番外編・仮面のオトコ 3 | 徒然とわ日記

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日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
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風呂から上がったわたくしたちは、ベッドのある部屋へ足を踏み入れる。

ズイムさんのおかげで、キングランクの部屋に泊まれることになったようだ。


キングランクと言えば、以前ナイト様がとってくださった部屋以来。

わたくしの実力とハンターランクでは、とても手の届く部屋ではない。

結構そのあたりはシビアで、金でどうにでもなる一般客用の部屋とは勝手が違う。


ラギさんは、いったん素顔を見られた相手には、仮面を着けずに接する主義らしい。

もう面を着けること無く、部屋をうろうろしている。


「何か探してらっしゃるの?」


「いや…。その身に何かあっては困るからな…。」

ベッドの下や戸棚の中など、危険物が無いか入念に調べている。


わたくしは、部屋に備え付けのバスローブに袖を通す。ふわふわで、肌に擦れても痛くない。

こんなもの、屋敷にいた時以来だわ。

女性用は薄いピンクで、男性用は真っ白だ。


アメニティも、その辺の安宿とは質が違う。

化粧道具や香水、果てはハンターなら誰でもお世話になる、回復薬やら罠、生命の粉塵までパックになって置いてある。サービスも凄いのね。


「これ、いただいて行って良いのかしら?」


彼がこちらを見る。

「ああ、そういうものだ。」


化粧道具を持って、鏡の前に座る。

あらやだ、髪の毛が傷んでる…。櫛でもって髪を梳いていると、ラギさんがやって来た。


「お前はいくつだ?」


「え?」


「歳を聞いている。」


「わたくし?次の誕生日で19ですわ。」


「…そうか。なら、もう数年待とう。」


「?」


「いや、こっちの話だ。それより、貸してみろ。」

彼は、ブラシを取り上げ、わたくしの髪をとかし始めた。

彼自身も後ろで一つにしばっているが、かなりの長さがある。


一通りとかし終わると、くるくると器用にまとめてわたくしの頭頂部にピンで留め、そこに花を挿した。

じっとしていろと言われ、わたくしは彼に化粧を施される。

どうしてこんなにこの人はメイクが上手いのかしら。


「いいぞ、目を開けろ。」

そっと目を開けると、鏡には別人が映っていた。


「お前は化粧映えのする顔立ちだな。」


「……わぁ……。」


日ごろ、リップくらいは付けていたが、ここまで本格的な化粧は初めてだった。

自分の顔をまじまじと見つめる。


「すごい…。」


「今度、お前が見せたい奴に見せてやるといい。

女に生まれたからには、さらに恵まれた容貌を持っているなら尚更、それを武器にすることも覚えれば良いだろう?

使えるものがあるなら、何でも使える技術は持って損は無い。」


「ラギさんは、爺やとはまた違ったことを教えて下さるのね。」


「化粧は、他人に化けるのにも使える。なにも女性だけのものでは無いのだ。」


「化けるって…。まあ、そういうのも必要な場合もあるのでしょうね。

しかし、ラギさん、色々できるのね。教わったの?」


「わが師ズイムは、女の弟子には、狩りのスキルの他に、必要であれば化粧や料理、裁縫なども教えていたぞ?」


「ええっ?ハンターの育成なのに?」


「ああ。美女がいると男共の士気は往々にして上がるものだろう?

そういう意味もあるだろうし、あとは、恋をして家庭を持ち、ハンターを引退する女性が多いのも、きっと理由の一つなのだろう。

ハンター同士で結婚する場合ばかりではないからな。一般人と結婚したら、たいていは家庭に入ることになるだろう?その時に困らないようにって。」


へぇー…。あのおじ様、そんなことまで教えてるんだ…。

爺や、知ってるかな?知らないだろうな…。

爺やも女性関係は疎そうだしな…。


「さて、また明日な。今夜はもう寝ろ。明後日には、お前をジョウジ殿のもとへ送り届けよう。」


彼とは別々のベッドで、わたくしはぐっすり休んだ。




翌日は、ラギさんに蔦の登り降りやら、崖での戦闘やらを教わりながら、宿に着いた。

一日訓練だったので、クタクタになった。脚が棒のようでジンジンする。

さすっていると、ラギさんが薬草湿布の作り方を教えてくれた。

わたくしの脚にぺたぺたと貼ってくれる。ネンチャク草がべたべたするんですけど…。


「小さい足だな。」


「…ラギさんは奥様や彼女はいらっしゃらないの?」

あまり女性の脚を見慣れてないのかしら?


「…今まで、自分が強くなるので精一杯だったからな。」


「ふうん。モテるでしょ?」


「オレは利口な女が良い。」


「利口ねぇ…。」


「その点、お前は大丈夫そうだ。いずれは、オレの子を産んでくれ。」


「……はい?」


「二度は言わぬ。」


「…………ええーーーーーっ?!」


とまあ、仰天発言があったわけだが。

わたくしがまだ未成年であること、まだ世間を知らないことを含め、数年様子を見るらしい。




「お前がオレを好きになってくれるよう、努力する。」


バルバレの宿の前で、別れの挨拶をしている最中、彼が言った。


まあ、嫌いではないわよ。むしろ印象は良いわよ。イイ男だし、年齢もわたくし好みなのだけれど。

…爺やに報告したほうが良い?やめといた方が良い?

突然の申し出に、わたくしはドキドキしながらも、困惑していた。


と、とにかく、もっとこの人をよく知らなければ!


「ぶ…文通からはじめて下さい!!」

気づけばそんなことを口走っていた。


「わかった。最低一週間に一度は文を出そう。こいつでな。」

彼が口笛を吹くと、鷲のような鳥が飛んできた。

ラギさんが、わたくしの肩にとまらせ、覚えさせている。


「ああ、わが師からジョウジ殿へ文を預かっていたのだ。渡してくれ。」


「わかりましたわ。ラギさん、どうもありがとう。」


「今後はラギ、でいい。」

彼は、わたくしの頬にかするようなキスをして。


「また会おう。」

街並みに消えて行った。




皆買い出しにでているようで宿には誰もおらず、わたくしは、彼に施してもらった化粧を鏡でチェックする。


皆が戻ってきたら、なんて言うだろう?


爺やは、驚いてくれるかしら?


それともまず、勝手にズイムさんに会いに行ったことを叱られるかしら?




鏡の中で、まだ見慣れぬ自分がにっこりと微笑んだ。




fin

とわ著