放医研ニュース がん治療最前線 には

重粒子線治療の極めて貴重な情報が満載です:
以下の目次をご参考に。

シリーズ35
中枢神経系腫瘍に対する重粒子線治療

中枢神経系腫瘍に対する従来の光子線による放射線治療では、抗がん剤と併用しても、放射線感受性の低い腫瘍が多 く、その局所制御率は低い。また、腫瘍周囲の正常脳や近接する組織(視神経、脳幹等)の障害を最小限にする必要があるため、これらが制限因子となり、十分 な治療線量を照射することが不可能なことが多い。このような難治性の腫瘍に対して多くの試みがなされたが、有効な治療法はまだ存在していない。これに対し て高RBEという生物効果と荷電粒子線としての良好な線量分布を併せ持つ重粒子線の効果が期待されている。

シリーズ34
眼球脈絡膜悪性黒色腫に対する重粒子線治療

眼球脈絡膜悪性黒色腫は日本での発症が年間およそ30人と大変めずらしい疾患です。かつては非常に予後の悪い疾患 と考えられ、わが国では長く眼球摘出が行われてきました。この疾患の多い欧米では、眼球温存療法として放射線治療が広く普及しています。当施設でも 1986年に本腫瘍に対して眼球温存を目的とした陽子線治療がはじめて行われました。さらに、その後の治療実績をもとに2001年からは炭素イオン線によ る臨床研究が開始され、高い局所制御率と眼球温存率が示されました。現在では高度先進医療に移行し、従来は温存療法の対象とはならなかった腫瘍に対して も、眼球を温存した状態での高い局所制御をめざしています。

シリーズ33
直腸がん局所再発に対する重粒子線治療

大腸(結腸+直腸)がんは1960年には死亡率でがん全体の5.5%でしたが、2001年に12.3%と急激に増 加しています。なかでも直腸がんは術式や手術操作の改良が行われてきましたが、現在でも再発率は10から30%以上と依然として高い値を維持しています。 再発症例は肺・肝臓などの遠隔転移がなく局所再発のみの割合が多く、長期間にわたり再発巣を持ったまま生存するため、患者さんは疼痛をはじめとする種々の 症状に悩まされ、極めて管理が難しいことが特徴です。

シリーズ32
子宮がんに対する重粒子線治療

子宮がんに対する重粒子線治療では、子宮病巣中心部に向かって照射標的を絞り込んでいく照射法の開発を重ねてきま した。その結果、健常臓器の有害反応は軽減され、腫瘍制御は線量の増加とともに向上しています。大きな頸部扁平上皮がんも制御されており、腺がんにも高い 効果が得られています。

シリーズ31
前立腺がんに対する炭素イオン線治療の安全性と有効性

放医研の重粒子線医科学センター病院では、平成7年6月から重粒子加速器(HIMAC)を用いて、271名の患者 さんに対して炭素イオン線による前立腺がんの治療を行ってきましたが、5年の生化学的非再発率が80%と他の放射線治療と比較して極めて高い成績を示して います。

シリーズ30
骨軟部肉腫における重粒子線治療の有効性について

気道(肺)や消化管など、体の外界と通じている部分から発生する悪性腫瘍をがん(癌腫)といいますが、骨や軟部組織(筋肉、脂肪や神経など)から発生する悪性腫瘍は一般に肉腫とよばれ区別されています。

シリーズ29
期待される肝臓がんの新しい治療法
根治性と低侵襲性を兼ね備える重粒子線治療

肝がんは、肝臓原発の原発性肝がんと、他臓器悪性腫瘍が肝臓に転移した転移性肝がんに大きく分けられる。原発性肝 がんはさらに、肝細胞ががん化した肝細胞がん(95%を占める)と胆管上皮ががん化した胆管細胞がん(3%)に大別される。重粒子線治療の臨床試験は原発 性肝がんの大半を占める肝細胞がんを対象としている。

シリーズ28
末梢型I期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療
照射法の改良-1回(連続4門)照射法-

わが国の悪性腫瘍のうちの死亡原因の第一位が肺がんとなってから久しいが、さらに患者数は増加する傾向にあり、がん統計白書(篠原出版新社、1999)によると2015年には倍増し、男女合わせて約13万5千人が肺がんに罹患するとされている。

シリーズ27
頭頸部悪性腫瘍に対する炭素イオン線治療の途中解析
-粘膜悪性黒色腫について-

重粒子医科学センター病院では、1994年6月より世界で初めて医療目的で設立された重粒子加速器(HIMAC : Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba)を用いて炭素イオン線による癌治療臨床試験が開始されています。そして、先ずは頭頸部悪性腫瘍を対象に臨床試験を開始され、以降多くの部位の 臨床試験が行われています。その結果および途中経過をみると、当初の予想通りかそれ以上の良好な結果が得られています。

