PET-CT の結果は当然電子カルテ化されていて、医師から患者への説明もPCの表示で画像情報を自在にあつかい、理路整然と説明される。


今回、実際に重粒子線による治療を受けてみてその効果 「当初疑われていた場所にはっきりとしたFDGの集積があ りリンパ節転移であること」「それ以外の場所にも2カ所集積が見られること」などが示され今後の治療方針かが説明された。

このようなあたりまえの説明もおそらく一般病院ではおこなわれていないだろう。その点から重粒子線治療はまだ数が少ないとはいえ、医療全般を良い方向に変えていく可能性を含んでいる。その意味でも
放医研の重粒子センンターは”良い病院”とよんでいいかも知れない。

さてPET-CTのあとには、まだX線CTがあるようだ。PET-CTだけでは不十分なのだろうか?
膵臓がんの場合、画像の質が悪いので造影剤の静脈注射があるという。それならなぜ、PET-CTのとき同じことをしないのだろう? 過剰診断になっていないのだろうか?

このCTの情報は重要で

重粒子線は患部に対してきわめて高い精度で照射されるため、患者の体位が毎回の治療時に"同じであること 動かないことが要求される。

このために残念ながら、患者を固定する固定具が仕様される。これは結構、苦痛だ。 サイバーナイフというスタンフォr-ド大学の教授が発明したX線の装置では、ロボット技術をつかって
患者の動きにあわせて照射治療するので、この固定具は必要とされない。しかし、重粒子線治療ではまだ固定具が必要である。

固定具の制作などは普通のひとはあまり知らない。
患者さんは 固定具作成室につれていかれ、そこで体の型をとられる。その様子を伊藤さんは詳しく描写している。

病院棟地下1階にある"固定具作製室"はちょっとした工作 室といった雰囲気で、中央に治療に使うのと同じ治療台が設置されている。まず治療台の上に体の下側を支えるため のマットを敷きこの上に仰向けに寝て体の下面の型を取る、 マットは青い布袋の中にビーズ状の水硬化型ウレタンが入
ったもので水で濡らすと約10分ほでで重合反応が起こり堅 くなる。次にあらかじめ暖めて柔らかくしておいた熱可塑性 のプラスチックシートを体の上面よりからだ全体を巻き込む ようにして被せ固定用のカバー(シェル)を作る。私の場合、 照射は上下左右の4方向からなので仰向けと俯せ2セットの 固定具を作製するためこの工程を2回行った。
実際の治療ではこのマットとシェルでからだ全体をソフトかつガッチリと固定し同じじ体位で"動かない"という状態を作 り出す。製作は言葉でくと簡単そうがが実際は柔らかい人
体とプラスチックとの折り合いを作り出すためかなりの職人 技が要求される作業でここでの仕上がりが治療の最後まてで響いてくる。ちなみにここで使用される最も有効かつ強力な
道具は"人の手"と"霧吹き"と"団扇"であった。

リハーサルは別棟の重粒子治療棟で行われた。B治療室
で固定具を装着し治療本番と同一の条件で治療台に横 になる。平均的には1時間程度かかるものだそうだが私の場 合は4方向からの照射が予定されていたためすべての方向 からのリハーサル終了まで約2時間であった。2時間の間"
仰向け"から"俯せ"へ体位を変えるために一度だけ動いた が、それ以外は1mmも動かず!にいなければならなかった のは正直に言ってかなりきつかった。
この間、担当の技術者が治療に必要な位置あわせをする

いやー、治療の準備だけでもたいへんです。このように患者さんの体験談があってはじめて、最先端治療の重粒子線もずいぶん、どろくさい仕事があり、患者さんにも苦労をしいていることが実際が判る。
装置開発者はこのような細目をしらない人も多いのではないか?
重粒子線治療の最大の長所は もっとも高いQOL なのだから
まだまだ治療装置の改善が必要だ。
治療前のリハーサルは まだ続く(以下次号)。