先の中国のトリウム発電計画は以下のように変更になったという。

2012年5月元科学院副院長で上海応用物理研究所所長の江錦恒氏は、この計画を修正し、米国のオークリッジ国立研究所(ORNL)と協力し、溶融塩炉を次の2つの方式で、2020年までに2MW実験炉を建設し、重要技術を掌握すると変更した。

①溶融塩トリウム燃料炉:

 米国オークリッジ国立研究所(ORNL)において1950年から1956年にかけて溶融塩燃料を循環する熱出力2.5MWの小型炉が研究開発され、1954年には数日間運転され815℃(最高温度は882℃)の高温を達成し、1965年からU-235、U-233、Pu燃料を用い溶融塩実験炉計画(MSRE:Molten-Salt Reactor Experiment)を実施し、1969年末に完了し、溶融塩増殖炉の開発に移行すべく予算要求をしていたが、1976年米国政府の増殖炉開発の一時凍結、財政緊縮政策等により中止された。最近の米国を主導国とする第4世代原子炉システム推進計画の中で、溶融塩炉は研究開発の検討対象原子炉の一つとして選定されている。[*15]

② フッ化物塩冷却高温炉―Fluoride salt-cooled High temperature Reactor FHRs

 トリウム溶融塩燃料を用いる前者の課題は、放射性の溶融塩燃料を高温冶金燃料処理プラントに直結させるので、系全体を汚染させ、また、ウラン233に変わる途中で非常に高いエネルギーのガンマー線を発生するプロトアクチニウムを経過するので、修理補修等が難しくなる点である。

 2005年頃より、オークリッジ国立研究所(ORNL)を中心に溶融塩を冷却材とするだけの方式で問題を解消する溶融塩冷却高温炉方式の開発を進めている。これは固体球状トリウム燃料床(ぺブルベッド)の高温ガス炉をヘリウムガス冷却材からフッ化物溶融塩冷却方式に変え、システムを小型化し、経済性と安全性を向上させる方式で、高温ガス炉の開発者である中国・清華大学と米国の利害が一致して、中国科学院(上海応用物理研究所)とDOEの間で溶融塩冷却高温炉の開発共同計画を進めている。