別荘は、入り江の奥、人の目につきにくい場所にあったのだが…。
現場に到着した一行を出迎えたのは、腐って崩れ落ちた、屋敷の残骸であった。
「やはり朽ち果てていたか…。」
別荘の無残な姿を見て、ジョウジが呟く。
「しゃあないぜ、誰も手入れに来てなかったんだろ?」
ガロンがつん、と門らしきものをつつくと、ガラガラと崩れ落ちた。
「うへぇ…。」
「気にするな、爺や。もとより、テントを使うつもりだったんだ。」
「そうよ、そのために荷車を用意したんだし。そうね、ここにテントを張りましょうよ。」
若人達は、全く気にする様子もない。むしろ楽しげに別荘跡を眺めている。
「皆様…かたじけない。それでは、この場所にテントを張りますので、まずは邪魔な瓦礫を片付けましょうか。」
全員で手分けして片づけをしていると…。
「おい、オッサン!ちょっと来てくれ。」
ガロンが何か見つけたようだ。
「どうした?」
「なぁ、これって…。」
ガロンが指差した場所には、鉄製の扉があった。
少しだけ開き、それが観音開きになっていることが見て取れる。
「…これは…。」
腕を組んで考え込むジョウジ。
「ちょっと!サボってちゃだめよ!2人とも。」
「そうよ、せっかく来たんですもの、早く海で泳ぐんですからね!」
とわと虎姫に叱られてしまった。女同士でタッグを組まれると、実に厄介だ。
ガロンはため息をつく。
「悪ぃな、嬢ちゃん!」
「申し訳ありませぬ…。」
すごすごと片づけを再開するジョウジとガロン。
…あとであの酒、回収しておこう…。ジョウジは密かに思った。
忘れ去られたワイナリー。観音扉の向こうには、かつての酒蔵があった。
ついでに、ちょっと恥ずかしい、カレンへのラブレターの草稿もあったはずだ。
悟られてはいかん。ジョウジは平静を装った。
なんとかテントを張れる場所とアプトノスをつなぐ場所を確保する。
昨日と同じように、2つ、横に並べてテントを設置した。
こちらはワグナー、虎姫のテント。
「う~ん、やっと終わった~!」
伸びをする虎姫。ぱたんとひっくり返る。
ワグナーは、横に転がり、彼女をなでなでする。
「お疲れ様、頑張ったね!さすが、わたしの妻だ♪」
抱き合ってチューしている。相変わらずアツアツな2人だ。
話し声も物音も、隣にまる聞こえだっての。
未成年もいるんだから、自重して下さいよ。
そしてこちらは、ジョウジととわのテント。
「………せまいでござるな…。」
「………両手に花どころか、花より野郎の方が多いぞ…。」
「何故、オレがとわの隣でなく、男の隣で寝なければならぬのだ。」
なぜか、とわとジョウジの他に、ラギ、ガロン、そして先程合流したナイトまで居る。
皆で一列に、ぴっちりと並んで転がっている。狭くて身動きもできない状態だ。
「で、お嬢、この仮面、どこの誰ですか?」
「おぬしこそ何者だ?」
「わたくしの……ですわ。」
「「「「えっ?!」」」」
全員が同時にとわを見る。
「お嬢様…今、なんと…?」
「どなたも、わたくしの大切な方ですわ。わたくしの水着を一番に見てほしい方…。」
とわが、用意した水着を広げて見せた。
「選んでいただいたのよ!」
「………!!!」
咄嗟にジョウジが身体で隠す。
「お嬢様……本気ですか!」
首をかしげるとわ。
水に入るような環境になかったので、どんな水着が普通の範囲なのか、まるで知らない。
その後、お嬢の水着姿を見せる見せないで、枕投げのバトルになったのは言うまでもない…。
「男って…子どもなんだから!」
枕投げに命を懸けた男達によりテントを弾き出され、アプトノスに寄りかかって空を見るとわ。
涙目で、空に吠える。
「バカーーーーーー!」
アプトノスが慰めるように、グォ、と鳴いた。
さて。こちらはオトモ達。
彼らは、健気なことに瓦礫を片付けていた。小さい手で一つ一つ。
「あれ、扉がありますニャ。何だろうニャ。」
「開けてみるニャ。」
ぐっぐっ。なかなかに堅い。
「「「「せーーのっ!」」」」
錆びついた観音開きの戸が開き、アイルー達は、勢いで中に転がりこんだ。
「あニャ!」
「…お酒ニャ…。」
「ニャ?ここに何か紙がたくさんあるニャ。」
多くの酒瓶、樽の他に、片隅に紙切れが束ねてしまってある。
「何か書かれてるニャ。」
いつからだろう、君の事を気にするようになったのは?
最初は、主人の姉君としか見ていなかったのに、俺はいつのまにか、
君に惚れてしまったみたいだ。
君の姿が、笑顔が、その声が、焼きついて離れない。
身分違いなのは十分に理解している。俺は所詮、流れ者のハンターだからね。
ただ、この気持ちだけは伝えておきたい。
君に…読んでもらえたなら嬉しいよ。
「恋文ですニャ!」
「ロマンチックですニャ!」
「ニャ~~!」
皆で昼寝をしている最中、こっそりとその草稿を回収しに来た男。
そっと読み返す。
渡せなかった手紙だが……。
男は恥ずかしそうに眼を閉じた。
今はもう、必要ないだろう。
彼は、それを折りたたみ、酒蔵から持って出る。
誰も見ていないのを確認し、そっと土に埋めた。
「必要になったら、また、書けばいいさ…。」
若い自分をちょっと気恥ずかしく感じつつ、彼はお昼寝組を起こして回ることにする。
「皆様。海で遊ぶ時間がなくなりますぞ!」
つづく
とわ&GG共著