輝かしい肩書きの村山斉教授の一般講演”宇宙の果ての向こう”
は独創的というわけではなかったが、kek の職員を魅了するには十分だった。
講演の骨子は
最近になって見つかった(と考えられる)銀河の渦運動の中心となる暗黒物質をいかに高エネルギー加速器、でみつかられるか、そして、電子などの点構造の素粒子がいかにヒッグズ粒子で質量を獲得するのかを考える上で高エネルギー加速器が有用であるかというものであった。
資料は豊富であったが、論理立てをするには、急ぎすぎてとばしたので聴衆には不消化なところができてしまった。

たとえば、村山さんの同僚で宇宙の背景複写を発見したスムートが望遠鏡で
宇宙の始まりについてはなしたが、宇宙の始まりは137億年で高温であるべきだが、スムートのみたのはそのちょっと手前であった。
また、セルンの周長17キロの大加速器LHCの衝突でみられる粒子が非対称なので見えない粒子があるが、暗黒物質もみえないので、そのなかから探せるのだという、少々、乱暴な議論をされていた。
私はそこをついた質問をしたのだが明快な回答はされなかった。
結局、素粒子の理論かも手探りの状態で
基本原理からの予測はできない。必要なエネルギーもビームの強度(衝突の頻度)も理論は全くお手上げのよう。
だから実験で発見することが優先され加速器を大きくする必要性がでてくるのだが、なんとも理論はこころもとない。
とくに質量に関してはずーっとそのような状況なのだ。

講演のタイトルの宇宙の向こうには
とても到達することにはならない結論であったことは
村山教授の大言壮語であったということになってしまった。
(宇宙の向こう、137億光年さき、はは原理的にはみえない)

でも資料は美しく楽しめるものであった。
幸いILC(リニアーコライダー)にかかわっている
研究者はこの資料にアクセスできる。

これが重粒子関係の講演で医師の先生方の思慮となると
アクセスできることはほとんどない。