母親は 少女に言いました
「 お婆さんが 体調を崩しているから
お見舞いに 行っておくれ
ケーキと葡萄酒をもって 元気づけてあげなさい 」
「 え~えっ おばあさんの家は 森の中でしょう
お母さんが 行けばいいのにぃぃ 」
少女は ぐずりました
「 お母さんと お婆さんが
折り合いが悪いのは 知っているでしょう?
血圧でも上げられて 長患いになったら 困るわ
あたしは 面倒見る気はないんだよ
お父さんは 狩りに出掛けていないし
あんたは 可愛がられているんだから 行っといで
派手な赤いずきんも 買ってもらったでしょう 」
「 そんなぁ めんどくさいなぁ 」
「 早く とっとと 行っといで
ご近所の手前の アリバイ作りだからね
すぐ もどってくるのよ 」
「 ずきんくらいで 恩着せがましくされても困るわ
女の子だから 真っ赤だなんて
ジェンダーフリーの精神に反するわ
サンタクロースでもないし
もっと シックな色が よかったなぁ 」
「 ほんとに お前は 殴りたくなるほど カワイイこと 」
母は 切れかかっていました
「 こらっ 早く行かないと かわいがるわよ 」
かわいがるとは しごき等の 隠語です
体力自慢の母の鉄拳は 父も恐れるほどでした
ストレス発散のために
立木に 拳を たたき込み
「 これからは女も強くなくっちゃね 」 と
田嶋●子先生のようなことを言い
少女を相手に 実践的護身術の
スパーリングをしていました
少女は 母を本気で怒らせると まずいと思いました
「 はい はい はい 行って きますよ~だ 」
ブツブツ言いながらも 出かけました
「 返事は 一回で いいの ! 」
赤いずきんをかぶった少女は
森に入っていきました
その時 森の中では
赤いずきんの少女を 凝視し
静かに 忍び寄る 怪しい
一つの 影がありました
ギ ラ リ
嗚呼 少女の運命は いかに?
続く