偽作 シンデレラ 15 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

,



「 では この お嬢様を わたくしめが 

  王子様のもとに お連れいたします 」

  お城の人が言いました


「 大事な お后候補のお嬢さんだ

  粗相のないように よろしく頼むぜ 」

  男性捜査官が言いました


「 頑張ってね これからがスタート

  幸せは空から降ってくるものじゃないわ 自分で獲得するものよ 」

  女性捜査官が言いました


「 はい 肝に命じておきます 御恩は忘れません 」

  娘は 深々と頭を下げました

  娘は使いの者と共に お城に向かいました


  娘は お城の侍女たちにバスルームで泡まみれにされ  

  頭の先から足の先まで 徹底的に洗われました
  

「 作業着姿のままでは 王子様に

  拝謁するわけにはまいりませんので、

  御召し物を お着替えください 」


  娘は 前夜の舞踏会の時のように

  新しい衣服に着替え 髪をセットされました

  その姿には 思わず侍女たちも見とれ

  ため息をつくほどでした







「 父上 母上 !

  この お嬢さんが仮面舞踏会の あの女性です 」


「 ぉぉおおお ~ そうか そうか うん うん   

  なんと綺麗で清楚で 男心をそそる娘じゃ 」


「 一目惚れしてしまいました 」


「 うひょひょ 王子にはもったいないのう 

  わしの愛人じゃだめかのう ? 」


「 あなた ! 何を言っているのですかぁあ !

  後で ボコボコのサンドバックにするわ 」


「 ひぇ~ ! やめて~ 暴力反対 ~ 」


「 ところで お嬢さんの お名前はなんと言うのですか ? 」

  と 王妃様


  娘は 満面の笑みで答えました




















「 『  シ ン シ ア  』 と 申します 」















「 ほう 『 シンシア 』 か 良い名前じゃ 」

  と 王様


「 たしか その名は月の女神 『 アルテミス 』 の別名

『 キュンティア 』 から来ているのでしょうね 」

  と 王妃様


「 もともとは 月の女神様の名前とは

  月の夜の 舞踏会で巡りあったのだから

  ほんとうに ぴったりの名前ですね 」

  と王子 


  娘 シンシアは 王様と王妃様にも気に入られ 

  王子様と 華燭の典を挙げしました

  城下を馬車による 豪華な婚姻の儀のパレードが行われました

  シンシアの たっての希望で かぼちゃ型の馬車が使われました



$藤花のブログ 詩と




  沿道には 国旗の旗を振る人々が溢れかえりました

  紙吹雪や ライスシャワーが舞いました


「 なんて お綺麗なのでしょうねぇ 」

「 でも プリンセス・シンシアは民間出身なのね 」

「 綺麗なだけで やっていけるかしら 」

「 苦労するかもね 」

「 お城の中で イジメにあわなきゃいいけど 」

「 ある事 ない事 噂されそうね 」

「 まぁ 庶民は そんなゴシップこそ

  と~っても 楽しみなんだけどね うひひひ ♪ 」


  高い身分は必ずしも完璧な幸せとは限りません


  民間出身のシンシアは やがて宮廷内の関係者の 

  陰湿で ネチネチしたイジメにあったり

  イエロージャーナリズムの餌食になり

  継母たちの悪行や 父親の死をゴシップ雑誌に

  面白おかしく色々書かれたり 精神的に追い詰められ 

  適応障害や 帯状疱疹にもなったりもしたのです

  しばらくは塞ぎ 苦しい日々を過ごしました


  王子 王様 お妃様はシンシアに優しく接しました

  シンシアは あの継母たちとの生活に比べたら

  よほどましと考え直しました

  精神的 肉体的にタフに成長したシンシアは

  少しトロい 王子様を支えながら 

  財政問題の改善 国家経営にも参画し 

  貧困問題や 国際状況にも腐心しながら

  幾つものトラブルをかいくぐり頑張りました



「 王子に綺麗な嫁の シンシアが来てからというもの

  王室に花が咲いたようで ワシもウレシくてなぁ ♪ 

  晩酌も進むというものじゃぁ ゴキュゴキュ !

  ワインを もう一杯 イヒヒヒ ♪ 」

「 あなた ~! 鼻の下が だらしなく伸びているわよ !

  義理の娘なんですよ !

  シンシアに 変な気を起こしたら命は無いですからね ! 」

「 ぅ~ん じゃぁワシ ボジョレー・ヌーボーみたいな 

  とれたて新鮮でフル~ティな ピチピチのナイスバディの 

  若いおねぇちゃんが 一人でいいから ほしいなぁ~ ♪ 」

「 何ぃいい ~! その口が その口が言うのかぁあ ~! 」

「 いたい いたい 唇がちぎれるぅうう ~ 」

「 あなたを 切り刻んで ワインのオードブルにするわ ! 」

「 母上 ~ 父上は 脂身ばかりで不味そうですよ

  よ~く炙って 脂を落とさないと 

  スパイスを振りかけて しっかり火を通しましょう 

  生肉は食中毒の恐れがあって 危ないですからね 」

  と 王子 

「 私は贅沢を言いません 脂身が多くてもかまいませんわ  」

  でも 女性とワインは年月を経て 

  熟成されていくのが良いのですよね うふふふっ ♪ 」

  シンシアは そう言い 

  なんて冗談の好きな 楽しい家族なのだろうと思い

  幸せそうに 微笑みました

  でも シンシア以外の三人は高貴な生まれなので

  庶民のように言いたいことを我慢することも必要ないため 

  表裏のない性格で 屈託なく本音を言い合っただけなのでした


  シンシアには その後の苦労も沢山あったりするのですが 

  それは また別のお話なのです
  
  シンシアは末永く そこそこ幸せに暮らしましたとさ


  めでたし めでたし




      続 く