~も不便になるわね
食事もできなくなるわねぇ
わかったわ 鍛冶屋を呼びましょう 」
鍛冶屋は 小さな鍵を作りました。
「 これで 一安心だ うふうふ ♪ 」
王妃は 薄いシルク地で
ガリバ~の服 下着一式を作らせました。
「 ガリバ~よ 服が仕上がりましたよ 」
「 うほほ~い あたらしい服だ
ず~っと 着たきりすずめだったからね 」
「 着たきりドブネズミじゃないのぉ ?
お~ほっほほほほほ ♪ 」
仕立は この国のニューモードを織り込みつつ、
フォーマルで 王室に相応しい重々しいものでした。
しかし 服はエゲレスの玄関マットぐらいの厚さで、
ガリバ~には そうとう着心地の悪い服でした。
「 ぐわぁ !
おパンツも まるでテントの生地みたいだ ~!
やっぱり おまたが ゴワゴワする ~ 」
「 オーダーメイドなのよ 慣れるまで我慢しなさい 」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
王妃は ガリバ~を すっかり気に入り、
ガリバ~と 食事をするようになりました。
ガリバ~は 王妃の食卓の上に
テーブルと椅子を 置いてもらうのです。
ガリバ~の食事のために銀の皿が一揃い作られました、
ドールハウスの 食器類のようなものでした。
王妃が肉を切って、ガリバ~の皿に入れると、
ガリバ~は自分で さらに、
それを小さく切って食べます。
おままごとのような ガリバ~の食べ方が、
王妃には とても面白かったのです。
「 硬い肉だなぁ 靴底を かじってるみたいだ
王妃様 料理長に言って パイナップルにでもつけて
酵素で 柔らかくしてもらってくださいよ ~ 」
「 こんなに柔らかい 口に入れたら溶けそうな
最高級のブランドお肉なのにぃ
オーダーメイドの シルクの服や下着に身を包み
最高級の食事にさえ 文句を言うなんて
ホントに お前は 贅沢で 面白いわねぇ
ガリバ~の存在は人へのカリカチュアみたいだわ 」
「 えへ てれるなぁ オイラ ほめられちゃった 」
しかし それは褒め言葉かどうかは わかりません。
ガリバ~には 食事が怖く感じられる事もありました。
王妃は この国では少食の方でしたが
ガリバ~の故郷の エゲレス人なら
10人が満腹するほどの量を 一口でペロリなのです。
実際これには トラやライオンなどの肉食動物どころか
古代の 二足歩行の 巨大食肉爬虫類生物を
彷彿させる感じがありました。
「 うわぁ 人間も巨大だと 側で見上げると
口を開けて食事をするだけで なんて恐ろしいんだ
小人の国で 化け物扱いされたのも無理がないんだなぁ 」
王妃は グラスで大樽一つ分以上の飲物を
一息に飲み干します。
<< ごぼぉごぼぼぼ ゴキュゴキュ ! >>
王妃のナイフは ガリバ~よりも巨大でした。
スプーンもフォークも 巨大なものです。
巨大なナイフが 巨大な肉を ザクザク切り裂き、
巨大な肉の破片が巨大なフォークで ぶすりと刺され
巨大な口に運ばれ 巨大な歯に引きちぎられるのです。
<< ぐしゃ ぐしゃ ぐしゃ ! >>
巨大な ナイフやフォークがズラリと並んだ光景は、
さながら武器庫のようでした。
こんな物騒な物を ビンブン振り回されたら
小人の国どころか 大エゲレス帝国の軍隊も
ひとたまりもないと思いました。
「 この国は 今は戦争を否定している
彼らが もし 世界に覇を唱え
戦いを仕掛けてきたら 襲われた国は
跡形もなく消滅してしまうに違いない
強大な力は 平和を望む巨人たちによって
今のところは 善用されているのだなぁ 」
ガリバ~は ぼんやりと そんな事を思いながら
王妃の 口元を見ていました。
「 なに 見てんのよ !
しっかり食べないと 大きくならないわよ
お~っほほほほ ♪ 」
「 もう オイラ 大人だから
横に 大きくなるだけなんですけど 、、、 」
王妃は 巨大なアゴで 巨大肉食爬虫類のように
ゴリゴリ ガリガリと 肉を食んでいました。
続 く