、
変態従者が 手鏡をかざしながら 近づいてきました
人魚姫は 恐怖で 悲鳴を上げました
<<< キャー ! >>>
< バリーン ! >
鏡が 共振して 粉々に砕け散りました
「 おおぅ! これは どうしたことだ ?
わたくしめの 大切な手鏡がぁぁぁあああ ~~! 」
人魚姫は 人間の可聴領域の 声を失いましたが
人の耳に聞こえない 超高音域の
音波を 発することができるのです
イルカが捕食のため 超音波で
タコなどを 気絶させることができるように
衝撃波攻撃もでき
反響を耳で捉え ソナーのようにも使え
水中なら長距離でも
人魚族同士で 通信することができるのです
美しい声を持っていた人魚姫は
特に超高音波を出すことができました
手を縛っていた荒縄に向けて 超音波を発しました
『 キューサー 』 と呼ばれる
『 超音波メス 』 と同じ原理で
使い方しだいでは 非常に強力な威力があります
しかし 人魚の世界では 他者を傷つけることを
固く戒められていた 危険な能力でした
<< キ ュ ー ン ! >>
< ぶ ち っ ん ! >
荒縄は簡単に切れました 人魚姫は 足の縄も切りました
「 こっ この 化け物め ~!
お前は ギャオス ( 注 ) か ~? 」
捨てぜりふを残して
変態従者は慌てて スタコラ逃げ出しました
卑怯な変態の従者は 小心者で臆病で
腕っ節は からっきしなのでした
” 王子様はどこ ? 王子様を探さなければ ”
人魚姫は 変態従者の後を 追います
「 であえ ~! 近衛兵 ~! 化物だ ~! 」
近衛兵が 集まります
「 いかがされましたか ? 」
お城では 表向き 元経済学教授で
財政顧問の肩書きの変態従者に 近衛兵が尋ねます
「 化物女が来る 殺してしまえ ~! 」
近衛兵たちは いぶかしがりながらも
武器を手に 待ち構えます
人魚姫が 変態従者を追いかけてきました
しかし 身体の不調で ゆっくりとしか歩けません
近衛兵たちは 人魚姫の姿を見て拍子抜けしました
追ってきたのは メイド服の 清楚で可憐な美少女です
「 またかよ ! 懲りない男だ
あんな変態に 経済顧問が務まるのかぁ ? 」
「 プリンセス様が 何故か 重用しているからなぁ 」
「 変態同士で ウマが合うのだろうよ 」
「 経済顧問なら 経済を活性化しないとなぁ 」
「 あいつは 安易な税金引き上げの意見ばかりだ 」
「 消費税が 上がるのは困るなぁ 」
「 そうだなぁ 低賃金だから逆進性がきついよなぁ 」
「 あいつに払う金があるなら
オイラたちの賃金上げて欲しいよなぁ 」
「 戦費だって じゃぶじゃぶ使われても困るよなぁ 」
「 国民の 意思や生活を無視して
国際紛争ばかりじゃ 安心して寝られやしない 」
「 プリンセスの 浪費癖もなんとかしないと国が破産するぞ 」
「 国中に ガラクタを飾っているし 」
「 どこかで うまい汁を吸っている奴らがいるんだろうなぁ 」
「 軍事産業やインチキ美術商や広告代理店とかなぁ 」
「 今年は ボーナスでるかなぁ ? 」
「 望み薄だなぁ 」
「 ブラックな職場だなぁ とほほ 」
近衛兵たちは おそらく変態従者に
コスチュームプレイで いたずらされて
怒っている若い娘だろうと思い
苦笑 雑談しながら見逃してしまいました
前にも ちょくちょく あった事なのでした
「 プリンセス様 ~!
おっ おっ お助けを ~~~! 」
変態従者は プリンセスの部屋に逃げ込みました
「 何事です ? 騒がしいですよ !
私たち これから いいところなのにぃぃぃ ~
うっふ~ん ♪ 」
プリンセスのベッドの上には
猿ぐつわをされ 手足を四方に縛り付けられた
王子が必死に もがいていました
続 く
( 注 )
ギャオス は
映画 「 ガメラ 」 シリーズに登場する架空の怪獣
口からは、何でも切断する300万サイクルの
「 超音波メス 」 を発射する
健康のため 超音波攻撃は 控えめに。