その1

膵臓がんを重粒子線で治療した貴重な体験談が
http://www.rada.or.jp/taiken/tuusin/no32/images/32_10.pdf
にある。伊藤先生といわれる中学校の先生のなまなましい報告だ。
膵臓がんは発見がむつかしい。

「膵臓ガンです。」
「現在の病期はStage 4(第四段階で最も重い), 余命3~6ヶ月でしょう。」
「腹腔動脈まで浸潤していますから手術は適応外です。」


というむつかしいケースだ。
直接お読みなっていただくのがベストだが、わたし多く学ぶことがあったので
何回かにわたって
まとめてみたい:

1)通常の検診では異常なしであったら、勘 の鋭い名医 “近医の先生
” の勧めでX線CTとの腫瘍マーカーの検査からやっと陽性と判断された。 

なぜ、一般の検診で 腫瘍マーカーの検査をしないのだろう???
これが第一の疑問だ。


2)国立ガンセンター中央病院で担当医師にx線は膵臓がんにききにくいから重粒子線治療を受けたい旨、伊藤さんは医師におねがいして、紹介状をかいてもらったが、その医師は 質問に対して 言葉で返事をせず、気分を害しているようだったとある。医師は患者に説明をせずに、自分のところで治療することをすすめていた。このような医師の不機嫌な対応は患者に恐怖感をあたえるのに。

重粒子治療にいちばん理解があっていいはずの国立がんセンター(国立がんセンター柏東病院には陽子線治療施設をもってる)でさえこの状態だ。まして他の病院では? 大学病院も似たり寄ったりだ。

3)HIMAC での治療をうけるべく、いってみると、長期点検ですぐに受けられなかった。

ここでは長期点検が本当に必要かどうかの問題提起がでてくる。
一方で長期点検が故障の低減や装置の利用可能率(availability)の向上
に役立っているかもしれないとも思われてる。


4)伊藤さんは放医研で重粒子医科学センター病院の山田滋先生という名医にであった。
“。HIMACによる治療再開まで待ってでも、という私の申し出に「ガンの進行状況から見て、定期点検終了まで待たせることは倫理上できない」との事、しかしその一方で真剣に私の状態を検討し「CT画像には一定の厚みがあり、それが重なって写るため本当に手術不可能なのかどうかは慎重に判断しなくてはならない」とのアドバイスとともに、
帝京大学の高田忠敬教授*6 を紹介して下さった。この後、高田教授の元でAppleby 手術*7を受け、とりあえず*8九死に一生を得る事ができたのである。山田滋先生との出会いが文字通り私の生死を分けた。ガン告知8月20日(金)、入院8月25日(水)、手術9月1日(水)。12日間の出来事であった。

残念ながら HIMAC の長期点検のために、伊藤さんは外科手術をうけるはめになった。名医には出会ったが、装置の運転の事情のために次善の措置をとることになった。
伊藤さんはこのあと転移のために重粒子線の治療をうけられることになるが、そこまで、1年の時がながれる。
(以下つづく)