小さな淑女(レディ) 2 | 徒然とわ日記

徒然とわ日記

日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
雑記帳みたいなものです。
見てくださったら嬉しいです(^_^)/

俺様は…バカだ。
アリスは盛大に噴き出した。漫才のような絶妙な間。
きっとこの怪獣は、王子様の昔からの友なのだろう。
だからバカバカ言われて笑っていられるのだろう。

「王子様とオトモの筋肉怪獣。うん、良い組み合わせじゃない♪
王子様が2人いたら喧嘩になっちゃうもんね。」
アリスは彼女なりの理屈で納得した。

「おい、ちっこいお嬢ちゃん!このモヤシが王子様で俺様が怪獣とは納得いかねェ!」
うがぁーと吼えるガロン。
ひゃぁっ。
アリスが虎姫とワグナーの後ろに逃げ込んだその時。

バターーーーーーン!!

奥へ続く扉が勢いよく開き、
「ガローーン!貴様、またつまみ食いをしたなーー!在庫数が大幅に合わんぞ!」
開いた帳面を振りかざし、真っ青なブナハスーツを着た壮年の男が突入してきた。
額には青筋が走り、血走った目は殺気だっている。

「やべっ!」
瞬発的に、外へ飛び出していくガロン。
「なんですって!」
捕まえようとしたとわの手をすり抜け、脳筋怪獣の姿は一瞬で消えた。

ブナハスーツの男はふと、ワグナーと虎姫の後ろの少女に目を留めた。
「全く……おや?若、こちらは?」

ーーーワグナー様は『若』って呼ばれているんだ…。
アリスはワグナーを見上げる。

ワグナーはアリスに優しく笑いかける。
「彼女の名前はアリス。爺や、まだマトイから聞いていないのかい?」
「む…そう言えば、お客様がいらっしゃったとか?では、こちらが…。」
「うん、虎姫の従姉妹のアリスちゃんだよ。人手が要るだろうと手伝いに来てくれた。」

男は姿勢を正し、アリスに向き合った。
「これは失礼致しました。拙者、この家の執事でジョウジと申します。以後お見知りおきを。」
パリッとしたスーツに白の手袋。
きっちりした礼は、先ほど見たワグナーのそれによく似ていた。
ーーーこの人はおーじ様、ね。
一般家庭育ちのアリスには、貴族風の作法が新鮮に見えた。

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
思わず声が上ずってしまった。

「アリス殿…そのように畏まらなくともよろしいですぞ。」
そう言って、ふっと表情を和らげたジョウジだった。
が。
「いかん、拙者はガロンを捕まえねばなりませぬので、これにて失礼を。」
皆に一礼をして、その場から立ち去っていった。

その背中を見送る一同。

「にぃに…爺やに捕まったら、こってり絞られるのね。」
とわが合掌する。
「あぁ…ご愁傷さま……まあ、ほっそりしたガロンが見られるだろ…。」
そう言いながら、ワグナーは思い出していた。
子供の頃ガロンと別荘を抜け出した後、捕まったジョウジから延々と、それはもう、日をまたいで説教をうけたことを。

「ワグナー、わたしアリスを空いている部屋に連れていくわね。」
虎姫が、微妙な顔になった兄妹に声をかける。
「そうだね。長旅で疲れているだろうから、部屋で休んだ方がいいかもしれないな。
リトルレディのお世話は任せたよ、姫。」

王子様が、ねえさまの腰を抱いて、優雅に口づけ…きゃっ♪素敵だわ♪
思わずほっぺを抑えるアリス。
虎姫は可笑しそうにアリスの手を取った。
「じゃあ行こうかアリス?」
「うん、ねえさま♪」

階段を上がって行く後ろ姿を見送り、とわも、椅子に立てかけてあった太刀を背負う。
「それじゃ、わたくしは夕食の食材をとりに行ってきますわ。」

そう。この家では、夕飯の食材を市場で買う方が珍しい。
なぜなら、この家に住む皆が現役のハンターで、しかも一部は高ランクの実力者だからだ。

執事と名乗ったジョウジは、ハンター夫婦の子として生まれ、幼少期よりハンター修行を積んできたベテランハンターだ。
ソロ狩り時代が長かったが、樹海で、迷子になりランポスの群れに襲われたセシオス(ワグナーの幼名)を拾って後、バリエンフェルド家の子守兼執事となる。

家主のワグナーはハンターとなってまだ数年。
自らハンターを志望、ジョウジに基礎から叩き込まれて狩り進むも、イビルジョーと遭遇時にジョウジと離れ離れになり海に転落、チコ村に漂着した。記憶喪失時には歴戦のハンターであったコゲ爺に教えを請うている。

その妻となる虎姫は、大商家の娘ながら自らの意思でハンターを目指す。女性チームの中で腕を鍛え上げ、ワグナーと一緒に古龍ナバルデウスと対峙、撃退した腕前の持ち主。料理が大変得意で、この家の料理はほぼ彼女の手による。

大食らいのガロン。ワグナー達と一緒に育ち、ワグナーとジョウジが家を出た後もとわに付き添った。彼女に迫る刺客を独学の武で退け続けたツワモノ。
元々はコンガの群れで育ち、幼い頃ババコンガの尻尾のキノコに食らいついていた所をジョウジに拾われ、以後ハンターとして活躍中。海辺の仮面の一族、ラギ族と関係も噂されるが…?

続いてワグナーの妹、とわ。貴族のお嬢様だったが、自らの手で屋敷に火を放ち出奔。か弱く世間知らずだった彼女を守ってきたガロンとは移動中の船で行き別れるが、風来者のナイトという男と出会い、彼に用心棒とハンターになるための指導を依頼する。
ハンターデビュー後、ジョウジ、ジョウジの師であるズイムにも師事。さらに、謎めいた美人ハンター、つかさにも教えを請うたことがある。

そして、いざという時にはオトモアイルーたちもいる。
マトイを始め、それぞれオトモ達がおり、さらにワグナーがちょくちょく野良オトモを拾って来るため、結構な大所帯なのだ。

「わたしも一緒に行こうか?荷物持ちくらいならできるが…。」
ワグナーは、とわを呼び止めた。
「大丈夫よ兄様、荷物持ちなら適任の人がいますから♪」
「…ガロンか?」
にぃにを連れてったら今晩のご飯ぜーんぶ無くなるわよと笑いながら、とわは、どこかに向かって叫んだ。
「ラギさ~ん、食材調達に付き合ってくださいませんか~。」

とわの呼びかけに、どこからともなく姿を現した仮面の長身の男。
ラギ族の男で、常に仮面を被っている。ズイムの元で修行中、とわに素顔を見られて以来、彼女を伴侶とすべく側にいる。
ラギ族の中の太刀使いであるため、太刀ラギと呼ばれるらしい。本名はとわにだけ明かしており、真(しん)という。隠密行動が得意で、居るんだか居ないんだかよくわからない不思議な男。

「………俺を呼んだか。」
「ええ。」
「…………買い物か?」
「いいえ、狩りよ♪」
「………………いくぞ。」
寡黙な仮面男は、居間のアイテムボックスから、手早く道具を準備した。
「兄様、いってきま~す♪」
元気に出て行く妹と、付き従う縦にでっかい男を見送る。
「あ、うん……。あいつ、いつの間にうちに住み着いたんだろう…。」
1人取り残されたワグナーだった。



続く
とわ&GG共著