――こやし玉の強烈な臭いのおかげで、ラギとナイト、2人の争いは収まったものの。
「おいとわ!馬鹿野郎!くっせーじゃねーか!!」
ガロンがとわに文句を言う。
「…お嬢…以前お教えしたでしょう、アイテム使う時は冷静かつ慎重にって!」
ナイトは大きなため息をつきつつ、しょんぼりするとわの頭をぽんぽんする。
「まあ、分断するという目的だとすれば、間違いではないけれども。」
「とりあえず、この涙出そうな臭いをなんとかしましょう。」
ジョウジの一言で全員が入り江に移動する。
「海だ海だぁ!塩水飲み放題だぜーー!塩分不足にゃもってこいだ!」
ガロンがザボンと潜る。
「飲み放題だが、いろんな調味料が混入してるぜ。……って聞いてないか。」
ナイトが、ユクモ装備を波打ち際で手洗いしている。
「色落ちするんだよな、この赤……。なんとかなんねーかな。」
「お嬢様、しっかり手洗いするのですぞ。直にこやしに触ったわけですからな。」
レモン石鹸をとわに手渡し、ジョウジも装備を脱ぐ。
とわはもらったレモン石鹸を手の上で転がす。
汚い字で「ガロン専用」と彫られているのに気づいた。
彼女は「うん○ゴリ専用」と彫り直す。
―――ガロンのくせにわたくしを馬鹿呼ばわりするなんて!!皆の流したうん○でも飲んじゃうといいんだわ!
一方、ラギは。
ジョウジと、小学生みたいな仕返しをするとわのそばで、海水に身を沈めてそれぞれ付着した臭いを洗い流していた。
「お嬢様……そんな子供じみた真似しなくても……。」
「ふむ、むくれた顔もあどけなくて可愛いな。」
「「………。」」
それぞれの認識の違いに、2人は無言で顔を見合わせた。
とわは内心、がっかりしていた。
せっかく、いつ着ても良いように携帯していた新しい水着。
波打ち際にきたので、早速着てみたのだが。
見て欲しい爺や、ナイトは自分の衣装を洗濯中で、こちらを見てくれない。
仮面のせいでどこを見ているのかわからないラギだけは、こっちに体を向けてくれているようだが。
――褒めてくれるかと思ったのになぁ。
虎姉様に一緒に選んでもらった黒いビキニ。一生懸命に背伸びした、少女の想い。
手元のレモン石鹸にいたずらしながら、小さくため息をつく。
もう一度ナイトや爺やを見るが、目はあったものの、すぐ視線を逸らされてしまう。
――見慣れているのかしら、女の肌。それとも、わたくしに色気がないのかしら…。
波をうけながら、足のつく限界の所まで、彼女は歩いた。
ジョウジは目のやり場に困っていた。
はしたない格好を、と言おうとしたが、あれはおそらく虎姫様と一緒に選んだもの。
うんうん言いながら悩みに悩んでいたのを知っている。
無下に否定はできなかった。
――それにしても参ったな。いつまでも子どもではないということか…。
とわの輝く肢体に、父親がわりとして、男として、少々複雑な思いがある。
ふと、隣に居たラギが彼女の方へ泳ぎだすのが見えた。
見守っていると、ラギはとわの腕をとり、耳元に顔を近づけた。
それを受け、彼女が嬉しそうな、はにかんだような笑顔を浮かべて彼を振り返る。
ラギは自分の面の下から、少し小ぶりの面を出し…って、あいつ、何枚持ってんだ!
ジョウジは驚いた。
「その笑顔はあまり誰かに見せて欲しくない。」
ラギに面を渡されたとわもびっくりしていた。
仮面の下にまた仮面?この人、いつも複数つけてるってこと?
仮面のオトコ。真っ先に自分の水着を褒めてくれたひと。とわの胸がキュッと熱くなった。
面を受け取り、つけてみる。
一種の安心感みたいなものを感じ、とわは何故ラギが仮面を好むのか、少しわかった気がした。
ガロンはナイトと共に、サシミウオの群れを追いかけていた。
オトモのたっぽ、ジェット君も一緒だ。
呼吸をしようと海面に顔を出すと、ちょっと離れた所にラギととわが浮かんでいる。
「お?」
なんだあいつら、ちょっと良い雰囲気か?
立ち泳ぎでちょっと見ていると、サシミウオの群れが、ナイトに追われて2人に向かって行く。
「あの仮面、どさくさに紛れてお嬢に手を出すつもりか?」
ナイトがわざと魚の大群を追ったのに気づき、ガロンは小さく笑う。
「見てて飽きねぇ連中だぜ…。」
とわのオトモ、わぐにゃ~がガノトトスを一本釣りしたのは、ちょうどその頃のことだった。
とわ&GG共著
