堂々の完結 ? 最終話 歩けメロス 20 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



 「 騒乱罪の 首謀者として 逮捕する ! 」



 「 じぇじぇじぇ !? 

   また 逮捕されるのぉ ~?

   振り出しに戻っちゃうじゃないの ~?

   まだ 続いちゃうの ~? 」


   メロスは 騒乱罪の首謀者として 

   監獄に ぶち込まれて 臭い飯を食わされました。














  「 判決を 申し付ける ~! 」
  


    やがて メロスは 騒乱罪については 不起訴処分ですが

    何だか 怪しげで 厄介な存在とみなされ、

    シラクス市中からの 所払いとなりました。

    市中の出入り禁止、ポイと追い払われたのです。



    でも メロスは自分の家に帰ることができたのです。



    王様も 実は色々と問題を抱えていました。

    あまりにも乱れた社会の風紀や、 

    政治風土を変革しようとして 奮闘努力していたのですが、

    政商から賄賂を貰う 政府関係者、

    職務権限を利用して 業者とつるむ悪徳役人
 
    そこからから上納金を懐に入れる 一部の臣下や、

    王を亡き者にして 権力を我が物にしようととする

    王位継承権を持つ 身内などからの反発を受け、

    何度も秘密裏に 暗殺されそうになっていたのです。


    金に汚い 臣下達が 

    王様の反対勢力から 袖の下をもらい

    その計画に協力しました。 

    協力を拒んだ者は 王の命令を偽装して

    解雇、投獄、処刑されたりしました。

    反対勢力は 国民に対して 

    言われなき王の悪行を 広めていたのでした。


    城内の権力闘争に疎かった 百人隊長のケントリュウスは

    王を誤解して 同調する部下たちと離反してしまったのです。

    

    心療内科の医師も 暗殺の片棒を担いで、

    幻覚を見る ヤバ~い ヤバ~い薬を処方していました。

    常気を逸したような 言動、行動は

    服用した薬の 影響だったのです。


    狂気に陥った王によって 投獄や処刑された者たちは、

    新政府の調査委員会により取り調べられました。

    彼らの内部証言 証拠を突き合わせると、

    暗殺計画に 何らかの形で加担していた者ばかりで、

    全く罪が無かったとは言えないのでした。


    結果的に 王様の反対勢力は

    自らの策略で 自壊してしまったのです。



    牢獄に入れられていた王の暗殺を狙った

    継承権を持つ後継者たちは

    有罪とされ 王族としての権利を剥奪され

    平民の身分に落とされました。





    王様は 治療を施されました。

    正気をとり戻りましたが 

    人心が離れてしまっていたので

    権力の座に戻すわけにも行かず 

    長く善政をしていた時代もあり、

    薬の影響下にあった事も考慮され、

    功罪それぞれに鑑みて、 

    情状酌量され 全財産没収の上

    お城から追放されることになりました。





    政治体制は 元臣下による 

    合議の共和政治に 移行しました。

    被害者の会は 個別に保証金をもらい解散し、

    親睦会になり 定期的に慰霊祭を開きます。


    木こりたちや 大工たちは 公共事業を請負いました。

    メロス達が通って来た 仮設の橋は

    今は立派な橋に 架け替えられました。



    元兵士の山賊達は また正式に兵士として復帰しました。

    日々、厳しい鍛錬に励んでいます。

 

    宴会好きの者達も 大っぴらに お酒を飲めるようになりました。

    連日 飲めや歌えの大宴会が開催され、

    シクラス市の酒の消費が増え 

    食料品店 料理屋 酒造業者 酒屋が栄えました。



    セリヌンティウスは 無事助かったので、

    卑劣なメロスの行為を 未だに恨に持ちながらも、

    弟子のフィロストラトスと 真面目に石工の仕事を続けました。

    二度と メロスの顔を見るのも嫌だと思っています。


  「 いいか フィロストラトス、 今度メロスが来たら

    絶対 関わっちゃいけないぞ、居留守を使え、

    あのバカは 疫病神 死神の使いに ちげえねぇんだ ! 」


    
  「 へい わかりました 親方 !

