この間の日曜日につくばカピオの古物市で
石垣りんの手書きの原稿をみた。
丸い柔らかいおっとりとした性格の字であった。
他にも入沢康夫や吉増剛増の原稿も見えた。

大正9年の生まれで平成16年に他界された。

私が中学生のころすでに石垣りんの死は教科書にのっていたのだから若くして有名になったに違いない。

彼女の詩の一例:

ちいさい庭

老婆は 長い道をくぐりぬけて
そこへたどりついた。

まっすぐ光に向かって
生きてきたのだろうか。
それともくらやみに追われて
少しでも明るいほうへと
かけてきたのだろうか。

子供たち---
苦労のつるに
苦労の実がなっただけ。
(だけどそんなこと、
人にいえない)

老婆はいまなお貧しい家に背を向けて
朝顔を育てる。
たぶん
間違いなく自分のために
花咲いてくれるのはこれだけ、
青く細い苗。
老婆は少女のように
目を輝かせていう
空色の美しい如露が欲しい、と。