シリーズ26
膵臓がん -画期的な局所療法として注目される重粒子線治療-

膵臓は英語ではpancreasといいますが、語元はギリシア語のpan(すべて)とkreas(肉)からきております。膵臓は上腹部にあり、胃のうしろに位置して前を腹膜に被われております。

シリーズ25
手術のできない骨肉腫に対する重粒子線治療

骨にできる悪性腫瘍には、大きく2つの種類があります。一つは、肺、乳房、前立腺など骨以外の臓器にできた癌が転 移してできるもので、もう一つは、骨そのものに悪性腫瘍が発生するものです。この骨から発生する悪性腫瘍は、一般に肉腫と呼ばれ、皮膚や気道、消化管など 直接外界と通じている細胞(上皮組織)から発生する悪性腫瘍(癌腫)と区別しています。

シリーズ24
診療放射線技師の重粒子線治療へのかかわり
- 9年間の参画と努力による進歩 -

重粒子線治療の臨床試行が開始されてから、9年が経過しようとしています。重粒子線治療装置の設計計画から携わ り、医師、物理士、エンジニアの方々との話し合いや試行錯誤を繰り返していたことが懐かしく思い出されます。頭の中で思い描いていた治療の流れや治療用の 各種操作などは実際に治療をして見ると、その欠点や長所が発見され再度の検討や治療計画の改良が加えられてゆきます。

シリーズ23
経皮吸収型持続性がん疼痛治療剤 - フェンタニルパッチ -

1986年に「WHO方式がん疼痛治療法」が発表され、わが国においてもがん疼痛治療におけるモルヒネに代表され るオピオイドの有効性が理解されるようになってきた。しかし、海外に比べ発売されているオピオイド製剤が少なく(表1)、モルヒネによる強い副作用発現、 急速な耐性の出現や管理困難な疼痛時などの場合の代替オピオイドが少ないことが問題であった。2002年3月に新しい経皮吸収型のオピオイド製剤『フェン タニルパッチ(商品名:デュロテップパッチ)』が発売され臨床で使用されてきているので紹介する。

シリーズ22
前立腺がんの診断と治療 - PSAの発見と臨床応用 -

前立腺癌は、アメリカでは男性の悪性腫瘍の内で、断然トップの罹患率と肺癌に継ぐ2位の死亡率を示す高頻度の癌で あり、診断、治療それぞれについて、毎年数多くの論文が発表されています。MRI、経直腸エコー、monoclonal抗体を用いた核医学検査 (ProstaScint)を中心とする画像診断や、強度変調放射線治療(IMRT;Intensity Modulated Radiotherapy)、組織内照射、粒子線治療などの放射線治療に関して、毎月のように新たな知見、情報が流布されています。

シリーズ21
子宮体がんの放射線治療

子宮には体部(胎児を育てる場所)と頚部(子宮の入り口)があり、それぞれに発生したがんを子宮体がん、子宮頚がんと呼びます。この両者が区別されるのは、病気の性格や治療方法が異なるためです。ここでは子宮体がんの特徴を書きます。

シリーズ20
子宮頸がんの放射線治療

アジアに地域における放医研の活動
子宮頸がんに対する治療は手術と放射線治療が主体で、治療法の選択は病気の進行状態、腫瘍の組織型、および年齢、合併症の有無等を考慮して総合的に決定されます。

シリーズ19
肝がん治療と超音波診断

造影三次元超音波(Fusion 3D)による精密診断法の開発。放射線治療で最も大切なことの一つに、照射する範囲をいかに正確に設定できるか、ということがあります。言い換えれば、が んの範囲をいかに正確に診断できるかが放射線治療の成績を左右することになります。手術で言えば、どこまで切るかということですから、重要性は明らかで す。

シリーズ18
がん治療のための臨床検査

放射線医学総合研究所の重粒子医科学センター病院では、現在、重粒子線(重イオン線)を用いたがん治療を行っておりますが、がんの診断及び治療には、正確で迅速な検査データが必要です。

シリーズ -17
肺がん診断と治療 細胞診の役割 (2)

X線検査で辺縁の肺がんを疑う陰影が発見された場合はその陰影が肺がんかどうかを確認する必要がありますし、また 喀痰細胞診で気管や太い気管支の肺がんが疑われた(要精査)場合も異型細胞(病気を疑う細胞)の由来となった病気のある場所をつきとめ、その病気が癌かど うかを確認することがやはり必要となります。

シリーズ -16
肺がん検診と細胞診

日本人の死亡原因の第一位は悪性疾患(がん)であり、さらにがんのなかでは肺がんが第一位となっています。肺がんは喫煙や大気汚染との関係が深く、欧米では煙草の消費量の減少や大気汚染の改善にともなってすでに肺がん発生の減少傾向が認められています。

シリーズ -15
日本初のPET-CT導入と臨床診断研究の開始

この装置の利用は、生体の代謝機能過程(PET)と解剖学的詳細構造(X線CT)を同時にかつ明瞭に描出し、両情報の正確な重ね合わせ表示 (fusion imaging) を可能にするなど、癌診断の精度を飛躍的に向上させるものと期待されています。

