森の若葉
金子光晴
なつめにしまっておきたいほど
いたいけな孫娘がうまれた
新緑のころにうまれてきたので
「わかば」という 名をつけた
へたにさわったらこわれそうだ
神も 悪魔も手がつけようない
小さなあくびと ちいさなくさめ
それに小さなしゃっくりもする
君が 年ごろといわれる頃には
も少しいい日本だったらいいが
なにしろいまの日本といったら
あんぽんたんとくるまばかりだ
しょうひちりきで泣きわめいて
それから ちいさなおならもする
森の若葉よ 小さなまごむすめ
生まれたからにはのびずばなるまい
《よその誰かのしあはせを、そっと失敬しているやうで、そはそはとおちつかない》
ねむりながら、キャッキャッと声を立てて
わらう若葉
若葉は、おもしろい夢をみているだろう。
たのしい夢をみてるにちがいない。
ジジは、そばで蚊を追ってやりながらおも
う
その夢のなかに、入れてもらえない
ものかと。
でも、それは、しゃぼん玉のなかへ入るよ
りむずかしいね。
http://mizumakura.exblog.jp/2984272/
金子光晴
なつめにしまっておきたいほど
いたいけな孫娘がうまれた
新緑のころにうまれてきたので
「わかば」という 名をつけた
へたにさわったらこわれそうだ
神も 悪魔も手がつけようない
小さなあくびと ちいさなくさめ
それに小さなしゃっくりもする
君が 年ごろといわれる頃には
も少しいい日本だったらいいが
なにしろいまの日本といったら
あんぽんたんとくるまばかりだ
しょうひちりきで泣きわめいて
それから ちいさなおならもする
森の若葉よ 小さなまごむすめ
生まれたからにはのびずばなるまい
《よその誰かのしあはせを、そっと失敬しているやうで、そはそはとおちつかない》
ねむりながら、キャッキャッと声を立てて
わらう若葉
若葉は、おもしろい夢をみているだろう。
たのしい夢をみてるにちがいない。
ジジは、そばで蚊を追ってやりながらおも
う
その夢のなかに、入れてもらえない
ものかと。
でも、それは、しゃぼん玉のなかへ入るよ
りむずかしいね。
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