偽作 白雪姫 13 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




  話は 毒りんごを受け取った時まで さかのぼります





「 ただいまぁ 」「 ただいま ~♪ 」

「 戻ったよ~ 」 「 疲れたなぁ ~ 」

「 汗びっしょ シャワー あびたいなぁ 」

「 お腹減ったよぉ ~ 」「 夕飯は なあに ? 」


「 おかえりなさ~い 」


  7人の男たちは 採掘作業から帰ってきました



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  テーブルには 真っ赤なりんごが一つ

  置かれていました

  
「 おやぁ ? この りんごは どうしたの ? 」

「 りんご売りの お婆さんが来ました 

  一つだけ 味見用に いただきました 」

「 ふむ ふむ 」

「 一人で食べようと思ったのですが 

  口にする直前 初めて ここに来た時 

  食事を 一人で平らげてしまったことがありました

  それを思い出して 心苦しくなり

  やはり みんなで分けて食べようかと 考えなおしたのです 」

「 ううっ なんていい子なんだ 」

「 そうだなぁ その気持ちが うれしいな 」

「 みんなで食べたほうが 美味しいもの 」

「 仲良く分けて食べようか 」

「 食べよう 食べよう 」

「 ん ! ちょっと待て ! 」

「 なんだ ? 」

「 それは 少し変だ 」

「 えっ ? 」

「 どういうこと ? 」

「 こんな辺境な地に 林檎売りが来るわけがないぞ 」

「 そう言えば そうだ 」

「 この辺は 人家もない もちろん商店もない 」

「 物売りなんて来た試しがない 」

「 だから おれ達の食材調達は 

  すべて隣国の取引先に頼んで 仕入れているよなぁ 」

「 俺たちの仕事に課税しようと来た 政府の回し者か

  金鉱のありかを嗅ぎつけて 

  横取りしようと動向を探りに来た

  どこかの ならず者かもしれないぞ 」

「 そうか りんごも なんだか 怪しいぞ 」

「 りんごを 調べてみよう 」

「 それが いい 」


  男たちは 林檎を 薄く切り

  小魚の泳ぐ 金魚鉢に入れました

  小魚は しばらくすると もがき
  
  やがて ぷかぷか浮かび上がり 動かなくなりました


「 案の定だ 強い毒が入っていた 」

「 やっぱりな 」

「 こんなモノ 口にしたら オダブツだぜ 」

「 危ないところだったな 」

「 ヤバいよ ヤバイよ 」

「 小魚には 悪いことをしたなぁ 」

「 勘弁しておくれ 」

「 アーメン 」



「 りんご売り 、、、

  もしかして 私を狙ってきた

  暗殺者かもしれません 」


  白雪姫は 言いました


「 なんだって ? 」

「 なんて しつっこい 継母なんだ 」

「 実は 、、、 」

  白雪姫は 身分を隠していたことを話しました

「 えぇぇ ~! 」

「 なっ なんと ! 」

「 そうか それで この頃 不審な者が うろついていたのか 」

「 俺たちを探りに来たのではなく 

  この娘さん いや姫を 探しに来ていたのか 」

「 不審者は 王妃の 手下だったんだな 」

「 紐やら 櫛やら持っていたぞ 暗殺の道具だったようだ 」

「 紐で締めて殺そうとしたのか 櫛に毒でも塗ってあったのかも 」

「 その者は どうしたのですか ? 」

  白雪姫は 尋ねました

「 ご心配なく 手を紐で縛って 頭に櫛をさして

  ボコボコにして追い返したよ

  二度と この辺に近づくなと脅してね 」

「 おそらく そいつが ここの情報を流したんだろう 」

「 それで 卑怯な 刺客を送り込んだと 」

「 では ここは見張られているんだな 」

