最終話 偽作ラプンツェル 8 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

「 勝手に家を出て ごめんなさい おかあさん、

  私 今まで 下働きをさせられていたの、

  もう少ししたら 男相手に

  商売させると言われたわ 」


「 間に合って よかった、

  いいんだ いいんだ、騙す奴が悪いんだ。
 
  イケメン王子とやらは ちゃんと罰しておいた、

  目潰しでヒイヒイ だらしなく泣き声をあげていたよ、

  今は目が見えないが、まぁ いずれ元通りにはなる。

  ついでに 自慢の顔はボコボコに

  鼻はひん曲げて ブサイクにしておいた、

  あの外道には 少しは薬になっただろう。

  あたしも もっと お前に 

  色々世間のことを教えるべきだった 」


「 あの人は 私が拐われてきたと言って、

  母娘としたら 歳が離れすぎているとも言ったわ、

  それは 本当なの ? 」


「 あぁ ラプンツェルが大人になったら

  教えようと思っていた 」


「 私の 本当のお母さんは 別にいるの ? 」


「 あぁ そうだ、だが 」


「 だ が 、、、って ? 」


「 ラプンツェルの本当の父も母も

  すでに 亡くなった 」


「 ぇぇえ ! 」


「 昔は夫婦で 近所でレタス畑を作っていたんだ。

  ある時、農作物が天候不順のため不作で

  父親が出稼ぎに行った。

  そして、その頃、流行し始めた

  黒死病 ( ペスト ) に罹患した。


  



  そのため 母親は懇意にしていた 

  近所のあたしに 幼かったお前を預け

  父親の出稼ぎ先に駆けつけたのだ、

  しかし、父親はすでに亡くなり、
 
  その地で母親も黒死病になってしまった。

  ある日、他に身寄りの無い お前のことを

  頼むという手紙が届いた、

  母親は病で死ぬ前に 必死で書いたのだろう、

  字が乱れていた。

  当時は黒死病が 世の中に蔓延して、

  亡くなる人が たくさんいたのさ、

  だから あたしは お前を引き取った 」


「 あぁぁ そんな事があったとは、

  お父さん、お母さん 、、、 」


「 黒死病はネズミや

  ネズミの血を吸ったノミが媒介しているようだ、

  だから、街のネズミやノミを徹底的に駆除させたんだ。

  あたしは ネズミも登らない高さのツリーハウスで

  お前を 大事に育ててきたのさ、

  暴漢、泥棒よけのためにね、

  そして 何よりも恐ろしいのは 

  神秘的に見える 薬草を扱う者などへの 

  異端審問、魔女狩りだったのさ、

  魔女狩りをしようとするヤカラも大勢いた
 」







「 あぁ なんということ 、、、、

  私は 温情に背くことをしてしまった 」


「 いいさ いいさ、

  あたしは 少し過保護だったんたようだ。

  これから 必要なことは学ばせよう、

  あたしが 生きているうちに薬草の栽培や調合、

  生きるために必要なことを 教えよう、

  お前の両親のレタス畑は 今は薬草畑になっている、

  あたしの使う薬草を 栽培をしているんだ 」 

  
「 私は愚かだったわ、

  見も知らぬ人の言うことを真に受けて

  王子さまだと思ってしまった 」


「 あいつは 人をたぶらかすのが商売の男、

  人さらい王子だからね 」


「 幸せは 誰かが持って来るものでは無いのね 」


「 そうだ、世の中は おとぎ話のように甘くはない、

  悪い奴は いくらでも掃いて捨てるほどいる、

  あの 人さらい王子のようにね。

  辛いことは いくらでも襲い掛かってくる、

  悲しみも 甘受しなければならない。

  でも負けてはいけない、生き抜くんだ。

  他人任せの 生き方ではでなく、

  自分自身で 自分自身の人生を

  切り開いていかなくてはならないのさ。 

  それから、いい男は自分で探すんだよ、

  本物の王子様が 白馬に乗って登場、

  な~んて事、現実には ありやしないからね 」

   
「 わかりました 」 


「 さぁ 森の我が家に帰ろう、

  手洗い、うがいをして

  お前の大好きな レタス・サラダを作ろう、

  それから たくさん学ぶことがあるからね 」


「 はい お か あ さ ん ♪ 」



       終わり