    でも 今にして思えば、

    あの 大騒ぎの熱狂は 何だったんでしょうね ? 」


  「 文字通り バカによる バカのための 

    バカ騷ぎ だったんだな。

    バカバカしいったらありゃしない 」



    妹夫婦は やれやれと 

    念願のリゾートへ 新婚旅行に出かけました。



  「 や~っと ハネムーンね ♪

    お兄ちゃんがいると トラブルばかり、

    厄介者の 妹の立場は辛いわ、もう縁を切りたいくらい 」



  「 まぁ そう言っては いくらなんでも可哀想だろう、

    義兄も 危うく火あぶりの 一歩手前だったんだから 」 


  「 きっと また 何か大問題を起こしかねないわ、

    そういう 星の下に生まれついたのよぉ。

    昔っからそうなのよ あたしはいつも尻拭いばかり 」


  「 じゃぁ 次は関わらず 知らんぷりをするのかい ? 」


  「 それが いいわ きょうだいは 他人の始まりってね ♪ 」

















  「 あぁぁ やっぱ ふるさとはいいなぁ、 

    オイラ 羊飼いが 性に合ってるよ 」


    メロスは言いました。
  

  「 ここは 本当に のどかで 良いところですね、

    広い草原 そよぐ風 甘い草の匂い 」


  「 うん うん 」
   

  「 羊たちも ふわふわの毛で かわいいし、 

    ウール100%のセーターも作れるし、

    羊ミルクや チーズや マトンは 美味しいし、

    人生で初めて味わう生活です 」


  「 そうかい そうかい 」


  「 人間は のんびりと 自然の中で 

    のびのびと 生きるのが良いんですねぇ 

    監獄の日々に比べたら 天国ですよ 」


  「 だろ そう思うよな ? 」


  「 はい 」


  「 初めっから こんな生活だったら

    お前さんも 気楽だったろうになぁ 」


  「 親と生まれる場所は選べませんしねぇ 」


  「 そりゃ まぁ そうだなぁ 」


  「 私も私なりの 良い社会を作ろうと

    孤軍奮闘したのですが 」


  「 ふ~ん 」


  「 気の休まる時は ありませんでしたよ 」


  「 そうだったのかい ? 」

   
  「 身内や臣下にも気を許せない

    血生臭い 権力闘争の連続で、

    お城に 生まれ落ちててしまったものですから、

    この腐敗した世界に 堕とされたというべきですか、

    あははは ♪ 」 


  「 そうか お前さんも 大変だったんだなぁ、

    でも 政権が変わって

    良い世の中になるのかなぁ ~? 」


  「 今は皆が 希望に溢れ

    バラ色の未来を 夢見ていますが、

    しょせんは 人の行う事ですから、

    変節する事もあるし、 

    高く掲げられた約束は破られ、

    希望は いつしか色あせ、

    より深い失望に 変わらないとも限りません。

    誰にも 未来を見通す事、

    保証する事は 出来ないのですよ 」



  「 はぁぁ ~ そうだなぁ 

    オイラも まさか お買い物に出かけて

    殺されそうになったり、 

    聖者に祭り上げられ 行進したり、

    こんがり バーベキューに されそうだったり、

    挙句に 政変まで起きるとは 想いもよらなかったよ 」



  「 でも、正しくあろうとする 心、

    正しい事を 成そうとする 志、 

    人として 誠実である事が

    より善い社会を作る事も 忘れてはいけませんよ 」



  「 う~ん 耳が痛いや 」 


  「 これからは この地で

    乳製品やセーターの製造に力を入れましょう 」


  「 えぇ めんどくさいよ ~ 」


  「 この地の人々の暮らしを良くするため 

    安定的な収益を上げるには

    弛まぬ努力が必要なのですよ 」


  「 そんなもんなのぉ ? 」


  「 そうだ ! 

    メロス・ブランドを 立ち上げましょう、

    大騒ぎの結果 メロスの名は世間に知れ渡りましたから 」


  「 でも オイラ 聖者から一転 

    悪者扱いされちゃったよ ~ 」


  「 評価は 歴史がしてくれるでしょう 」


  「 そういうもんかねぇ ? 」


  「 従業員も集めなければ 」


  「 従業員って 誰か あてでもあるのかい ? 」


  「 近衛兵長が 首になりましたから

    彼を 雇いましょう、
 
    私には忠実な 男ですから 」


  「 う~ん なんだかなぁ ~ 」



    メロスは 監獄で仲良くなった

    元王様を 相棒として  

    また 羊飼いとしての生活を続けましたとさ。


    めでたし めでたし







  「 世には 馬鹿たるべく 定められた人がいて,

    彼ら自身が 進んで馬鹿な事をするだけでなく、
 
    運命そのものが 否応なしに、

    彼等に馬鹿な事を させるのである。 」


       ラ、ロシューフコー



         おしまい









    長々とバカ話にお付き合いくださり、

    ありがとうございました。


         m(u_u)m