番外編・仮面のオトコ 2 | 徒然とわ日記

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日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
雑記帳みたいなものです。
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「ズイムさん、素敵だったわ。ちょっと爺やに似た、落ち着いた雰囲気のひとで。

もっと怖いお爺ちゃんを想像していましたのよ。」

娘は語る。


……独り言か?それともオレに話しかけているのか?

判断がつかない。黙っておこう。


彼女は、ちらちらとこちらに視線を送ってくる。そんなにこの面が珍しいのか。


「ねぇ、ラギさん。」

とうとう名前を呼ばれる。本当なら名など知られたくないのだが、師匠が呼んでしまったからな。


「…なんだ。」


「そのお面、見せていただけません?」


「…オレは面は外さん。」


「どうしても?」


「オレの素顔を見た人間で、生きているものは一人もいない。」

これ以上踏み込んでこないよう、脅してみる。


ふぅん。彼女は首を傾げながら、今まで以上に凝視してくる。

おいおい、勘弁してくれ。




わたくしは、その人のお面をじっくりと眺めた。

外して見せてくれないのなら、着けているのを見るしかないわ。

木製かしら?金属製かしら?

自分で作るのかしら?それとも…。


あまりに見つめすぎたのか、彼は木の上に登ってしまった。

「ここからでも護衛はできる。好きな道で帰るといい。」


声だけが降ってくる。耳に心地よい低音。

……おいくつくらいかしら?爺やよりは若いから、40歳より下ね。でも、ナイト様ほど若い印象もない。

30代半ばってところかしら?


わたくしは船旅を選んだ。これなら、隠れる場所少ないものね。


「…船か…。」

わたくしの前に再び姿を現した時、彼はポンチョのような上着に、鳥の羽根のついたさっきとは違う面を着けていた。


「いつの間に着替えたのですか。」


「…さっきだ。」

さっきっていつ?着替えもあのズタ袋みたいのに入っているのね。


「ラギさん。そのお面、何か着け変える法則みたいのあるの…?」


「ない。気分だ。」


…はい、会話終了。人と話すの苦手なのかしら?


船が出港するまでのしばらくの間、わたくしはラギさんと一緒にギルドの建物にいた。

ラギさんはなるべく目立たぬよう、展示物の間に座っていたり、物陰に潜んでいたりした。


正体の掴めない感じではあるが、話かければ、必要なことは答えてくれる。

わたくしは、この人が嫌いではない。

声が好みなのか、短い彼の言葉が心地良く感じる。

 




夜、風呂付の宿に泊まる。部屋が一つしか空いてなくて、しかも恋人に間違われた。

オレは…今夜は眠れそうにない…。


彼女は風呂付と言うのがとても嬉しかったらしい。ゆっくりと風呂に入り、早々に寝てしまった。


確実に寝たのを確認し、オレも風呂に入る。

風呂の中央に噴水があり、源泉が湧き出している。ずいぶんと豊富な湯量だな。


仮面をそっと外してタオルの上に伏せ、、湯の中に身体を沈める。

「あーー…いい湯だ。」


誰もいない所でしか、この面は外せない。

もし見られでもしたら、オレは……。



その時!


パシャ…。何者かが風呂に入ってきた!

まずい!オレは仮面をとろうとザブザブ歩く。


「…きゃっ!誰かいるの?!」


「!!」

よりによってあいつか!オレは無言でタオルの場所まで急ぐ。


どんっ。

柔らかいものに当たり、弾き飛ばしてしまう。

「な…何するのっ…。」


助け起こそうとしたが、当然ながら彼女も裸だった。見慣れぬ女性の肌に、叫んでしまった。

「うわぁぁぁ!」


「きゃーーー!」


オレの声に驚いたのか、彼女が悲鳴を上げる。

しかしすぐにこちらをじっと見てきて、バッチリと目が合ってしまった。


「ラギさん…よね?」


オレは一目散に噴水の反対側に逃げた。


「待って!」


「見るな!来るな!それ以上絶対、近づくな!」


「やっぱりラギさんですわ!」


嗚呼、オレは馬鹿だ!他人のふりもできたではないか!

何故逃げてしまったのか。何故言葉を発してしまったのか。

ほんっっとに、オレって馬鹿!!


彼女はオレより先に面とタオルを拾い上げた。

「素敵な面ね。木製?って、あら。内側に何か書いてあるわ。

なになに?オレならできる?オレすごい?」


……終わった……。

がっくりと膝をつく。この風呂の排水口にでも飲みこまれてしまいたい…。

きっと爆笑されるに決まっている。


かくなる上は、もう、彼女を殺すしかない…。すまぬ、師匠。

素顔を見られたからには、某漫画ではないが、その者を殺すしかない。あるいは異性なら愛する選択肢もあるが…。

一族の掟だからな。今まで、一度だけ素顔を見られたことがあったが、その女は嘲笑した。

だから…殺した。


「へぇ、これ、やっぱり奇面族のやり方なのね。こうして自分を鼓舞する言葉を書いておくのでしょう?

ね、やっぱり力出てくるものなの?」


「…へ?」


「わたくしもほしいわ。こういう、心を守るもの。」

彼女は、にっこりと面を差し出してきた。


「ねぇねぇ、あなたはどうして素顔を隠すの?せっかくイイ男なのに。」


「……。」

まったく想像と異なる反応に、オレは言葉を失う。


「ラギさん?」




――こうして、彼女は、いとも簡単にオレの心に入ってきた――。




つづく

とわ著