シリーズ -14
モルヒネによるがん疼痛治療法 -古くて新しい薬モルヒネ-

アヘンが鎮痛や睡眠のために用いられていた歴史は古い。このアヘンに代わってモルヒネが広く使用されるようになっ たのは20世紀に入ってからという。1986年、WTOがモルヒネを主軸とした疼痛治療法を発表したことにより、モルヒネは「がんの痛みに積極的に使用す べき有効で安全な薬」となった。そこで今回は、WH0方式のがん疼痛治療法を中心に、がん治療におけるモルヒネの効用について解説する。

シリーズ -13
先進医療の土台を支える病理医の役割

ここでは、病理業務についての一般論を述べます。これまでこのシリーズでは、医学の技術進歩の最前線を紹介してき ましたが、今回は病理という観点から視た最前線とは何かと考え、よく知られていない「病理業務」について知っていただこうと考えました。病理という仕事が あまり認知されていないのであれば、病理が抱える問題点を含めて現状をありのまま紹介することが「医療最前線」になるのではないかと思うのです。

シリーズ -12
東京歯科大学口腔外科学第一講座で行っている口腔癌検診の現状

わが国では、胃癌、子宮癌、乳癌、肺癌、大腸癌について集団検診がすでに実施されており、集団検診による発見癌の 予後は、非集団検診群に対して極めて良好であることはよく知られています。口腔癌においても、他臓器と同様に早期に発見し、早期に治療することが治癒率の 向上のために最も重要です。

シリーズ -11
年間1万件に達する放射線関係の検査数
-開発テンポを早める診断課の業務-

放医研の研究内容は、放射線関連と重粒子医科学センター病院での医療研究など多岐に渡る。なかでも重粒子医科学センター病院は、診断から治療まで一貫したがん治療を推進している。そこで今回は、重粒子医科学センター病院における診断課の業務やその設備について紹介する。

シリーズ -10
放射線治療のケアに奮戦する看護業務

新病院がオープンして今年の3月で満5年を迎える。一般の放射線治療・診断に加えて重粒子線臨床試験を行うユニークな病院として、また、緊急被ばく医療の専門病院として、着実に成果を高めている。診療業務の進展とともに看護業務の重要性も増している。

シリーズ -9
肺がん (2)

前回は肺癌について特に治療法に関するお話しをしました。このなかで、重粒子の利点は外科切除に匹敵する局所の治癒を期待できることと、治療による全身への侵襲が低いことであると述べました。

シリーズ -8
膵がん治療の現状

膵癌は特徴的な自覚症状はなく、その上、どんな人が膵がんになりやすいのかもあまりわかっていません。このような 理由で、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つかるということはほとんどありません。膵周囲脂肪組織、神経叢、大血管に容易に浸潤し、腫瘍として診断 された時にはすでに進行癌であることが多いきわめて難治性の癌であることが特徴です。

シリーズ -7
乳癌の放射線治療

乳癌に対する治療法としては、まず手術が前提になります。乳房温存療法の普及や各種粒子線治療の評判から、乳癌も放射線治療だけで治す時代に入ったと勘違いされている患者さんもおられますが、現在でも治癒を目指すためには手術が不可欠です。

シリーズ -6
頭頸部がん

炭素イオン線の臨床試験は頭頸部がんから始められたが、その理由は、病変部や皮膚・粘膜などの正常組織の反応が視 診・触診で容易に観察可能なことにある。また、コバルトやX線などの光子線、高LET放射線である速中性子線、そして同じ重イオン線であるネオンイオン線 などのデータも豊富で、治療効果の比較が簡単に行えることも理由の1つであった。

シリーズ -5
子宮頸部がん

子宮頸部がんは、がん全体の死亡率(そのがんで死亡する割合)や罹患率(そのがんにかかる割合)が増え続けるなかで、その死亡率・罹患率ともに明らかな低下傾向を示すがんのひとつです。

シリーズ -4
肺がん

肺がんによる死亡数は年々増加しており、1993年には男性のがん死亡数の第1位となりました。98年度には男性女性を合わせたがん死亡の第1位になっています。

シリーズ -3
肝臓がん

がんによる死亡が死亡原因の第1唖になってから20年近く経った。原発性肝がんは胃、肺に次いで第3唖を占め年々増加傾向を増しており、1996年の統計による死亡実数は約32,000人となっている。

シリーズ -2
大腸がん

大腸がんは、日本では少なく欧米に多いがんでしたが、日本でも最近の大腸癌の増加は著しいものがあります。

シリーズ -1
前立腺がん

最近、前立腺癌患者の来院が多くなっている。重粒子線治療の成績が良い方に評価され始めたことにも起因するが、発生頻度が急激に増加していることも確かである。