ブルー・マーメイド 21 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい












  ” あぁ 私たち 二人とも ここで死んでしまうんだわ ”















    人魚姫は 深い絶望感に とらわれました


    少しずつ 力の抜けていく身体は 


    もはや 土塊のようでした
























    どのくらい 時間が経ったでしょう 

    一瞬にも 永遠にも 思える時間が過ぎました




























    ようやく ナノ・マシンが 

    王子の身体の中で 働き出し 

    大出血を起こしていた傷を ゆっくりと

    しかし 確実に 修復していきました


    それと同時に マシーンに

    異物と判断された 弾丸が

    体外に 排出されました













    やがて 出血が止まりました

    王子の顔には 赤みがさし 生気が戻ってきました






  < あぁ 良かった きっと これで 大丈夫だわ >




    人魚姫は 機械を外しました

    












    人魚姫の身体は 王子への輸血で 限界に達していました


    最後の力で 高速艇の進路を 王子の祖国に向けました















    薄れゆく意識で 王子の顔を見つめました


    人魚姫の 瞳は 宝石のように 美しく


    蒼く 透き通るかのようでした






















    人魚姫は ゆっくりと 自分の顔を 


    王子の顔に 近づけました 











    唇に 唇を 重ねました 













    それは 人魚姫が 生まれて 初めての 


    そして 最後の お別れの 


    くちづけ でした


















     ” さ よ う な ら  ”




















    声を出せない唇で 王子に 別れを告げ


    人魚姫は 海に身を投げました












    朽ちてゆく 自分の姿を 


    王子には 見られたくはありませんでした
















    波に もまれながら 人魚姫は、


    だんだんと 自分の身体が


    溶けて 泡になっていくように 感じました








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    そのとき 空から降り注ぐ 眩い光の中に


    透き通った 美しいものが 漂っているのが見えました


    人魚姫も 自分が 空気のように軽くなり

  
    空中に 昇っていく感じがしました。












  「 私は どこに 行くのかしら ? 」



    人魚姫は 思いました













    すると 透き通った声が 答えます 




  ” ようこそ 空気の精の 世界へ


    あなたは 生まれ出た 水の世界を去り


    これから 空気の精に なるのです 


    優しい風に 乗せ

  
    その美しい魂と その美しい声で 


    愛のための祈りを 捧げてください


    世界中の 恋人たちの 


    恋の行方を 見守りながら


    美しく 素晴らしい 恋も 


    悲しく 報われぬ 恋も


    等しく すべての 恋を 、、、、、 ”













    それは 幻聴だったのでしょうか















    人魚姫の目から 蒼く透き通る 


    涙が ひとしずく 落ちました









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    それは 彼女の名の 宝石のように


    美しく 煌きました


    人魚姫は 風ともに 雲の上の 


    蒼い蒼い空に 昇って行く感覚に包まれました









  「 たとえ この世で 結ばれぬ恋だったとしても 


    心は 通じていた


    私は 愛されていた


    私は 精一杯 この恋に生きたの


    それだけで 私は 幸せだったわ


    もう 思い残すことは ない 、、、、、、 」
























    ” さ よ う な ら   愛 し い 人  ”



























    意識を取り戻した王子は 


    けっして 聞くことのできなかった  


    人魚姫の 美しい声の響きが 耳に届き


    聞こえたような気がしました














   「 サファイア ~! どこだ ~! どこにいる ~! 」
















    王子は 声のした方向に 振り向きました 



    愛と平和を 祈る 人魚姫の美しい声が 



    風に乗り 響いてくるように感じました


 






















    けれど そこには 



    蒼い 蒼い 空の下 



    青い 青い 海が 広がり 



    ただ 穏やかな 波音が



    聞こえてくるだけでした




















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       本編 終わり