「 姫が生きている限り 刺客は また来るだろう 」

「 かならず撃退できるとも限らないぞ 」

「 どうしたらいいのかなぁ ? 」

「 そうさなぁ 」

「 う ~ ん 」


「 そうだ いいことを思いついた ! 」

「 なんだ どうするんだ ? 」

「 敵の 策略に 乗るのさ 」

「 ええぇ ? 」

「 それって どうするんだい ? 」

「 白雪姫が 毒林檎を 食べたことにする 」

「 ほうほう 」

「 死んだと偽って 葬式をする 」

「 それで ? 」

「 姫を 棺に入れる 」

「 でも 生きている姫を 棺ごと埋めるわけにも行くまい ? 」

「 きっと 掘り起こして 棺を開けて

  遺体の確認ぐらい 奴らもするだろうし 」

「 そこでだ 」

「 うん うん 」

「 姫の入った棺を 隣国に脱出させる 」

「 誰が 運ぶんだ ? 」

「 取引業者に 偽装工作をさせ 運ばせよう

  次の刺客が 送り込まれる前にな 」

「 そうだなぁ 国外ならば とりあえず安全だろうなぁ 」

「 取引業者に しばらく 姫を匿まってもらおう 」

「 なるほど 上手くいけば 良いが 」

「 まぁ やるだけやってみよう 」

「 それじゃぁ 姫も一緒に 打ち合わせをしてと 」

「 ひそひそひそ 」

「 はい わかりました そのように 」

  白雪姫は 計画を理解しました


「 では 私からも 提案を 、、、」  

「 ふむ ふむ おぉ それ いいんじゃない 」

「 上手くいけば 見物だねぇ 」

「 よし 業者との通信用の 伝書鳩を飛ばせ 」


< ポッポ ~! バサバサバサ >


「 では 俺達は 姫を入れる棺を作るとしよう 」

< ギコギコ ! ギコギコギコ ! >

< トンテンカン ! トンテンカン ! >







「 と まぁ 後は言うまでもありませんが 

  葬式を行ない 馬車を用意させ 

  使いの者に 私の書いたセリフどおりに

  偶然 通りかかった 『 隣国の 王子様 』 

  と いう設定の小芝居をしてもらいました

  素人芝居で ヒヤヒヤしましたが 」


「 なんだと 棺を持ち帰った王子は 偽物だったのかぁぁあ ? 」


「 そうです でも ちょっと考えれば分かりそうですが 

  そもそも 普通 隣国の王子様が 我が国に 

  狩猟で入国することなど あるわけがありませんよね 」


「 他国の王室の 権威まで使うなんて ずるいぞ ! 」


「 ふふっ それから 見ず知らずの

  他人の遺体が入った棺を 王子様が自国に持ち帰るのは

  すご~く不自然ですよねぇ ありえませんよねぇ 」


「 そりゃそうですなぁ  

  王妃様ぁ どうやら王子は わたくしめが想像していた

  死体愛好癖の 変態じゃなかったようですなぁ 」

 
「 王子様は 変態じゃありませんよ

  とてもジェントルな方で あらせられるのです 」


「 へん ! 何が ジェントル じゃ ! 

  男なんか一皮むけば同じこった み~んな変態なのさ ! 」


「 うふふ おゃ そうなんでですか お義母さま

  まだ私は小娘なもので 今後 充分気をつけるようにします

  でも 今まで 色々な矛盾に気づかなかった人って

  なぁ~んて おバカさんなのでしょうね うふふ ♪ 」


「 きぃぃぃいい ~! 」


「 素人さんの 王子様役でしたが

  まんまと こちらの思惑どおりに 

  偽情報が 伝えられたというわけです 」

  
「 うぅ 王子様が わたくしめと同じ

  変態仲間なら 上手く取り入れるかと

  考えていたのですが 残念ですぅぅ ~ 」


「 この はらわたの どす黒い 白雪め ! 

  結局 謎解きを引っ張ってみても

  毒りんご 食べなかっただけだってぇぇえ ~!

