ひさしぶりに放医研・最先端治療の話題。
うっかりチエックを忘れてしまっていたがつい最近、放医研が超電導ガントリーの発表を行ったらしい。
これはドイツの超大型超電導ガントリーをより軽量化したもの。回転ガントリーは患者の周りをビーム照射の装置が回転して病人の周りを回転するもの。現在、四方向から照射している肺がんの治療に効果が期待されているもの。
設計は異常に保守的でちゅ電動電磁石の磁場はたったの3テスラと常電動磁石の2倍しかない。35年まえの私が従事していた
フェルミラボの加速器でさえ4テスラだった。
次は超電導シンクロトロンが実現するだろう。せめて5テスラはないとね。
以下がメデイアへの発表内容


平成28年1月8日
国立研究開発法人 放射線医学総合研究所
株式会社 東芝

発表のポイント

  国立研究開発法人 放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下「放医研」)と株式会社東芝(代表執行役社長:室町正志、以下「東芝」)は、腫瘍に対して360度の任意の角度から重粒子線※1照射を可能とする、世界で初めて超伝導電磁石を採用した、軽量・小型の回転ガントリー※2を完成させ、放医研 新治療研究棟※3に設置しました。

  重粒子線治療装置の一部である加速器や回転ガントリーは、大きな常伝導磁石を用いて高磁場を発生させて炭素イオンの粒子線を輸送・制御するため、装置 が非常に大型となるのが課題でした。そこで超伝導磁石を採用することで、従来の回転ガントリー(ドイツの重粒子線回転ガントリーは全長25m)と比べ、大 幅な小型化・軽量化を実現しました。超伝導電磁石を円筒形の回転体に搭載した本ガントリーは、直径11m、長さ13mです。(図1)。

  本ガントリーは回転体を回すことでどの角度からでも重粒子線をピンポイントに照射できるので、従来のように治療台を傾ける必要がありません。また、脊 髄や神経などの重要器官を避けて細かく角度を調節し、多方向から照射することで、腫瘍への線量をさらに集中することが可能です。治療時の患者の負担を軽減 するだけでなく、治療後の障害や副作用の更なる低減が期待でき、より患者にとって優しい治療が実現できます。

  なお、2016年1月9日(土)に重粒子線治療の世界的な普及を目指して、国内外の重粒子線がん治療に携わる医師や研究者が集まって開催される国際シ ンポジウム「2nd International Symposium on Heavy-Ion Radiotherapy and Advanced Technology(主催:放医研、会場:アキバホール(東京都千代田区))」にて、放医研が本回転ガントリーの開発の他に臨床や基礎研究の成果を報告 いたします。

放医研に完成した重粒子線回転ガントリーと治療室

開発背景

  重粒子線がん治療はX線や陽子線などの放射線の一種である重粒子線を用いた治療法です。X線や陽子線などの放射線治療では、患者に対し360度の任意 の角度から放射線を照射できるガントリーが一般的に使われているのに対し、重粒子線回転ガントリーはドイツの施設に非常に大型(全長25m)の装置が1台 あるのみです。そのため、重粒子線治療においては、決まった方向からしか照射することができず、脊髄や神経などの重要器官を避ける必要がある場合には、患 者を傾けて不自然な体位で治療をするなどの制約がありました。

重粒子線回転ガントリー装置について

  本回転ガントリー用超伝導電磁石の実装における重要な点として、直接冷却方式の小型冷凍技術を応用することで、液体ヘリウムをほとんど使用せずに超伝導コイルを4K(ケルビン)以下まで冷却し、超伝導状態※4を維持できる装置としたことです。これにより、一般の医療施設でも容易に扱うことができ、万が一の事故においてもヘリウムガスによる窒息の心配のない極めて安全な装置となりました。

  次に重要な点として、一般的な超伝導電磁石の弱点である振動や磁場変化に弱いという課題を克服しました。磁石内部の構造を工夫することで、ガントリー を回転・停止させても、回転体上の磁石の超伝導状態を維持できます。また、特殊な超伝導線材を使用することで、治療中(約1分間)に磁場を1T(テスラ) から2.9Tまで大きく変化させても超伝導状態を維持でき、安定して照射することができます。振動や磁場変化に強いことは、回転ガントリーに採用されてい る3次元スキャニング照射※5において、非常に重要な役割を果たします。
  このような超伝導電磁石を開発し、回転ガントリーに搭載することは、放医研がもつ重粒子線治療装置開発の経験やビーム設計技術と、東芝がもつ超伝導コイルの開発経験や機械設計技術が一緒になって初めて可能となりました。
回転ガントリー治療室(図2)では、患者がロボット制御の治療台の上に寝ると、照射口が回転して最適な角度から、3次元スキャニング照射装置によって腫瘍 の形状に合わせた重粒子線が照射されます。また、照射口の両側に2つのX線検出器を設置し、体内のX線透視により腫瘍周辺を直接観察することで、呼吸で動 く腫瘍の位置をリアルタイムに計算しながら照射するX線呼吸同期装置※6を導入しています。そのためX線透視による呼吸同期と3次元スキャニング照射を組み合わせた治療が可能です。

開発成果と今後の展望

  本回転ガントリーの完成により、どの角度からも患者に重粒子線を照射できるようになりました。これにより、腫瘍が重要器官を囲むようなケースに対して も、3次元スキャニング照射装置と組み合わせることで、従来にもまして脊髄や神経などの重要器官を避けて、腫瘍に線量を集中することができます。治療後の 障害や副作用の更なる低減と、腫瘍に対する効果の向上が期待されます。
  図3は、重要臓器を示す中央の白丸部分を囲む扇形の腫瘍に5つの方向から重粒子線を照射した場合の例です。中央の大きな円は全て足し合わせたときの線 量分布を示しており、集中して照射されている部分を赤く示しています。多方向から最適な線量分布を与えることで、治療に必要な線量を腫瘍の部分に集中さ せ、重要臓器にほとんど線量を与えていないことがわかります。

回転ガントリーを使用した重粒子線治療の照射例