地形の立体表現技法「赤色立体地図」は古墳透視だけでなく
地震、噴火、危険地帯、活断層などのマッピングにも利用されるという
すぐれものだ。アジア航測株式会社フェロー、千葉達朗氏の発明。

一部転載:
アジア航測株式会社フェロー、千葉達朗氏。火山の噴火による溶岩流などでできる地形・地質調査の専門家である。地形の立体表現技法「赤色立体地図」(特許第3670274号など)を発明した人物だ。
赤色立体地図とは、線も記号も光影も使わず、赤色のグラデーションを用いて実際にそこにある地形を、立体的に見せる表現技法で、21世紀のマップスタンダードといわれる。回転しても、拡大・縮小しても立体感は失われず、等高線や衛星写真などとの重ね合わせも得意だ。地震や噴火、大洪水などの自然災害地帯も3次元的に表現されており、驚くほど地形が良く分かるため、近年特に各方面から注目されている。
地図業界の常識を打ち破る発想で、地形の凹凸がひと目で分かる赤色立体地図を生みだした千葉氏に、その発明秘話や、火山噴火、地震、地形から分かる自然災害などについてお話を伺った。

――火山学者が斬新な地図を発明された。そのいきさつは何だったのでしょうか。

千葉 2002年、当社は国土交通省富士砂防事務所の委託を受け、青木ヶ原樹海の地形・地質調査を行うことになり、それに先だって航空レーザー計測を実施しました。
詳細な地形が分かる1メートルメッシュで実際の地面の起伏を数値化し、1mDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)データを得ます。高度約1000メートルを水平に飛ぶ航空機からレーザー光線を発射し、その反射光が戻ってくるまでの時間から地面の高さを測定するという手法です。レーザー光線は対地高度約1000m付近から、ほぼ真下方向に1秒間に3万3千発という小刻みな間隔で発射されます。地上では直径20㎝位に広がるので、樹木の隙間を縫って地面に到達する割合が高くなります。高さの精度は±20㎝程度ですが、樹木に覆われた場所でも、地形を丸裸にして把握できるようになる、というわけです。

ちなみに、青木ヶ原樹海は約1100年前の貞観噴火によって流れ出した溶岩の上に樹木が育ってできたものです。木々や苔のおかげで溶岩は土砂に埋まったり侵食されたりすることなく残り、火口などの微地形も当時のまま残されています。航空レーザー計測により、樹木に覆われ、守られてきた当時の地形を把握できることになったわけです。この手法で、立入禁止の古墳などの形状も同様に計測できます。

ところが、青木ヶ原樹海の現地調査に出発する直前、地形・地質調査担当だった私はレーザー計測部門から渡された等高線図の束(1mDEMデータから作られたもの。縮尺1/25,000で50枚以上)を前に、途方に暮れていました。数日間の判読作業の結果、樹海の地形は想像していた以上に複雑で凹凸していることが分かったのです。火口以外にも溶岩トンネルや溶岩皺によってできた窪地、孤立丘が無数にあり、等高線はまるで伸びきったゴムバンドをばらまいたように見えました。また、等高線のそれぞれには高度が付記されていなかったため、どこが凹でどこが凸なのかも把握できないことすらありました。等高線に問題があったのです。しかし、等高線を使用しない手法で表現しようにも、陰影図や斜度図、高度段彩図など、さまざまな描写法の地図はどれも一長一短で、1枚で複雑な地形を表現できなませんでした。いったん迷い込んだら出られないといわれる青木ヶ原樹海で使うには難がある。調査を目前にして、私は次第に遭難の恐怖を感じるようになっていました。

。。。。


すばらしい!