  なんて がっかりで 子供だましの 

  安易な ひねりのない つまらないオチ ! 」


「 まぁ リアルなんていうのは そんなもので

  別に面白いわけじゃないと思いますよ 」


「 つまらん ! 

  お前の話は つまらん ! 

  全然 意外性がない !

  レスラーたちが 鉱物の鑑定のため 

  試薬を使っていて 解毒剤があったとか

  お前が 特異体質で 毒に対する耐性が強いとか

  仮死状態だったけど 何らかの理由で生き返ったとか 

  実は双子だったとか 少しは頭を ひねろよ ! 」


「 注文が多いですね 悪質なクレーマーですか まったく 」


「 浅はかな計略など しくさって !

  なんて ズルくて 卑劣で 汚い真似をぉぉおおお ~ ! 」


「 ズルくて 卑劣で 汚いのは どちらですか ? 

  おそらく 私が死んだという情報に

  小躍りしていたのでしょう お生憎さま 

  簡単に こんな計略に引っかかるとは うふふ ♪ 」  

  
「 そうさ せっかく大喜びしたのにぃぃい

  小躍りして無駄にした 消費カロリーを返せ ~! 」


「 あらっ 今まで必要以上に たっ~ぷり

  おなかが まるでバルーンのように膨れるまで

  手あたりしだいに お料理を 召し上がっていたではないですか 

  王子様の手前 こちらが恥ずかしくなるほどでしたよ ふふふ ♪ 」


「 おっ おっ おのれ 

  この私を 笑いものにするとは許せん

  卑怯者めぇぇええ ~! 八つ裂きにしてやるわ ! 」


「 その言葉を そっくり お返しします 」


「 そんなもの 返されても困るわぁ 

  八つ裂きは嫌だもん 痛いもん 血が出ちゃうもん

  そのまま受け取っておいてちょうだい お~ほほほほっ ♪ 」 


  王妃は はらわたが煮えくり返るような

  激しい怒りに 震えました

  殺したはずの小娘に まんまと裏をかかれ

  間抜けにも 隣国に おびき出されてしまったからです


「 林檎は お気に召さなかったようだから

  今度は もっと良い 別のプレゼントを

  差し上げるわ お~ほほほほっ ♪ 」


  王妃は同行した「 ミラー▽ン 」の 

  お面をつけた変態従者に 白雪姫の襲撃を命じました


「 こうなったら ヤケクソよ !

  お前 白雪を やっておしまい ! 」


「 え~ わたくしめですかぁ ~ 」


「 護衛に連れてきた近衛兵は 全員捕まっているんだ

  やるんだよ ! いつやるの ! 今でしょう ! 

  やらなきゃ お前を先に血祭りだよ ~! 」


「 じぇじぇじぇ ! なんと言う事を 、、、 」


「 私の怖さは 充分知っているだろう あぁあん ? 」
 

「 しょうがない やりゃ いいんでしょう やりゃぁ 」


「 やられたら やり返す 倍返しだよ ~!

  お~ほっほほほほほほ ♪ 」


  変態従者は 股間に隠し持ち 警備をすり抜けた

  生暖かい 短刀を引き抜きました


「 白雪よ 地獄の舞踏会への 招待状を 受け取りな ~!

  地獄で お前の母親と 地団駄のワルツを踊るがいいさ 

  お~ほほほほっ ♪ 」


「 おりゃぁぁぁああ ~! 

  お命頂戴 ~! お覚悟を ~! 」


  従者の 短刀の切っ先は  

  白雪姫の 透き通るような 白い肌の下

  赤く脈打つ 心臓を狙い

  ギラリと 鋭く 光りました


  そして凶刃は 白雪姫の 胸めがけ 

  振り下ろされました

  それは さながら 血に飢えた
 
  ケダモノの 歯牙のように




「 き ゃ ぁ ぁ あ あ ~ ! 」






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