重要なので矢ケ崎教授の主張の一部を引用する:
17.誤魔化す意図をもって仕組まれた測定:
ごまかしの最たるものが、DS86(米国の1986年線量推定方式)は内部被曝を測定するということで、ホールボディーカウンターを使っています。ベータ線を無視するという単純な「反科学」を行った以外に、ひとつの典型的なごまかしの手段として、重大な「内部被曝自体を隠す意図」を持って行われているのです。
いままで半減期という言葉を、物理的な半減期、放射線を出すと自分自身が違う元素になってしまう、だから違う元素を作り続けて、もともとの量が半分になるまでの期間を物理的半減期と呼んでおりますが、特に内部被曝で問題になるのは、生物学的半減期です。生物学的半減期というのは、体の中に入ったものが排出される、はじめの量が半分になるのにどのぐらいかかるかというのが生物学的半減期です。セシウム137の半減期というのは100日だというふうにいわれています。
ところが、ホールボディーカウンターで測定したのは、1969年と81年、2回ありますけれども、25年近く、あるいは36年、そういう長期間経ったあとで測定して、100日の半減期で、そもそも最初に体内に入ったものが測定できるかというと、既に排出され尽くして絶対に測定できない量になっています。これは半減期100日の計算で見積もると、もともとの10の18乗分の1になっている。こんなバカな測定を何故したかというと、被爆者がそもそも被曝した内部被曝の状況は分からないことをはじめから知っていて、仕組んだ測定なのです。
今年の6月6日の中国新聞に報道されたものですが、「原爆残留放射線の人体影響、ABCCに指定調査を促す」という見出しで、米原子力委員会がABCCの研究者に向けて書いた書簡の中身をここに書いてありますが、「ホールボディーカウンターで何も検出されない結果が出るのがわれわれの見解だけれども、こういう否定的な結果で十分なら、たくさんの人を計測しなさい」というようなことが書かれております。また米原子力委員会の別の研究者がやはりABCCの研究者に送っているのですが、「まず今の時点で調査しても、原爆投下時の内部被曝がゼロであるという結果を得ても、原爆投下時の内部被曝の可能性を否定しているわけではない」という見解を示しながら、「しかしいま否定的な見解を出すということは、被爆者が統計的に比較される対象の非被爆者コントロール群としている人々と比べて、放射線被曝の量が違わないということを示すことで、非常に貴重だ」ということをいっているわけです。