重粒子線治療 膵臓がんの場合 2

胃ガンのために開発されたという特殊な外科手術である　Appleby手術をうけ、九死に一生を得た伊藤さんは１０ヶ月後に腫瘍マーカー検査で転移が発見される。転移に対する粒子線の治療法はまだ十分に行われていない。

体験談はさらにつづく

１）”CTで確認すると上腸間膜動脈近傍のリンパ節が怪しいと のこと。さらに場所的に再手術が困難なため、X線による放 射線治療を提案された。しかし、膵臓ガンなどの線ガンは放 射線に対する感受性が低く通常の放射線による治療効 果は期待てきない。 ”
”
こういった転移の場合、通常は重粒子線の治療はしない方針だと聞いてるが

”そこで最後の望みをかけて重粒子医科学センター病院の 山田先生の元を再度訪れた。 夏なのでHIMACはまたまた定期点検中・・・しかし今度は後がない!! 　山田先生は、なんとしてでも治療をお願いしたいという私 の話を真剣に聞き、所内の倫理委員会にかけて検討してくれた”

山田医師の説明は
”「この場合重粒子線による治療はメリットがあるであろうこと」
「過去に膵臓ガンの転移・再発例で重粒子線による治療は1例しかないこと」
「仮に受け入れ可能であっても治療開始は9月になる」
”
またもや定期点検の大障壁である。運が悪いの良いのか。しかし伊藤さんには困難を乗り越える意志と知恵がある。２度も拒否をくらってしまったら　進行性のガンなのだから私などだったら、ふてくだれてしまうか、このくらいでもういいやと思ってしまうかもしれない。

困難を乗り越えられ、重粒子線治療はすすめられることになった。治療に先立ってPET-CTの検査を受けることになる。PET-CTとはもと　CERN にいた物理学者が発明した装置でPETとCTを
ワンセットとして使えるようにしたものである。両者の長所をうまく組み合わせたものだ。

がんに粒子線を照射してがん細胞が死んでしまっても、腫瘍自身はまだそこに残っている。死んだ腫瘍は異物として認識されたあとゆっくりと対外に排出されるのだ。死んだという意味は細胞分裂ができなくなったということなのだが、人間の体というものは　不思議なもので、免疫系は細胞の
生死を判定してしまうようである。”おまえはもう死んでいる”といってしまうのである。
ところがCTにはそれがわかないが、PET では代謝をみているからそれがわかるのだ。　このPET にも弱点がいくつか弱点がある。
その一つが　５mm以下の小さいものは見えないのだ。CT ではその１／１０の精度でみることができるのだ。
PET-CTはこれらのいいとこどりができる。
（続く）