ある日の午後のこと。
「お小遣いが欲しいわ。」
お嬢様がそう言ってきた。
別に構わないのだが、一応理由を訊ねてみる。
「どうされましたか?」
お嬢様はチラシを見せ言う。
「欲しい物があるの…。」
チラシの一番上には『目玉商品!アイルーフード徳用袋、数量限定!』と書かれていた。
「アイルー用の餌が欲しいのですか?」
拙者が訊ねると、
「ここ…。」
と、下の方に書いてある女性下着の安売り広告を指し示す。
「まさか…それを?」
思わず視線を外す。
「屋敷にほとんど置いて来ちゃったから…あまり替えがないの…。
虎姉様は兄様とどこか行って居ないし、ガロンは論外だし、一人で行くのも…。」
ふむ、確かに虎姫様がおられれば良かったのだが…。
それにガロンの奴は食い物以外の事には興味がないからな…。
「…確かに。
……わかりました、お供します。」
お嬢様を一人で市場に行かせる訳にもいかないし、かといって、男が独りで女性物の下着は買いには行けぬ…。
ならば一緒に行くしかあるまいな。
拙者はお嬢様と市場にむかった。
道中、お嬢様に
「お嬢様の防具も見ていきましょうか。
それに式参加用のドレスも。」
と告げた。
それを聞いたお嬢様は拙者に抱きついてきた。
やはりお嬢様も年頃の娘、綺麗なドレスにあこがれるのか…。
市場に着くなりお嬢様は拙者から離れていった。
「お嬢様、迷子になりませぬよう…って…。ええっ!?」
いかんぞ、この人混みでは…慌てて辺りを見渡すと。
入り口近くの宝石屋に、お嬢様の後ろ姿が見える。
店に近づきお嬢様の肩に手をかける。
「お嬢様、勝手にいなくなっては困りますぞ…。ただでさえ、今日は人が多いのですから。」
一言注意する。
振り返ったお嬢様はなぜか嬉しそうだった。
「…お気に召した石でも、見つかりましたかな?」
彼女はにこにこと笑い、
しかし結局何も買わなかった。
お嬢様と賑やかな市場の中を歩いていく。
様々な屋台が並び、美味しそうな匂いが漂ってきた。
「オヤジ、おかわりだ!代金はこの編み笠にツケといてくれ!」
ん?あの声は…。
よく見ると、朝から姿が見えなかったガロンだった。
つづく
GG著