ダーク・ファンタジー 偽作 ピーターパン 10 最終話 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



「 ねぇ ピーター 、、、

  フック船長は あなたの 双子の弟さんなの ?



「 まぁね でも大昔のことさ、 

  今じゃ あんな奴 弟でも何でもないさ

  兄弟は 他人の始まりってね ふふふっ ♪ 」



「 もともとは ティンカー・ベルが 

  あなたを この島に 連れてきたのね 」



「 そうだよ ちょうど 今の 君たちのようにね 」



「 あなたは 歳をとることを 望まないのね 」



「 ピンポ~ン ♪ そのとおり

  僕は永遠の子供さ 大人になんか なるものか ! 」



「 フック船長の 言ったことが正しければ 

  あなたは ティンカー・ベルに 

  永遠の時の中に 閉じ込められてしまったんだわ 」 



「 それが悪い事かい ? 

  僕は満足しているんだよ この生活をね ふふっ ♪ 」



「 でも あなた方は 子供たちを 、、、 」



「 えっ ? なんだってぇ ! 」
  

  ピーター・パンの 顔色が サッと変わりました。



「 いえ 何でもないわ 、、、、 

  ピーター、私たち 家に帰りたいの 」


  ウェンディーは 震えながら

  ピーター・パンに頼みました、

  フック船長が言っていた 新しい墓が増えている

  その言葉が 気になっていたのです。



「 おやぁ 楽しくなかったのかい ?

  僕の活躍は すごく、かっこ良かったろう ? 」



「 そっ それは 、、、 」



「 われながら 惚れ惚れするよ、

  賞賛の拍手は ないのかなぁ ? 」



  最後は無様で 反撃出来ず、

  防戦一方だったことは 

  都合よく もう忘れてしまっているようです。



「 これが子供の喜ぶ、冒険の醍醐味なのになぁ 

  ウケないと 張り合いがないや あははは ♪ 」



「 私、死ぬほど怖かった、もう、ここには いられないわ 」



「 チッ ! しかたないなぁ 、、、、、

  まぁいいや 楽しくないなら、家に帰れよ ! 」


  フック船長たちを追い払い、上機嫌のピーターパンは、

  あっさり、冷たく言い放ちました。



  もしかすると 母性に芽生え 

  大人の自覚を始めたウェンディーの存在は

  ピーター・パンにとって、 

  疎ましくなったのかも知れません。



  いえ、いつか ウェンディーは

  ピーター・パンや ティンカー・ベルの 

  存在そのものを 否定する日が来る、

  その事を、彼は恐れているのかも知れません。


 
「 ねぇ ティンカー・ベル~ 

  ウェンディーは 家に帰りたいんだってさ 」



「 ふ~ん さては ビビったわね、

  私達の 秘密に 感づいているのかも 、、

  他の子どもたちに 何やら 

  余計なことを 吹き込まれると まずいわ。

  それならば 家に帰したほうが良さそうね 」



  ティンカー・ベルが、妖精の粉をかけると、

  海賊船は フワリと空に 浮かび上がりました。




「 さぁ 出帆だ ! 」



  船は ウェンディーたちの家へと進みました。




  そして、ようやく家へ着くと、

  ウェンディーたちは 窓から子ども部屋に飛び込みました、

  そこには 心配していた お母さんがいました。





「 ただいま、ママ ~! 」


「 ただいま ~ 」


「 やっと 帰れたぁ ~ 」





「 おゃ ウェンディー、ジョン、マイケル、

  よかった やっと、眼を覚ましたのかい、

  熱も ようやく下ったんだねぇ、

  みんな 高熱が続いて ず~っと 眠り続けていて、 

  このまま 死んでしまうのではないかと、

  パパもママも とっても心配していたんだよ 」



「 だまって出て行って、ごめんなさい。

  あたしたちね、ピーター、パンと冒険に出ていたの

  ほら あの船で帰ってきたのよ 」




「 出ていって だって ?

  何を言っているの ?

  夢でも 見ていたのかい ?

  ずっと ベッドに寝ていたじゃないの

  きっと まだ 熱があるのね 」




  後ろを振り返り、窓の外を見ると、

  ピーターと ティンカー・ベルと 

  幼い子どもたちを乗せた海賊船は

  向きを変え、ネバーランドに帰るところでした。



「 あの船に乗って 帰ってきたのよ 」



「 ええぇっ ? 

  私には 何も見えないけど ?

  ねぇ 頭は だいじょうぶかい ? 」



  母親には 普段と変りない 外の風景が見えるだけです。



  飛んでいく海賊船に乗った ピーターパンを見送りながら、

  ウェンディーたちは、少し悲しくなりました、

  もう、ネバーランドに行くことも無いだろう、そう思いました。

  いろいろな経験をして、少し大人になったような気がしました。

  そして、ウェンディの眼には ピーターパンの姿が、 

  霞んで 消えかかっているように見えました。



「 ピーター・パン ~! ティンカー・ベル ~! 」


  ウエンディーたちは、お別れに 手を振りました。




  そんな ウェンディーたちに、

  ピーターは手を振り返すと 言いました。






「 ネバーランドに来たいと思った時は、

  いつでも僕を呼んでおくれ、

  もし、君が 僕の存在を望み

  君自身も 永遠の若さを望むのならね。
  
  きっと、すぐに迎えに行くから。

  これからも 僕は 思うがままに生きるんだ、

  誰にも 邪魔させはしないのさ、

  あはははっ あはははははっ ♪ 」



  ティンカー・ベルも 

  ピーターの傍らで 妖しく微笑みました。

















  ネバーランドから帰ってきて、ずいぶん経ちました、

  ウェンディーは 時折 考えます。
 
  遠い空の彼方の 不思議な島の住人たちを、 

  若さと 老い、

  自由への渇望、果たさねばならない責任、

  相克する魂の せめぎ合い。

  ピーターパンとフック船長は、

  誰の心にも住む、二律背反、

  自己矛盾の 存在なのではないのかと、


  そして 与えられるだけの 代償を払わない


”  理 想 の 国  ” など 


  どこにも 有りはしないのだろうと。



  もしかしたら 私達が 足を踏み入れた あの島は 


  黄泉の国への 入り口だったのではなかったのか 


  そして あの 多くの子供達は 何らかの理由で


  大人になれないまま この世を去る 定めの


  可哀想な 子供達だったのかも、


  子供達は 天国に行く前に


  心いくまで ネバーランドで 遊んでいたのかもしれない、


  この世に 未練を残さないためにも と 、、、、。







  ピーター・パンは、今もネバーランドの

  文字を刻んだ 大きな石の置かれた

  冷たい 地面の下の 狭い部屋に住んでいます。



  彼が 何処からか連れてきた 子供たちと一緒に。
 


  誰かが、ピーターパンの存在を 望む限り、

  歳を取ることもなく、

  永遠の 子供として、

  彼は その地に 

  生き 続けるのです、







  いつまでも、 




  いつまでも、 





  いつまでも。





















       おしまい








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