親しい知り合いから発明大勝をもらったデジタル加速器をどう思うかと聞かれたので以下のように答えた:


以下のような発明があるという*

高山健教授等が21世紀発明賞を受賞

KEK加速器研究施設教授の高山健氏のグループ※が21世紀発明賞を受賞しました。「誘導加速シンクロトロン方式を用いた全種イオン加速器」の技術開発が評価されたものです。

今回の受賞技術は、従来の高周波加速によるシンクロトロンの加速部を、周回するビームに自己同期させて生成するパルス電圧による誘導加速システムに置き換え、荷電粒子の閉じ込めと加速を別々に行うことによって、陽子からクラスターイオンを含む全てのイオン種を加速できるというものです。


このアイデアについては学会での高山さんの発表のときにコメントをしたのだが、
入射器を省略して入射するビームのエネルギーをさげると、シンクロトロンのほうのビーム強度が下がってしまい、高山さんの主張するようにビーム強度があがるということはない。

その理由は
1)電磁石の磁場は入射エネルギーがさがると磁場強度が低くなる。

鉄というものはやっかいなもので、磁場強度がさがると、鉄が本来もっている
20ガウス弱の残留磁場というものの影響がだんだん大きくなり、電流できまる磁場分布からずれてくる。そのために、ビームが加速器の共鳴ラインとよばれる不安定な領域を横切ってしまい
ビーム損失がおきてしまう。
その詳細な実験的解析は故佐々木寛博士が東京大学の原子核研究所での電子シンクロトロンで研究し
理学博士の学位論文となっている。
学位論文なのであまり知る人がないのかもしれない。
またそのような残留磁場についての知識は電磁石の専門家にしかしられていないので、しかたがないことかもしれない。
しかし、シンクロトロン加速器の入射エネルギーがある程度たかくなければいけない理由の
第一の根拠がここにある。

二番目の理由はシンクロトロンのビーム強度を制限している要素に
空間電荷効果というものがある。
これはビームの強度がつよくなるとイオンがお互いに反発しあって、
設計値からパラメターがずれてきて、やはり共鳴ラインにかかってビームがなくなってしまうものである。
この事は加速器の基本的な知識で、加速器関係の研究者はほとんどのひとが知っている事だ。
高山さのいうように入射器を省略して入射エネルギーをさげてしまうと
この空間電荷効果が効いてきてビーム強度が下がってしまうのだ。

この二つの理由から
高山さんのデジタル加速器はビーム強度が弱いのでイオン加速器としての実用性が乏しいといわざるを得ない。
しかし、この二つの制限を回避する方法を提案しているなら話は別である。
がいまのところそのような提案は説明されていないと思う。