詩人の最高峰は
金子光晴


天 使

しゃぼん玉があがるように
嬰児 (あかんぼ)たちが
そらにうかぶ。
神の練乳(コンデス・ミルク)で育った
薔薇の膚は
風邪を引かない。
むつきもいらない。
その背には
雉鳩(きじばと)のつぱさ。
花の輪のように手を繋ぎ、
雲のハンカチーフのように
夕そらにただよう。

おお。天使(エンジェル)よ。

きらきらと
貝殻ちりばめた天のおくに
天使らはむらがり遊ぶという。

天使らの純真な笑い声が
あそこにみちあふれるという。